第31話 四季邂逅
どうも!!
今話は、春吉、夏哉、秋馬の三人の目線で物語は進みます。
ちょっと面倒臭いかもしれませんが、ご了承下さい。
あと、申し訳ありませんが、今回後書きのミニコーナーはお休みさせて頂きます。
荏咲家のある団地前の坂道。
結構な傾斜があり、自転車で上ろうとすると、肺が悲惨な事になる。
だから皆、この坂道は自転車を押して上る。
・・・んな事はどうでもいいんだよ。
「・・・にしても、相変わらずこの坂キツイな」
「・・・ん」
「・・・お前、案外涼しい顔してんぞ」
「・・・もう、慣れてるから」
「マジですか・・・」
熱帯夜に重い荷物、傾斜急な坂道。
俺はもう既にヘロヘロでさぁ〜!!
「・・・春吉」
「んあ?」
横を見ると、何やら不安そうな顔の小夜。
「・・・あれ」
小夜の目線の先には・・・
「あ、あれは・・・」
坂道のてっぺん、そこにいたのは・・・
「第9話のヤンキーさん達!?」
あのリーゼントやパンチパーマは・・・ガチであの時の・・・。
「・・・春吉?」
「・・・小夜、俺は遠回りを推奨するぞ」
あ、あいつらは、俺のギア3でも倒せない輩だし・・・
その時・・・
「だ、誰か助けてぇ〜!!」
は?TASUKETEだと!?
つーか、このパターンはまさか・・・
「・・・春吉、アレ」
「・・・まさか」
俺は恐る恐る、視線を坂道てっぺんへ。
そこには・・・
「コラテメェ、さっさと金よこせや!!」
「シバくぞコラァ!」
「や、止めて下さい・・・」
今、ヤンキーさん達にカツアゲされてんのは、この前と違い、天馬ではなかった。
だが・・・
「・・・春吉」
「・・・・・その目」
まさか
「・・・あの少年を、ヤンキーさん達から助けて来い、って言ってます?」
「・・・あの子、かわいそう。春吉、助けて・・・・・」
やはりかッ!!
しかし・・・
女の子(小夜)の手前、日本男子として、恥ずかしい所は見せられない。
「・・・ここは、このスーパービューティフルハンサメンハイパーハードボイルドマグナム春吉に、任せなさい!!」
本当は嫌だぁ〜!!
―――――
「なっくん、どうしたの?」
「あ?んだよ」
・・・今日はさっきまでバスケ練習、その後、香音と下校。
「だってなっくん、なんかいつもより楽しそうなんだもん」
「・・・ハッ」
まぁ、確かにそれらしい事はあったな。
「・・・なっくん?」
「・・・なぁ、お前、中学の頃のバスケ大会、覚えているか?」
「えっ?」
「中三の時の、県大決勝だよ」
あん時は確か・・・
その時!!
「誰か、助けてぇ〜!!!」
「・・・あ?」
「あ、なっくん、アレ!!」
香音が指差す先、そこには・・・
「・・・不良か」
「あれ・・・だれかリンチ喰らってない?」
・・・確かに、ガキが何かされてんな。
・・・いいだろう
「今日はすげぇ気分がいい」
「な、なっくん!?」
「たまには、暴れてもいいよな?」
「いや・・・なっくん、さすがにそれは・・・」
ちょっと引き気味の香音。
「ハッ、いいよな?」
たまには暴れたい。
「・・・もう、停学になっても知らないならねっ!!」
「・・・停学か、まあいい。じゃ、行ってくる」
不良は5人。
スピードが大事だな、こりゃ。
「退学になっても知らないよぉ!!」
・・・知るかっ
―――――
「しまった、学校に忘れ物をしてしまった」
この秋馬、一生の不覚
と、言う訳で、僕は学校への道を逆走中さ。
「全く・・・何故、我が家から学校は遠いのだ・・・」
今度、父上に相談でもしてみよう。
「・・・にしても、今日は暑いな」
熱帯夜と言うやつか。
その時・・・
「誰か、助けてぇ〜!!!」
「むむっ!?」
今のは、助けを求める声ではないだろうか?
「一体、どこから?」
むむむっ、前方に、何やらゴツイ人達が、少年を攻撃しているではないか。
瀬良家家訓
一つ・弱き者はその身を掛けてでも助けろ!!
「・・・父上、僕は瀬良家の一員として、この身を掛けてでも、あの少年を助けてみせよう!!」
僕はかばんを地面に置き、少年の元へ。
―――――
「お、おいっ!!」
「オイッ!!」
「そこの君達!!」
ん?
「あんだ?何のようだガキっ!!」
ヤンキーさんがこっちに気付いた!!
つーかっ!!
「え?」
「は?」
「なぬっ?」
え、こ、コイツら!
「夏哉に秋馬!?」
えーっ!!!!!
「・・・ハッ、春吉に秋馬・・・テメェら、何してんだ?」
「むむむっ、まさか、こんな所で天然記念物に会うとはな」
皆、他の存在に今気付いた模様。
「つーか秋馬、お前もう家に帰ったんじゃ?」
「・・・忘れ物を学校に取りに行っている途中だ」
バネ人間にハゲメガネ・・・ぶっちゃけ、ヤンキーさんよりも会いたくない連中に会ってしまった。
「オイテメェら!!」
一方のヤンキーさん、半分キレてます。
「にしても、夏哉、なぜ君までここにいるのだ?」
「黙れハゲ、テメェに言う筋合いはねぇ」
夏哉と秋馬、ヤンキーを無視!!
「ハゲ・・・フフフ、どうやら君も、我が瀬良家の美学を分かっていないようだな。いや、哀れ」
「テメェの美学なんて、知った所でヘドしかでねぇよ」
「ヘドだと・・・ふん、これだから一般庶民は嫌いなんだ」
「腐れメガネ」
「なにッ!?」
「あ!?やるか?」
・・・この二人は一体、何をしてるんだか。
「オイテメェら、この岡田工業高校の番長、猫舌八郎様に喧嘩売っといて、何してんだオラァ!!」
半ば自己紹介混じりの脅し文句を言いながら、ヤンキーさんこっちへ接近!
「テメェらなんか、この八郎様が八つ裂きに・・・・・」
「ウルセェッ!!」
「邪魔だ!!」
ドスッ!!
「ぐあっ!!」
その時、二人の拳が八郎さんの顎に・・・クリーンヒットッ!!
そして八郎さん、白目に泡吹いて即倒!!
「ハゲメガネ、今ここでテメェをシバいてやる」
「ふん、庶民の戯言など、下らん事だな」
しかも二人共、まだ口喧嘩中ですし・・・。
何なんだ、コレ!?
「は、八郎さんが・・・やられただと・・・」
「こ、コイツらヤベェ、に、逃げろぉ!!」
他のヤンキー、八郎さんを担ぎながら撤退!!
な、何とかなった・・・(俺は何もしてないが)。
「あ、あの・・・」
「ん?」
ヤンキーさん達が去った後、代わりにそこにいたのは、カツアゲされていた少年。
「あの、あ、ありがとうございます」
お礼か・・・
「あ、礼なら、俺じゃなくてあっちの二人に・・・・・ん?」
「あ、あれ?」
俺はその少年の顔を見た瞬間、ハッと気付いた。
どうやら少年の方も、今気付いたらしい。
「お前・・・冬希か?」
「もしかして・・・春吉君?」
少年―――冬希の声に、絶賛喧嘩中だった夏哉と秋馬がこちらに振り向いた。
偶然とは、凄いものだ。