三姫総集編Vol.1
どうも〜!!
今、文化祭の代休のため、家で超グダグダしている作者です!!
今回は、番外編Spring Stormの方が本編ゴールデンウイーク篇に突入したということで、まさかの振り返りがてらの総集編!!
Vol.1は勿論ゴールデンウイーク篇!!
本編に加え、総集編のために大量加筆しました!!
Vol.2以降はSpring Stormでそのシリーズに入ったら更新する予定です。
では、まだモブキャラ時代の本谷先輩も登場の総集編、どうぞ!!
5月・・・
俺、木山春吉が葉城高等学校二年生になってから約一ヶ月がたった。
「野郎共、明日からはゴールデンウイークだ!」
『フィーバー!!!』
ウチのクラスの担任、和波辰が叫ぶと、野郎共はみんなで仲良くフィーバー!!!
俺もフィーバー!!!
・・・平和だな。
「フィーバー!!?」
『フィーバー!!!』
「マックス!!?」
『ウェーバー!!!』
「ザ・ワールド!!?」
『無駄無駄無駄ァ!!!』
何かの宗教団体みたいだな、ウチのクラス。
ま、とにかくもうすぐゴールデンウイークだ。
「と、言うわけで明日、映画見に行かね? 暇な春吉君」
休み時間、俺の机の周りには男友達がいっぱい。
「明日? 映画館なんて混むんじゃね? あと暇なは余計だ!!」
「いいじゃねぇか、俺、今見たい映画あんだよ」
「んだよ、何見たいの?」
「そりゃアレだろ、アレ!!」
「ああ・・・成る程」
明日は確か・・・バイトは無し。
財布に余裕は・・・若干あり。
OK、明日はフィーバーDay'sだな。
「じゃあ後で集合場所とかメールするから!」
「OK!!」
ひゃっほーい、明日の予定が出来た!!
・・・はい、つまり暇だったんです。
その後、眠気と言う軍勢と戦争しつつ授業を受け、なんとか4時間目の世界史を乗り越えた。
「お昼だ!!」
「飯ぃ〜!!」
野郎共が適当に机を寄せ合い、弁当やパンを食べはじめる。
さてと、俺も昼飯にするか。
「春吉、お前今日も自作弁当?」
「イエス・・・あ」
はい、毎度のパターン
「弁当忘れた・・・」
嘘だろ・・・
「はい残念〜!!」
「一人で学食行ってこ〜い!!」
「今日は購買やってねぇからな!!」
こ、コイツら、ヘラヘラ笑いやがって・・・・
でもこれが現実、悲しいな・・・・・。
「・・・・・」
俺はスッと立ち上がり、半泣きしながら食堂へ・・・・・。
チクショー!!
んで、食堂。
一人で食堂なんていつ以来だろうか?
あーあ、他の奴はみんな2、3人でテーブルを囲っているというのに・・・・・。
とりあえず俺は券売機の前へ。
・・・何にしようか?
カレー?魚定食?うどん?はたまたナポリタン?
「うわ、見ろよあいつ、一人で学食とか・・・」
「友達なし夫か?」
「うわ〜、マジ悲しいやつだな」
「もしかして、いじめか?」
・・・周りのひそひそ声がまる聞こえなんですけど・・・
よし、心が死んじゃう前に早く食事を済ませよう!!
・・・あれ? 何故だか目から汗が出そう。
「・・・・春吉か?」
ん? 誰かが俺の事呼んだ?
ってナーウ!! 誰か知り合いに見つかった!?
恐る恐るバックをルック!!
「はは、やっぱ春吉だ!!」
「・・・・・春吉?」
「・・・まさか、一人で食事しようとしてた?」
そこには、こんな場面で会いたくない奴らがいましたとさ。
「・・・あ、アハハ・・・・・はぁ、お前達か」
楓に小夜に美羽・・・
最悪なパターンやな。
絶対イジられる。
・・・今、僕はこの学校でも屈指の可愛いさを持つ女の子三人と、学食を食べています。
成り行きで。
まぁ、良いのは見た目だけで、中身はアレですが・・・。
「みんなさ、このゴールデンウイーク何か予定あるの?」
美羽は鮭定食を食べながら、話題を振る。
「あたしは毎年恒例の柔道大会」
カレーをガツガツ食いながら答える楓。
ちなみにライスは大盛り、ルーは激辛。
これで何故、こんな細身の体型を保てるのだろうか・・・。
「今年こそは絶対優しょ・・・ゴホッゴホッ!」
あ、楓むせた。
「小夜は?」
「・・・・・いつも通りバイト」
うどんを食べながら答える小夜。
確か小夜ん家は母子家庭で、さらに7人姉弟。
長女の小夜がバイト等をしないと、生活がキツいんだとか。
「じゃあ・・・友達がいない春吉君は?」
カッチーン
「友達と映画!!」
ざけんな! 俺にもフレンドくらいいるわッ!!
