第39話 瀬良家
葉城高校二年球技大会三日目
競技はサッカー
トーナメントの方式はバレーボールと同じ。
ただ、今回はウチのクラスは第三試合。
つまり、試合に一勝するだけで決勝進出なのだ!
だだし、前にも言った通り、初戦の相手は一組。
「ぐわっ、や、やべぇ〜!!」
やばい、今日寝坊したッ!!
小鳥のさえずりが耳に入り、爽やかな朝日が降り注ぐ中、俺はゆっくりと起床。
清々しい気持ちだったんだ、起きた当初は。
で、
目覚ましを確認した途端、清々しさはどっか行った。
「は、8時半ッ!?」
葉城高校入学以来、初めてのガチ寝坊!!
や、やべぇ〜!!
で、今、いつもより三本も遅い電車に乗り、葉城高校の最寄駅の南葉城駅に到着!!
「うわぁ〜!!」
俺は半ば絶叫しながら、高校への道をダッシュ!
きっと、学校に着いたら規律に厳しいダーク生徒会長に殴られる事を予想しながら。
「グーは嫌ぁ〜!!」
奴はいつもグーで目を狙ってくるからな・・・
で、とにかく全力疾走!!
「はぁ、はぁ、はぁ」
よ、よし・・・もう少しで学校だ・・・って思った、その時だった!!
ドンっ!!
「ぐはっ!?」
曲がり角で、誰かと激突した(コラそこ、ベターだなとか言わない)!!
「お、おい、大丈夫か!?」
ぶつかった拍子に相手は転倒、俺は無事。
「おい・・・って」
は?何これ?
ぶつかった相手は見知らぬ女性。
ここまではいい。
「痛っ・・・あ!貴方、もしかして葉城高校の人!?」
ぶつかってきた女性は、俺の着ている制服をガン見。
「え、あ、まぁ・・・そうですけど」
相手の女性は20歳くらいの黒ギャル。
「え、マジで!!ちょ、アンタ、私を助けて!」
ぎゃ〜!!
この黒ギャル、突然足にすりついてきた!!
「えぇッ!?」
ぎゃ〜!!
ギャルのマスカラが俺のズボンに!!
「ちょ、あんた、何やって・・・」
その時・・・
「あ、見つけた!!」
すぐ目の前の角から、見覚えのあるハゲメガネがッ!!
「観念しろ、姉さ・・・ってうおッ!!き、キサマ春吉!?」
「ハゲメガネッ!?」
秋馬きたッ!!
「しゅ、秋馬・・・」
黒ギャルは、秋馬から顔を背ける・・・ん?
「ぎゃ〜!!」
ギャルの口紅がッ!!
俺のズボンにッ!!
「春吉・・・キサマ、まさか我が姉に手を・・・!?」
「ワッツ!?」
え?
我が姉?
「秋馬嫌ぁ〜」
「姉さん、いい加減家に戻って来い。父上と母上が心配しているぞ」
まさか・・・
「・・・まさか、この人は・・・」
「・・・その人は瀬良採子。我が瀬良家の長女で、僕の姉だ」
しゅ、秋馬の姉貴!?
「チィース!!」
に、似てねぇ!!
「・・・春吉?」
「・・・あ?」
俺がハッと気づくと、目の前には小夜の顔。
「・・・大丈夫?」
「あ、ああ・・・」
現在、葉城高校のグラウンドにて、二年三組と一組のサッカーの試合中。
ルールはバレーボールと同じで、女子、男子、混合の30分制。
今は女子がやってる。
ちなみに、グラウンドには楓と美羽の姿あり。
ん?ああ・・・
結局俺は遅刻しましたよ?
グー?ああ、もらったよ、右目に。
「・・・しかし」
楓はゴールを決めまくり、美羽は転びまくり。
んな事じゃなくて。
「・・・・・」
今朝は面白い物を見た。
「姉さんはもっと、瀬良家の長女という立場をわきまえてもらいたい!!」
「うるさいわねぇ、家なんてアンタが継ぎゃいいでしょ!?」
「だからって、あんな危ないクラブで働くなんて・・・全くだ!!」
「全くなのはこっちよ、人の職場まで来て、勝手に怒鳴って・・・」
「うるさい、姉さんは瀬良家の自覚を持て!!」
・・・あ〜、何だコレ・・・?
現在、瀬良姉弟絶賛喧嘩中。
「・・・あの〜」
俺は勇気を持って二人に質問!!
「俺、学校へ行ってもいいでしょうか?」
一時間くらい遅刻していますし・・・つーか秋馬もだけど。
「駄目だ、春吉にはどちらが悪いのか見極めてもらう」
「君、春吉って言うんだ。ねぇ、イマドキ家があーだこーだなんて、古臭くねぇ?」
なッ・・・学校へ行かせてくれないのか・・・。
「・・・はぁ」
結局、俺は丸々30分、ずーっと他人の喧嘩を眺めてました。
つーか昨日の尾行、秋馬が入って行った店こそ、秋馬姉の働いている店らしく・・・。
「姉さん、せめてあの店で働くのだけは止してくれ」
「嫌、私は人をいたぶるのが好きなの!!」
・・・瀬良家は、怖い家だなと、思いました。