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三人の姫と一人の手下の物語  作者: 五円玉
夏休み音楽ライブ篇
85/116

第77話 宿泊交渉


 「悪いけど、今晩あたしを泊めてくれない」

 

 「・・・は?」

 

 現在深夜12時。

 自宅。

 

 「何故?」

 

 「何故って・・・べ、別にいいだろ?」

 

 もしも突然、沢那さんが泊めてときたら?

 田舎に泊まろ・・・いや、木山家に泊まろう!!

 

 ってな感じ?

 

 「別にって・・・しかも何故宿泊希望? お前実家は?」

 

 「うるせぇな、とにかく今日だけでいいから泊めてくれ」

 

 「だから何で!?」

 

 「・・・・・」

 

 楓さん、ツーンとしてます。

 

 「お前、何かあったのか?」

 

 「・・・・・」

 

 「両親は?」

 

 「・・・・・」

 

 「もしかして、家出とかか?」

 

 「・・・・・」

 

 はぁ〜・・・。

 

 「・・・ウチは無理だからな」

 

 「えっ・・・」

 

 ここにきてやっと楓の表情に変化が。

 

 「当たり前だ!! そんな簡単にはいどうぞ、なんて言えるか!!」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・とにかく、まずは理由を言ってもらわないと」

 

 「・・・理由?」

 

 「そう、理由」

 

 「父さんと喧嘩しました」

 

 案の定すんなり言った!?

 

 「な・・・喧嘩って」

 

 「はい理由言った。じゃあ今晩よろしく」

 

 「つまりは家出か!?」

 

 な、何がどうなってんだ!?










 「あたしがさ、バンドやりたいって言ったら、父さんが・・・ズルズル、断固反対だ、って・・・ズルズル」

 

 「なるほど、方向性の違いか・・・ズルズル」

 

 「全くだよな・・・ズルズル、お前は柔道だけやってればいいんだ、って・・・ズルズル」

 

 「そりゃヒデー親父さんだな・・・ズルズル・・・あっち!!」

 

 現在木山家リビング

 

 まだ食事してない、と楓が言ったため、我が夕飯予定だったカップ麺を一つ譲り、食事中。

 

 ちなみに俺はシーフード味、楓は塩味。

 

 「でさ、父さんがドラムのスティック折りやがって・・・あたし、もう腹立って・・・ズルズル」

 

 「スティック折るって、どんな怪力だよ・・・ズルズル」

 

 「で、家出してきた・・・ズルズル」

 

 「・・・だからって、何故家出先をウチにしたんだよ・・・ズルズル・・・あっちぃ〜!!」

 

 少し冷ますか・・・

 

 「だって亜希から聞いたんだぜ、“今春吉くんの家は両親がいないのよ”って」

 

 「ぶほぉっ!?」

 

 なっ!?

 

 「ん? どうした春吉・・・ズルズル」

 

 「げほっげほっ!!」

 

 あ、あの野郎・・・

 この事(両親夜逃げの件)は、周りに内緒って言っといたのに!!

 

 「にしても凄いよな、春吉の両親。今トゥールースに旅行中なんだって?」

 

 「はい?」

 

 トゥールース?

 

 「え? お前の両親、今旅行中だって亜希が・・・」

 

 「・・・あー、あ、ああそう、今旅行中なんだ」

 

 亜希さん、そういう気遣いはかえって分かりにくいよ!!

 

 「じゃあ、本当に今両親いないんだな?」

 

 「ああ、いない」

 

 「なら宿泊OKだな」

 

 「なッ・・・」

 

 こ、この野郎〜!!

 ってか

 

 「つーか、お前女だろ!? そういうのは普通女子の家に行くだろ!?」

 

 何故、男の俺の家に・・・

 まぁ、確かに両親はいないけれども。

 

 「え? そんなのお前だからに決まってるからだろ?」

 

 「・・・はい?」

 

 何真顔で言ってんだ、この大魔神!?

 

 「春吉だったら安全だろ? どうせ二次元オタクで三次元には興味ないだろうし・・・ズルズル」

 

 「なっ、お前!!」

 

 「それに、春吉だったら人が嫌がる事、絶対にしないだろ?」

 

 「えっ・・・」

 

 「小夜が倒れた時、初めに家事手伝おうって言ったの、春吉だし」

 

 「・・・・・」

 

 「球技大会の時、美羽の練習に付き合ってやったり」

 

 「・・・・・」

 

 「青上の連中に捕まった時だって、真っ先に助けに来てくれたし」

 

 「・・・・・」

 

 あれー?

 目頭が熱く・・・

 

 「それに、あたしが柔道の大会で負けた時、優しく慰めてくれたし」

 

 「・・・・・」

 

 あれー?

 目から汗が出そう。

 

 「何だかんだで、お前は意外と優しい。だから、春吉なら安全かな〜って」

 

 「・・・好きなだけ泊まっていけ」

 

 こ、心がじ〜んってする。

 め、目がぁ〜!!

 目から汗がぁ〜!!

 

 「じゃ、お言葉に甘えるぜ」

 

 しかし、この時の俺は気付いてなかった。

 

 この大魔神、影でこっそりガッツポーズをしていた事を。

 そして小声で「計画通り!!」って言ってた事を。

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