・・・んな事よりも・・・・・。
「ははぁ・・・春にフレンドなんているのかねぇ〜!?」
ニヤニヤ顔の美羽がウザイ。
・・・んな事よりも・・・・・うん。
俺は話の合間をぬって、ちらっと周りを確認。
周りの野郎共がこっちを凝視。
周りからの視線が・・・痛いな。
学校でもかなりの美少女三人と食事をしている冴えない男子。
・・・野郎共からしてみれば、かなりウザイんだろうな。
ハハッ、優越感。
「じゃあ美羽は何か用事あんのか?」
俺がテーブルに視線を戻すと、楓が美羽に質問中。
「私は・・・まぁ、買い物とかいろいろ」
ハハハ、これはまだ予定がないと見た。
「本当はどうなんだよ!?」
「なっ、ほ、本当よッ!!」
少し焦りだす美羽。
「じゃあ誰と行くんだ!?」
「うっ・・・」
・・・勝った(ニヤリ)
「本当はお前の方がフレンドいないんじゃねぇのか!?生徒会長さん!!」
「なっ・・・」
追い打ち成功!!
・・・実は俺、ちょっとSです。
「は? 何言ってんだ? あたしが友達だろ?」
楓ッ!! なっ・・・え、援軍だとぉ!!
「・・・・・私も」
小夜まで・・・
「二人共ぉ〜!!」
あらら、感激中の生徒会長さん。
あいつ、昔から人見知り激しいからな。
楓は他人とケロっと仲良くなるし、小夜は何だか人を寄せ集める体質だし・・・。
ぶっちゃけ美羽は、他人の前では内面的なのだ。
「・・・何なんだ?」
・・・・・俺、孤立してね?
・・・とりあえず、さっさとこのナポリタン食って、食堂を後にしますか。
ハハハ、俺、本当に心から友達と思える奴、いるのかなぁ〜・・・。
多分、いる・・・うん、多分。
で、月日は流れ・・
やってきました、ゴールデンウイーク初日!!
で、今日のご予定は野郎共と映画・・・のハズでしたが!!
さっきこんなメールがッ!!
“悪い、やっぱ今日の映画中止!! タカとナカジーがインフルでダウンしたそうな。
なので、今日は中止。
クレームはインフルの二人まで
By権三朗”
ちなみに、タカとナカジーってのは、一緒に映画行くハズだったメンバー。
で、今俺は・・・
一人映画館の前。
さみしッ!!
つーか俺が映画館に到着した時に来たこのメール・・・タイミング悪くね?
どうしよう・・・一人で映画見るか?
否、悲し過ぎる。
「さて・・・どうしたものか・・・」
このまま帰ってもいいのだが・・・それじゃつまらない。
「・・・とりあえず腹減ったな」
キュグルル〜っとなる腹。切ない。
ちなみに現在午前11時半。
空は快晴、気温は程よい。
「・・・よし、まずはメシにするか」
とりあえず俺は空腹を満たすため、近くのファーストフード店へ。
映画館近くのファーストフード店。
ここはテーブル席以外にカウンター席もあるので、一人でも利用しやすい。
「いらっしゃいませ〜!!」
営業スマイルを浮かべ、店員はレジの前へ。
・・・やはり、昼時だけあって店内は混んでるなぁ〜・・・。
特に若いヤツの集団がいっぱい。
「店内でお召しあがりですか?」
「あーいや、持ち帰りで」
店内での食事を断念。
あんまし人混みは好きじゃないし。
「ではご注文の方をどうぞ」
結局、俺はツインチーズバーガーセットにうまうまチキン、そしてホットアップルパイを注文。
現在俺はその注文した品が完成するのを待っている所です、はい。
・・・俺は何となく携帯を取り出し、時刻を確認。
・・・そう言えば今日、楓の出場する柔道大会開催日だったっけ。
頑張ってんのかな?
「・・・番号札30番でお待ちのお客様?」
俺はハッと気付き、手元の番号札を確認。
あ!30番だ!!
いかんいかん!!
