第55話 蒼き夏空
どもです!!
今回は夏哉目線で物語は進みます!!
「・・・ッチ」
何とか東入口に到着した俺。
だが・・・
「・・・・・」
俺の目の前には、あの大男。
春吉の野郎・・・引き付けておけと言ったのに。
・・・だが
「テメェならいいや」
「・・・・・?」
この大男―――牛渓には借りがある。
そう、あの時の。
「・・・テメェには、あの時の借りと、香音の仇の二つがある。・・・悪いが、ここでその借りを返し、仇を取る」
正直、俺は古宇宮よりもコイツの方がムカつく。
「・・・・・」
相手は拳を構え、スタンバイ状態。
なら・・・
「手加減は無しだ」
俺は腰からそっと、今日家から持参した武器である木刀を抜き、構える。
相手の腹には鉄板。
こんな木刀で相手になるか分からんが、一応あった方がましだ。
「・・・・・」
ヒュゥ〜・・・
生温い風が吹く。
「・・・行くぜ!!」
風が吹き終わったその瞬間、俺は一気に駆け出した。
一方の相手も、俺に合わせ動き出す。
奴の腹には鉄板がある・・・なら、狙うは横腹。
相手は巨体なため、動きは遅い。
「・・・フン!!」
俺は牛渓との距離があと数歩の所まで行くと、右足で地面を蹴り、右側へ跳躍。
牛渓はそれに反応、咄嗟に右側へ向く。
「・・・遅ぇ」
その瞬間、今まで右手に持っていた木刀を左手に持ち替え、さらに左足に力を入れ、咄嗟に左へ跳躍。
右に振り向こうとしていた牛渓の左脇腹は今隙だらけ。
そして俺は、そのまま突きを放った!!
ドスッ!!
「うぐぉっ・・・」
怯んだ!!
今だ、一気に畳み掛け・・・ッ!!
パシッ!!
「なっ・・・」
し、しまった。
木刀を掴まれた!!
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
コイツ・・・化け物?
牛渓は雄叫びを上げつつ木刀を手前へ引っ張る。
「ぐっ・・・」
そのハンパない力に、俺は木刀ごと牛渓の目前に!!
そして牛渓は、思い切り拳を振り上げた。
ヤバイッ!!
「があああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ゴオオォォォンッ!!
物凄い雄叫び。
俺は木刀から手を離し、咄嗟に左へ。
直後、俺を狙って放たれた牛渓の拳は空を殴り、そのまま地面のアスファルトへ。
それと共に、物凄い轟音が辺りに轟いた。
「危ねぇ・・・」
マジかよ・・・アスファルトを本気で殴って、あの轟音。
「・・・クソッ」
アスファルトに打ち付けた奴の拳は全くの無事。
スゲー頑丈だな。
しかも・・・
「木刀取られたし」
参ったな・・・
「・・・・・ッ」
ッチ、牛渓の第二撃が来る。
あいつの左手には俺の木刀。
とりあえず取り返したい。
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ハッ、相変わらずデケェ雄叫びだなッ!!」
あの拳を喰らうとさすがにマズイ。
とりあえず回避を・・・。
「・・・逃がさん」
なっ!?
ヒュンッ・・・
「ぐあっ・・・」
くっ・・・あの野郎、木刀投げやがった・・・。
ッチ、腹に・・・
「があああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バチバチバチッ!!
「はッ・・・!?」
あまりの衝撃に片膝を着いた俺。
そして、ハッと上を向くと・・・
そこには、光る牛渓の拳があった。
しまった・・・ッ!!
バチバチバチバチッ
ゴオオォォンッ!!
「ぐあぁッ・・・あ・・・ぁ・・・」
牛渓の光る拳は、俺の腹に直撃。
その瞬間、腹が焼けるような感覚が。
痛ぇ・・・くそッ・・・い、意識がッ・・・
「・・・沈め」
「・・・ッ!!」
ヤバイ・・・このままだと・・・
痛み、苦しみ。
・・・踏ん張るしかねぇッ!!
ここで意識を失ったら負ける!!
「クソッがぁぁ!!」
俺は持てる力全てを使って、右側へ跳躍。
「うおっ!?」
その拍子に牛渓の拳は地面へ。
ドスッ!!
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
やべぇ・・・体が・・・動かねぇ・・・。
たった一撃でこれほどの威力って・・・。
・・・俺の目の前には、さっき牛渓が投げた俺の木刀が。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・うッ」
吐き気がする。
頭クラクラ。
・・・うっ
「・・・・・」
クソッ・・・牛渓の野郎、またこっちに・・・。
・・・野郎の右手には、黒い機械みたいな物。
スタンガンか・・・。
「・・・次こそ沈め」
ハッ・・・最近になってよく喋るな。
・・・クソッ、体が・・・言う事を聞かねぇ。
・・・動け
・・・動け俺の体
「・・・終わりだ」
スタンガンを右手に持ち、再び構える牛渓。
動け俺の体!!
動けよ!!
動けッ!!
ブオオォォンッ!!
俺の目の前に、牛渓の拳とスタンガンが。
終わったか、俺・・・
『なっくん!!』
・・・ん?
『なっくん!!』
・・・その瞬間、俺の脳裏に、カオの姿が。
俺は・・・一度ならず二度までも、カオを救えずに終わるのか?
・・・仇を取るんだろ
香音の仇を取るんだろ、俺!!
こんなデカイだけの野郎に、二度も負けるかボケェ!!
「・・・ハッ!!」
俺は牛渓の拳が当たる直前に、再び右へ回避の跳躍。
その際、左手で木刀を回収。
「ムッ・・・!?」
牛渓は咄嗟に動けず、スタンガンと拳は再びアスファルトへ。
今だッ!!
俺は回避するための跳躍の勢いを保ち、木刀を右手に移し変え、そのまま牛渓の頭へ!!
ガココォォン!!
「ぐあっ!!」
怯んだ牛渓。
ってかコイツ、超石頭だな。硬い。
だが、隙は今しかない!!
脇腹への突き
後頭部への打撃
「があっ!!」
さすがの牛渓でも、急所への攻撃は効果大。
「フィニッシュだ」
これで決める。
最後は木刀を捨て、右拳に力を混めて!!
「おらあああぁぁぁぁぁぁ!!」
ゴオオッ!!
「ぐあっあぁ!!」
牛渓の顔面に、精一杯のストレート!!
「・・・ハッ」
俺の拳をもろに受けた牛渓は、スローモーションのようにゆっくりと、地面に倒れていった。
ドサッ・・・
あらら〜ぶざまに鼻血なんか出しやがって・・・
「くっ・・・」
ッチ・・・俺にも・・・ダメージが・・・。
超フラフラ状態。
クソッ・・・目の前には倉庫の入口・・・
あと30メートルもないのに・・・
クッ・・・だめ・・・だ・・・。
足が・・・意識が・・・体が・・・。
「うっ・・・か、かお・・・ん・・・」
バタッ・・・
・・・俺が覚えてんのは、ここまでだ。