第4話 真面目な姫様
「いいかお前ら、明日は数学のテストやるから、しっかり勉強してこいよ」
こう言うのは、ウチのクラスの数学担当教師、葦本賢、今年で60のじいさん教師。
「うわぁ〜、嫌だな・・・」
「やべーよ、俺ちっとも勉強してない」
「ははは・・・もう・・・終わりにしたい」
珍しい!!いつもあのハイテンション馬鹿の野郎共が、今はスーパーネガティブボーイになっているではないかッ!!
「いいか、テストで50点以下をとったら補習だからな!!」
ハードル高ッ!!
は、半分以上取んなきゃダメなの!?
「テストは明日の1時間目だからな。はいじゃあ週番、号令」
「・・・・・まいったな、これは」
「まいったとか言うな!!」
現在図書室。
全教科中数学が2番目に不得意な俺は、自称数学得意なハンサムボーイこと、権三朗に数学を教わっている途中。
「いいか春吉、三角形ってのはTangentにCosine、Signの三つが大事で、三角形ABCのそれぞれの辺や角との関係は・・・」
・・・眠たい。
「つまり、三角形の総面積っつーのは・・・って春吉ぃ!!寝るな!!」
「・・・む?グッドモーニング権三朗」
お〜、綺麗な朝日が眩しいなぁ〜・・・(本当は夕日)
「・・・もう知らん、俺は帰る」
「え!あ、ちょっ、待って・・・」
行ってしまった・・・
「・・・どうすっかな・・・」
葦本の補習は嫌だな・・・あいついつも竹刀常備だし。
つーかそれより権三朗帰っちゃったけど・・・
あいつ出番が欲しいとか言ってた割にはすぐ帰っちゃったな・・・。
もっと粘ればよいものを。
「ん?春?」
「ん?」
背後から声が!!
「こんな所で何してんの?」
「ん、ああ・・・美羽か・・・」
今、俺の目の前にいるのは濱垣美羽。我が校の生徒会長だ。
「へぇ・・・春が勉強だなんて珍しいね」
「バーロー、したくてしてんじゃねぇよ」
「まさか葦本のテス勉?」
「イエス・・・」
はぁ・・・勉強だなんてつまらない。
「ちょうどいいや!私も勉強しに来たから、一緒に勉強しない?」
「ん?ああ、別に構わんが」
そういや美羽って頭良いんだっけ。
「で、どこが分からないの?」
「ああ・・・ここ、イマイチ二次方程式と言うやつが・・・」
第一、方程式って何だ?XやらYやらかっこやら何やら・・・?
「方程式って・・・中学生で習う事だよ?」
うわ・・・コイツの目、俺の事バカにしてる目だ・・・
「だ、だってよ・・・」
「まさか春、因数分解や素因数分解とか、知ってるよ・・・ね?」
「インスウブンカイ?ソインスウブンカイ?」
「・・・これは重症たわ・・・」
みんなッ、因数分解って分かる?
作者ですらうろ覚えなのに、そんなの分かるかぁ!!!
「・・・美羽様、どうか、どうかこのポンコツをお救い下さいませッ!!」
もう自分ではどうにもならない事を悟りました。
「・・・よし」
バシーンっと机に手を着く美羽。
「では、この濱垣ティーチャーが一肌脱ぎますか!!」
「よっ、待ってました!!」
多分権三朗よりかは分かりやすい授業をしてくれるハズだ!!
「よし!!」
長い黒髪を一つに束ね、軽く腕捲り、額には日の丸鉢巻き、そして右手には竹刀・・・竹刀ぃっ!?
「どっからそんな物を・・・」
「じゃあまずは素数について!!」
「だから・・・その竹刀、いらなく・・・」
パシ〜ンッ!!
「うわっ!!」
「無駄口たたかないの!!」
こ、怖ぇ〜!!
美羽はスイッチが入るとかなり熱血になる事、忘れてた・・・。
「じゃあまず素数って言うのはね、1とか2とかの・・・・・」
始まってしまったか・・・・・。
今日バイトあんだけど・・・間に合うかな?
パシ〜ンッ!!
「ひぃ〜!!」
「ほら、ボサッとしてないでノートをとる!!」
「す、すいません」
楓とはまた違った意味で怖い・・・。
「よし、じゃあ続き行くわよ!!」
「あ、アイアイサーッ!!」
その後、たまに図書室から男性の悲鳴が聞こえた事は言うまでもないな。
「・・・よく頑張ったわね、これできっと明日のテストは何とかなるわ!」
現在午後8時。もうバイトには間に合わない。
「俺は・・・魔界から帰ってこれたのか?」
もうHPは赤く点滅している・・・だ、だれか薬草を・・・
「よし、そろそろ帰りますか。春、行こう!」
「俺は・・・生きているのか?」
「何言ってんの?早く行かないと先生に怒られるよ?」
「俺は・・・生きている・・・ああ、女神アスタルテよ、ああぁ・・・」
命に感謝、ああ・・・生きるって素晴らしい!!
「春?」
「神様ぁ〜!!」
え?結局テストどうなったかって?
あ、聞いちゃうソレ?
聞いちゃうの?
うん・・・まぁ・・・はい、49点でしたよ。
それが何か?
はい、久しぶりに泣きましたが何か?
まぁ美羽には殴られましたよ。グーで。
うん、はい、補習ね。
やりましたよ、葦本の竹刀の元で。
二日連続竹刀は精神的にきつかったです。
え?他に?ああ、楓や権三朗もいたかな?ああ、いたね。
これからはもっと頑張ります(泣)。