「あ、はい!!」
俺は店員の元へ・・・あれ?
「・・・お客様、お品物でございます」
「あ、はぁ・・・」
俺は品物を受け取りながら、店員の顔を確認する・・・ってやっぱり。
「よっ!小夜!!」
「・・・え?春吉?」
やっぱり小夜だ。
向こうも今気付いたみたい。
「ここでバイトしてんだ!?」
「・・・(コクリ)」
相変わらず無口・・・そんなんでやっていけんのか?
それより・・・
制服似合ってるな・・・・・。
「・・・・・ん?」
「ん?ああ、いや、何でもない」
首をちょこっと傾けて、ん?、は破壊力抜群。
これは一般青少年には刺激が強すぎる!!
・・・俺にもこの刺激は強すぎる。
「あ、俺、そろそろ行くから」
いかんいかん、これ以上ここにいると小夜のバイトの邪魔になってしまう。
邪魔物はさっさと退散すべき!!
「バイト頑張れよ!」
「・・・・・あ!!」
俺が店から出て行こうとすると、小夜に呼び止められた。
何?
「・・・えっと」
「ん?」
「ありがとうございました(ニコッ)」
ビブラバッ!!(心の中での吐血の音)
た、太陽の笑みやッ!!
「あ、ああ・・・」
久しぶりに見たな・・・小夜の満面の笑み(営業スマイルだが)。
俺はファーストフード店を後にし、一旦帰路に着く事にした。
家帰ったらゲームでもすんかな。
勿論、やるのはあの有名なアカヒゲさんのヤツ。
俺はチャリのスピードを少しだけあげる。
風が気持ちいねぇ〜!
・・・今なら時を止める事が出来るかも!!
まぁ、無理だけど。
「俺だって、スタンドさえあれば・・・」
その時、俺は道路右側にあるアリーナの駐車場に、見た事ある奴を発見!!
・・・どうしよ?
暇だし、行くか。
俺はチャリの方向をアリーナ側へ変更。
少しスピードを上げ、奴に接近!!
わお、風がすげぇ!!
ってかチャリ止まんねぇ!!
ピーンチ!!
んな事より、
「そこのお嬢さん、こんないい日に一人で何やってんの?」
「え?」
俺の声に奴―――美羽が気付き、くるっとこっちに振り向いた。
「は、春?」
「イエス、Springです!!」
つまらんシャレを言った所でチャリから降りる。
「何してんの? こんな所で?」
まさか本当に友達いないの? コイツ!?
「何って、楓の試合見に来たに決まってるじゃない!!」
「カエデ!?」
あ、そうか!
今日の楓の試合、ここのアリーナでやるんだっけ!!
「春は何してんの?」
む・・・何と答えるべきか・・・
「えっと、今スタンド使って時を止めてました」
「・・・本当は?」
「ファーストフード店行って昼飯調達!」
「ははん・・・一人で!?」
このにやけ顔憎たらしい!!
「ハッハッハ、俺は一人ではないッ!! いつも心にはもう一人の自分が・・・・・あ?美羽?」
「・・・・・」
そ、そんな目で見るなぁ〜!!
「・・・とりあえず、春も暇なんだ」
「まぁ・・・うん」
「じゃあ一緒に柔道の試合、見ない?」
「楓のか?」
「うん。だって他の友達はみんな柔道興味ない、って言うし・・・」
まぁ・・・暇だし、いいかな・・・。
「おう、じゃあ見に行こうぜ!!」
本日の暇つぶしが出来ました。
アリーナ入場料&試合観戦料は無料。
「えっと・・・」
俺はアリーナに入場した時に貰った試合表を確認する。
「楓は女だから(当たり前)・・・午後0時から第三アリーナで葉城高校女子VS岡田工業高校女子・・・か。うわ、初戦は岡工か・・・」
岡田工業高等学校
まぁ、ぶっちゃけ不良の集まりみたいな学校。
ヤンキーやスケバンなどと言う絶滅危惧種が数多く在籍しているらしい。
「岡工か・・・楓、大丈夫かなぁ・・・?」
心配そうな美羽。
「大丈夫だよ、あいつは半男生物だから。そんじょそこらのメス共には・・・・・」
「誰が半男生物だって・・・・・?」
・・・背後からパキッポキッと言う関節音が!!
「あ、楓!!応援にきたよ!!」
美羽は笑顔、俺はヤバスな顔。
よし、勇気を持って振り返えろう。
くるっ!!
