第85話 詩が出来ない
「はぁ〜・・・」
今日は葉城夏祭りまであと三日と迫った日。
「詩ぃ〜・・・」
が、まだ出来ていなかったりする。
マズイよね?
いくら歌唱特訓しているとは言え、まだ自由制作曲の歌詞が出来てないとか、マジヤバイよね?
「どうしよう・・・この際、この前の美羽か小夜の詩を借用するか?」
でもなぁ〜・・・
「どうしよう」
「づがれだー」
今日も補習と練習を終えた俺は、半ば死にながら帰路についていた。
「詩か・・・」
練習の時、早く作らないと殺す!! って赤佐に言われたっけ。
でも、詩なんてそうホイホイ出来る訳がない。
「何かきっかけ、インパクトみたいな物があればな・・・」
そう、例えば楓が女の子らしくなるとか、小夜が関西オバハンみたいな性格になるとか、美羽が立派な生徒会長になるとか。
「あ〜、何かきっかけが欲しい〜・・・」
その時!!
「だ、誰か助けてぇ〜!!」
「ん?」
な・・・今、なんか悲鳴が・・・。
「助けてぇ〜!!」
なっ・・・今作三度目のTASUKETEだとっ!?
「だ、誰か・・・ぐはっ!! ・・・た、助け・・・て・・・」
・・・嫌な予感しかしない。
・・・スルーしたい。
どうせまたヤンキーさんでしょ?
岡田工業か? また奴らなのか?
岡田工業の猫舌なんて、きっと覚えている読者は皆無に等しいぞ。
「助けてぇ!!」
・・・しかし。
「・・・男春吉よ、今助けを求めている人を、ほっといていいのか?」
自分への問い掛け!!
「・・・男として、この事態をスルーしてよいのか?」
俺は考えた。
「答えは否!! ここは助けに行くべき!!」
男春吉!! いざ、まかり通る!!
そしてレッツ自己暗示タイム!!
「俺はボンゴレ雲の守護者、あの風紀委員長なんだ・・・」
・・・噛み殺す!!
俺は悲鳴の聞こえた路地裏へ。
「君達・・・何群れてんの?」
決まった・・・トンファーないけど。
しかし・・・
「誰?」
そこにいたのは、ズタボロにされた若い兄ちゃんと、これまたまだ若い綺麗な姉ちゃん。
「・・・え?」
姉ちゃんの方は兄ちゃんの襟を左手で掴み、右手はグー。
リンチ?
一方の兄ちゃんはマジでボロボロ。
鼻血出てるし。
「あんた、誰?」
「・・・え?」
何、この空気?
「違うのよ、あたし達は夫婦なの!!」
「夫婦っすか・・・」
さっき偶然出会った、何か訳ありの男女。
どうやら、夫婦らしい・・・。
「あのー・・・」
ちなみに、まだあの路地裏に俺達はいるよ。
「失礼ですが、一体ここで何を・・・?」
何かのプレイ中だったらすんません。
「あ、いやね、ウチの旦那が浮気しててね」
「う、浮気・・・」
まさかの複雑な関係?
「そう、だからここで制裁してたの」
「せ、制裁・・・」
怖い・・・
あ、ちなみに男性の方はその辺でのびてます。
超ボロボロ。
「にしても、恥ずかしい所みられたな〜」
この夫婦、二人ともかなり若い。
まだ二十歳くらいじゃないか?
「・・・そろそろお迎えの時間か」
女性は手元の腕時計を確認している模様。
「じゃ、あたしは子供の保育園のお迎えがあるから、そろそろ」
「あ、ああ・・・な、何かすみませんでした」
変な罪悪感。
見てはいけなかった物を見た気がする。
「いやいや・・・じゃ、旦那担いで保育園に行きますか」
そう言うと、女性は生きた屍状態の男性を軽々しく担ぐ。
力あるなぁ〜・・・
「そういや君、その制服・・・」
「えっ?」
女性の視線はいつの間にか俺の制服に。
「もしかして、葉城高生?」
「え、あ、まぁ・・・」
何?
「やっぱり・・・あ! あたしの妹も葉城高生でね」
「そ、そうなんですか・・・」
どうでもいい〜・・・
「じゃ!!」
「あ、はい」
女性は男性を担ぎ、保育園へ。
・・・何なんだ?
後書きトーク!!
春吉
「そういや、亜希と小夜は漫画とか読むの?」
亜希
「え? 読みますけど?」
小夜
「・・・読む」
春吉
「ほぉ、意外・・・で、どんなの読むんだ?」
亜希
「私は俗に言う、少女漫画と言う物を少々」
春吉
「ああ、あのやたら目がデカくてキラキラしているアレか」
亜希
「・・・それ、少女漫画読者に失礼なのでは・・・」
春吉
「小夜は?」
小夜
「・・・私は、月也の持ってる漫画をちょっと」
春吉
「例えば?」
小夜
「・・・い〇ご100%、迷い猫オー〇ーラン、Dr.〇っるとか」
春吉
「・・・すげぇな月也・・・ってか小夜、それ月也の許可得て見てんの?」
小夜
「・・・部屋を掃除する時、机の引き出しの奥にあるのをこっそり」
春吉
「引き出しの奥・・・月也は思春期かッ?」
小夜
「・・・ん?」
春吉
「小夜、そういうのは止めた方がいい。きっと月也は必死なんだから」
小夜
「・・・え?」
春吉
「思春期の中学生ほど、可哀相な生き物は他にいないんだから!!(いろんな意味で)」
小夜
「・・・?」
亜希
「次回は86話ですね。タイトルは“姉妹”」
春吉
「いいか小夜、今後月也の机は無断で掃除しちゃダメだ!!(高校生になると、漫画以上の物を隠し始めるからな)」
小夜
「・・・?」
春吉
「これは男の定めなのだ!!」