第36話 テニス
翌日・・・
火曜日、葉城高校球技大会二日目。
二年、競技はテニス。
現在午前10時
テニスは午前男子、午後は女子。
バレーボールと違って、テニスは個人競技となるので、たまにトーナメントの関係上、同じクラス同士の奴が戦う事もしばしば。
で・・・
「きゃ〜!!」
「吉崎くん、頑張ってぇ〜!!」
「吉崎くんカッコイイ!!」
「なっくんファイトォ!!」
第二テニスコート(葉城高校にはテニスコートは二つある)にて、黄色い歓声が上がっている。
「ハッ!!」
パコンッ!!
「きゃ〜、吉崎くん〜!!」
「カッコイイ!!」
「L・O・V・E・夏哉ぁ〜!!」
「なっくんナイススマッシュ!!」
・・・お分かり頂けただろうか?
容姿端麗頭脳明晰、運動OK勉強OK、おまけにイケメン。
去年のミスター葉城、吉崎夏哉。
ファンクラブもありますよぉ。
「・・・ふぅ」
何だかむかつく。
「春、あんたひがんでる?」
「・・・うっせぇ」
現在応援席。
周りには美羽、楓、小夜、顔真っ赤の赤佐。
・・・もちろん、あのにっくきバネ人間の応援ではありません。
今、夏哉の戦っている相手・・・
「はぁ〜はぁ〜、き、キツイ・・・」
もうバッテバテの重原権三朗。
「おい脇役、もっとしっかりせい!!」
ヤジを飛ばしてみる。
「う、うるせぇ」
半分声が出てないし・・・。
「・・・このままだと、一回も点を取れずにコールド負けだな」
奴を庇うつもりではないが、権三朗はテニス経験者なので、決して下手と言うわけではない。
ただ・・・
「・・・いくぜ」
シュッ!!
夏哉はテニスボールを天高く上げ、
パコンッ!!
強烈なサーブ!!
「うわっ!!」
バッシーンッ!!
権三朗のラケット、宙をきる。
「きゃ〜!!吉崎くん〜!!」
「すご〜い、カッコイイ!!」
「夏哉様ぁ〜!!」
「なっくん、手加減手加減!!」
これは・・・精神的に大ダメージ。
権三朗のHPは既に赤く点滅している!!
「・・・あんた、テニス経験者とか言ってたけど・・・」
夏哉はラケットを手の平でクルクル。
「案外、弱ぇな」
「なッ・・・」
ご、権三朗のガラスのハートが・・・割れた!!
「あらら〜、もう権三朗は再起不能だね」
美羽は軽蔑の目。
「ああ・・・あぁ・・・あ・・・ぁ・・・」
権三朗君は、泣いていました。
午前、男子は夏哉の優勝で幕を閉じ、時刻は午後1時。
テニス女子スタート!
「いよいよだ・・・ああ・・・」
「・・・何故、お前がそわそわしてんだ?」
テニス第一コートの応援席。
そわそわしている赤佐クン。
「だ、だって・・・」
「・・・ピュアやの」
だいたい理由は分かる・・・。
〔只今より第一コート、三組荏咲小夜と一組水岡香音の試合を始めます〕
「ああ・・・荏咲さん・・・」
「まぁ、とりあえず落ち着こうぜ赤佐」
俺は赤佐を静めながら、後ろを確認。
「小夜ぉ!!気合いだぁ!!」
楓に美羽、権三朗の抜け殻、その他三組の野郎共とレディ共。
あとたっつぁん。
「赤佐、あんまそわそわしてっと、気付かれるぞ!?」
純粋赤佐大輔片思い物語がな。
「だ、だって・・・大事な初戦・・・」
「とにかく落ち着こ」
全く・・・。
「あのな、小夜は小学中学とテニス部だったんだ。今でこそ弓道部だが、たまに堀田ジムでテニスやってるし・・・」
「ああ・・・ああ・・・・・」
話、聞いてねぇ〜!!
「はぁ〜・・・しっかし」
小夜の相手・・・確か水岡っつったっけ?
いつも夏哉とつるんでる奴。
「・・・小夜」
小夜はグッとラケットを握り、視線は水岡。
一方の相手は、ラケットの握り方をクラスの女子に教わり中。
「これは・・・余裕かもな」
「・・・それはどうだかな」
「・・・ッ!!」
ぶほっ!!
いつの間にか、隣に夏哉の姿が!!
「あのカオはすげぇぞ、いろんな意味で」
「はぁ?」
「まぁ・・・見てればわかるさ」
その時!!
〔ゲームスタート!〕
試合が始まった!!