「ハロー春吉」
そこには、鬼の形相をした楓の姿が・・・
「あら〜可愛いお嬢さん、お名前は何ていうの!?」
木山流会話術、三ノ型、初めて会った風に話す。
「・・・・・」
い、威圧感スゲー!!
「もう一度聞こう、誰が半男生物だ?」
「・・・権三朗の事です、はい」
咄嗟にごまかす俺。
・・・しかし、このごまかし方だと、権三朗は半分女って事に・・・
フフッ、キモい。
「本当か?」
うおっ、め、めめめ目が怖ぇ〜!!
「ほ、本当です・・・」
権三朗カマ疑惑。
このネタで乗り切ってやるぜよ!!
「まぁ・・・今日はいいか」
楓はふぅ〜ッとでっかいため息。
ああ・・・一安心。
「楓、どうしたの?」
楓のため息に美羽が反応。
「いや・・・何でもない」
ハハハ、俺は気付いた!!
コイツ、緊張してんな!!
「おい楓、今日は確か団体戦だろ? お前ウチの何番目なの?」
恐らく先鋒と見た!!
「・・・・・大将」
「・・・は?」
大将?
大将って、あの裸で、おにぎりで、絵を描いている・・・アレか?
「どうしよう・・・めちゃくちゃ緊張すんだよ」
・・・これは一大事だ!!
で、その後。
「楓、勝てるかなぁ〜・・・?」
「勝てるだろ。あいつ半男生物だし」
うん、普通に勝つだろな。
今第三アリーナの2階観覧席に俺と美羽はいます。
もうすぐで試合開始ってとこかな?
「にしても、あいつが大将とは・・・世も末だな・・・」
「世も末って・・・楓は結構強いらしいよ?」
「らしい・・・」
俺と美羽が客席でゴダゴダしていると・・・
〔ただ今より、女子柔道団体戦、葉城高校と岡田工業高校の試合を始めます・・・〕
アリーナ内に響くアナウンス。
・・・言っとくが、俺はあまり柔道の事を知らない。多分読者の方に難しい事言っても分からないと思うので、見た感じに脳内実況します。
「春、アンタ誰と話してるの?」
「あーいや、何でもない」
おっと、いかんいかん・・・。
〔では先鋒、葉城高校、本谷雛乃、岡田工業高校、佐橋小夏、両者前へ〕
本格的に始まるみたいだな・・・。
葉城の先鋒は三年生なので、あまり知らない人だが。
「さて・・・どっちが勝つんだか」
「どっちが勝つって・・・葉城校に決まってるじゃない!!」
必死な美羽。
まぁ、我が母校だからな。勝っては欲しいが・・・。
〔試合始めっ!!〕
おっと、いつの間にか始まっていた!!
アリーナ内の客はまばらなので声援は微妙!!
まぁ、とにかく頑張れ!!
まぁ、楓以外は割愛します。アハハ・・・
つーか今回の試合、先鋒、次鋒、中堅と葉城の連勝。
もう楓の出番はなし。
第一回戦は葉城の圧勝でした。
「呆気なかったな」
「呆気なかったね」
本当に呆気なかった。
まさに瞬殺。
「・・・見ろ美羽、アリーナの端っこにガッチガチになってる楓がいるぞ」
アリーナの西側の選手入場口付近に、なにやら不審なおチビ高校生が!!
「うわ〜、超ガッチガチじゃん楓・・・」
ロボットみたいにガシャガシャと動いている楓。
ハハハ、珍しいから写メっとこ。
「まぁ奴は大将だからな・・・つーか、本当にあいつ大将なのか?」
確かにバカ力はあるが・・・
「大将だよ、だって楓はウチの柔道部で1番強いんだって!!」
「1番!?」
さ、三年生の先輩をさしぬいて1番!?
「うん、だから二年生ながら大将になったんだって」
「ほへ〜・・・」
凄いな・・・さすが実家道場っ子。
「あ、次の試合始まるみたいだよ!!」
美羽の目がマジ・・・
確かコイツも柔道のルール知らないのに、よく試合に集中できるな・・・。
「次は・・・松田高校か・・・知らん名だな」
松田・・・松田・・・うん、やっぱり知らない。
〔では、これより松田高校と葉城高校の試合を始めます〕
まぁ、試合は接戦。
先鋒はこっちが綺麗な背負い投げで一本、勝利。
次鋒はこっちが判定負けしてしまい、敗北。
中堅は逆にこっちが判定勝ち、勝利。
副将はまたまた判定負け、敗北。
現在二勝二敗、全ては大将、楓の手に!!
