第74話 どんぐり
「♪どんぐりころころどんぐりこー♪」
「♪ど、どんぐり〜ころころどんぐり〜こ〜♪」
「・・・駄目だ」
「は!?」
現在デブと個別レッスン中。
まぁ、詳しくは前話を見てくれ。
「全然なってない、もっと気持ちを込めて歌わないと!!」
「気持ち・・・」
精神面かよ・・・
「もっとどんぐりさんの気持ちになって!!」
「どんぐりさん・・・」
「そう、どんぐりさんの気持ち!!」
はぁ〜。
「ではいくよ・・・♪どんぐりころころどんぐりこー♪」
「♪ど、どんぐり〜ころころ〜どんぐりこ〜♪」
どんぐりの気持ち
それはきっと・・・
(デブより綺麗な子!!)
※しつこいようだが、主人公は思春期。
「・・・駄目だ、もっと気持ちを込めて!!」
「ちょっと休憩してきます」
ええ加減にしなさい。
「♪デブさんころころデブさんこー♪」
そんな歌を歌いながら、俺は休憩がてら校内をぶらり旅中。
「ったく、俺は精神面より技術面を教えて欲しいのに・・・」
精神面なんて、こっちはもう強化済みなんだよ。
「ったく、あのデブ・・・ん?」
「♪〜〜♪♪♪〜♪〜♪〜〜♪〜♪♪〜」
その時、どこからか音楽が・・・
「・・・これ」
綺麗な音色だな。
なんの音だろ?
「♪〜♪♪〜〜♪〜〜♪♪♪♪♪〜」
これは・・・笛?
フルート?
クラリネット?
「それにしても上手いなぁ」
楽器素人の俺でもわかる、かなり上手い。
なんて思いながら歩いていると・・・
「・・・はぁ〜」
いつの間にか、音楽室がある特別教室棟に戻ってきていた。
「♪〜♪♪〜♪〜♪〜〜〜♪〜♪♪」
・・・・・ちょっと、視聴覚室覗いてみようかなぁ〜?
どうせ音楽室へ戻っても・・・。
『気持ち、気持ちが大事ダァーッ!!』
だし。
「確か、視聴覚室は吹奏楽部が・・・」
行ってみようかな?
その時、
「・・・何してるんですか?」
「ん? ・・・ってうおっ!? お前は!!」
び、ビックリ!!
何故か後ろに泡岸の姿あり!!
「確か木山先輩ですよね? 何してんですか、こんな所で」
「あ、いや・・・」
そう言う泡岸の手には、木製の笛。
「凄く怪しいんですけど・・・」
相変わらず素っ気ない態度だな。
「あー、確か泡岸、お前吹奏楽部だっけ」
必技、強引に話を変えるの術!!
「・・・先輩、人の話聞いてます? こっちは質問を・・・」
「その手に持ってんの、泡岸の楽器か?」
「・・・・・・」
あ、あれ?
呆れられた?
「・・・ベークラです」
「・・・は?」
ベーコン?
「ソプラノクラリネットの事です」
「あ、ああー!!」
ならそうと言って欲しいな。
「泡岸はクラリネットなのか」
「まぁ、はい」
確か、音楽の授業で教科書に載ってたな。
「なぁ、クラリネットとかって、吹くの大変なのか?」
「・・・まぁ、初心者には難しいですかね」
「へぇ〜」
その時
「あ、いた!!」
「ん?」
誰かの声が。
で、俺は後ろをルック。
「春、サボってないで練習に戻る!!」
「げっ、美羽・・・」
うわ〜・・・
「・・・では、私は吹奏楽部の練習に戻るので」
「え、あ!!」
あ〜泡岸が去って行くぅ〜!!
「春、早く音楽室へ戻るわよ!! てんとう虫さんに失礼じゃない!!」
「・・・はぁ」
あのデブは嫌だな〜。
「早く戻る!!」
「はいはい」
・・・仕方ない、戻るしかないか。