〔大将戦、葉城高校、沢那楓、松田高校、藤平華子、両者前へ〕
相手―――藤平華子は見た目はゴツイゴリラ的な女性。
うわー、アマゾンとかにいそう。
逆に楓は高二の平均身長よりちょっと小さめ、しかも細身。
楓いわく、柔道は剛ではない、柔のスポーツらしい。
「あいつ、あんなんで勝てんのか?」
奴の足、ガクガクしています。ここからでも見て分かる程に・・・。
「楓・・・」
美羽は隣で手組んでます。神様にでも祈ってんでしょうか?
〔では・・・始めっ!!〕
お、始まった!!
・・・開始わずか10秒、決着つきました。
「ウェイッ!!」
気合いを入れる声? もしくは奇声? はたまた雄叫び? を上げた華子は、早速楓に接近、柔道着の袖を掴もうとした。
その時・・・
「せいっ!!」
一瞬だった。
咄嗟に楓は華子の下に潜り、一気に背負い投げ!
な、何が起こったのか分からん程、速かった。
〔い、一本!!〕
奴は天才かッ!?
「す、凄いよ楓、すごぉ〜い!!」
美羽・・・跳ねるな、落ち着け。
〔勝者、葉城高校!!〕
ここから、他の仲間と笑顔で談話している楓が見えた。
・・・嬉しそうだな。
満面の笑みを浮かべてやがる。
その後、三回戦柳沼高校にはストレート勝ち。
四回戦須貝学園には次鋒が負けたが、その他は勝ち。
準決勝星村高校は、まさかの大接戦。
先鋒、次鋒が相次いで負けてしまったが、中堅、副将、大将の楓が何とか勝ち、決勝戦進出決定!!
「さっきの高校、ヤバかったよね?」
「ああ・・・星村は柔道の強豪校たからな。あの半男生物はよく頑張ったよ・・・」
さっきの対星村、大将戦は、まさに一進一退。
何とか楓があっちの大将に食いつき、ギリギリの所で勝ったのだ。
「次はいよいよ決勝・・・相手は征咲高校か」
ああ・・・外はもう薄暗くなってら・・・。
・・・本当に葉城は決勝戦まで来たんだな。
「春、試合始まるよ!!」
「ん?ああ・・・」
いよいよ決勝戦。
泣いても笑っても、これが最後!!
〔女子柔道団体戦決勝、征咲高校と葉城高校の試合を始めます〕
アリーナ内にアナウンスが響く。
美羽の目はマジ。よし、たまには俺も集中しよう!!
先鋒戦
試合は葉城の勝ち。
こちらの先鋒は相手の足元を狙い、何とか相手をひっくり返し、固める。
んで勝った!!
次鋒戦
試合は征咲の勝ち。
次鋒の三年生は、今日はスランプらしく、呆気なく一本を取られてしまった・・・。
中堅戦
試合は征咲の勝ち。
まさかの二連敗。こっちの中堅の僅かな隙をついて相手が一本。
副将戦
試合は葉城の勝ち。
ここに来て葉城柔道部部長が意地を見せた。
綺麗な巴投げで一本。
そして・・・
「ついに来たか」
大将戦!!
「楓ぇ〜!!」
美羽は手でメガホン作って叫ぶ。
きゃー恥ずかしい、隣にいるこっちの身になれ!
〔大将戦、征咲高校、尼郷夕香、葉城高校、沢那楓、両者前へ〕
二人は両陣営からアリーナ中央へ。
相手は至って普通の少女と言った感じ。
楓の方は、もう緊張はしてない様子。
「・・・ん?」
その時、ふと楓と目が合った。
中央へ移動中、たまたまこちらを見た楓と、目が合ってしまった。
「あ・・・・・」
次の瞬間、楓は慌てて前を向く。
・・・ん?顔が・・・赤くないか?
とにかく楓は急ぎ足でアリーナ中央へ。
「・・・春、今、楓と目ぇ合った?」
どうやら気づいていたらしい美羽。
「ん?ああ・・・」
ふ〜ん、とそっぽを向く美羽。
どうした?
〔では、試合始めっ!!〕
おっと、試合が始まってしまった!!
お互い、睨み合うようにジリジリ動き・・・
パッと楓が相手の襟を掴んだ・・・が、呆気なく降りはらわれた。
・・・あれ?
今、攻めるタイミングではなかったような・・・
「ん?」
また攻めた・・・しかし、また相手に降りはらわれ、しかも今度はこっちの袖を掴まれる始末。
今のは素人でも分かる、あれは攻めるタイミングじゃない。
何を焦ってんだ、あいつ・・・?
「・・・ッせいっ!!」
また強引に攻めた!!
バカかあいつ、体格差を考えず、前に踏み込みやがった!!
そして・・・
相手は攻めて来た楓をすんなりかわし、足を引っ掻けそのまま倒す。
「・・・・ッ!!」
楓の顔は、驚きに満ちていた。
〔一本ッ!!〕
審判がフラッグを上げる。
その瞬間、征咲応援サイドからは歓声が上がった・・・
『うおぉーーーー!!』
会場は熱くなる。
相手チーム大将はガッツポーズ&笑顔。
一方、楓は・・・下を向き、俯いたまま・・・。
ここからでも分かる、あいつ・・・震えている。
「楓・・・・・」
隣を見ると、美羽が心配そうに楓を見つめていた。
〔3対2で征咲高校の勝ち、礼!!〕
『ありがとうございましたぁ!!』
アリーナ中央での試合後の挨拶が終わり、両チームは自分達の陣営へ。
「葉城、負けちゃたね・・・一応小夜に連絡いれとこ」
美羽は隣で携帯を取り出し、小夜にメール。
俺は何となくアリーナ西側の葉城高校陣営に目を向けると・・・
「・・・・・ん?」
仲間達からの慰めの言葉を無視し、一目散にアリーナの外へ走り出す少女が一人。
「・・・楓?」
楓だ・・・
「ん?どうしたの?」
美羽の目線は携帯の画面、楓に気付いていない。
「あ、俺ちょっとトイレ行ってくる」
「はーい」
俺はとりあえず席を立ち、アリーナの外へ。
アリーナの外へ出ると、外はもう真っ暗。
俺が辺りをキョロキョロ見渡すと、遠くの街灯の下に柔道着姿の少女を発見。
下を向き、拳は強く握られ、体は震えている。
「ったく、世話の掛かる女だ」
仕方ない、このスーパーハードボイルドマグナムの俺が直に行ってやるか。
少し小走りで楓の背後へ。
「おい、ちびっ子!」
俺が声を掛けると、楓の体はビクッと反応。
街灯の明かりに照らされてる楓の姿は、いつにも増して小さく見える。
彼女の着ている柔道着はしわくちゃになっており、足元には靴が履いておらず裸足のまま。
多分、アリーナからそのままここへ走って来たのだろう。
「どうしたんだよ? だ、大丈夫か?」
「うっせぇな!!」
帰ってきたのは、大声ながらも震えている声。
っつか、デカッ!!
「どうせ、あたしの事、馬鹿にしに来たんだろ!?」
「はっ!?」
その時、楓は体をこちらに向けた。
下に俯いているため、前髪が邪魔で顔が確認できない・・・。
しかし、グッと顎を噛みしめ、涙が一粒、彼女の頬を伝ってアスファルトに落ちるのが分かった。
・・・とりあえず、慰めないと!!
「・・・お前は、良く頑張ったと思うよ、俺は」
これは事実。
確かに楓は、良く頑張ったと思う。
「・・・嘘だ、絶対そんな事思ってない!!」
「ほ、本当だ!!」
また一粒、涙が彼女の頬を伝う。アカンなコレ。
「か、楓・・・」
「うるせぇ! ど、どうせあたしは、せ、攻めるタイミングも分からない、馬鹿な奴なんだッ!!」
コイツ、あの事自分で分かってたのか。
「・・・おい」
「もう・・・こんなんじゃ・・・示しが・・・つかねぇ・・・」
ぽろぽろと涙が溢れてくる楓の瞳。
ふぅ、全く世話の掛かるヤツだ。
「お前は良くやった」
「・・・・・」
「頑張ったよ、お前」
「・・・・・」
「だからもう、泣くな・・・」
・・・・・もういいや、後でどつかれても。
俺は右足を一歩、踏み出し・・・
ギュッ!!
「えっ・・・」
楓をそっと抱きしめた。
「お前は本当に良くやったと思うぜ。大将って言う超圧力の中、頑張って戦ったんだ。スーパーすげぇよ!!」
・・・ここで絶対、楓からパンチが飛んでくるな・・・
っと思ったけど、あれ?パンチが来ない。
俺はそーっと楓の顔を伺う。
そこには、涙をボロボロ流し、俺の胸の中で思いっ切り泣いている、楓の姿があった・・・。