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三人の姫と一人の手下の物語  作者: 五円玉
日常篇・春
3/116

第3話 無口な姫様

 「はい、じゃあ今から体育の授業を始めます」

 

 葉城高等学校二年三組、木曜日二時間目の授業は体育。

 

 「今日は体育担当の鯖江先生がお休みのため、今日の体育は自習としてサッカーをやろうかと」

 

 体育自習担当の教師がサッカーと言った瞬間、野郎共から数多くの歓声がッ!!

 

 「うわ、マジで!?」

 「先生最高!!」

 「やべー、最高!!」

 「神様よ、感謝!!」

 

 ・・・まぁ、もし今日が自習でなければ長距離走だった事を考えると、野郎共の気持ちは良く分かる。

 

 「では、今からチームを2チーム作ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウチのクラスは男子16人、女子18人、計34人。

 まぁ、当たり前だが男女体育は別々なので、チームは野郎共16人を二等分、1チーム8人づつ。

 

 「では、キックオフ!!」

 

 自習担当がホイッスルを吹き、ゲームスタート!

 ちなみに俺はキーパー・・・つまらん。

 

 本当ならキャプ〇ン翼を越えるスーパーシュートを決めるはずだったのに・・・。

 

 「・・・仕方ない、ここは日頃イメージトレーニングで鍛えている俺のジャンプ力で・・・ばふっ!!」 

 ゆ、油断した・・・

 

 ボールが顔面にクリーンヒット!!

 

 「春吉ぃ、大丈夫かぁ?ってうわ、鼻血!?」

 

 他の連中は皆、俺の顔面を張ったゴール守備に歓声を上げつつ、俺の鼻血に多少引き気味・・・

 

 「・・・・・」

 

 あぁ・・・情けない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・で、サッカー開始5分でコレか・・・」

 

 「コレです・・・」

 

 現在、保健室。

 結局あの後、鼻血がいつになっても止まんなかったから、とりあえず保健室まで来てみた訳ですよ。

 

 「まぁ・・・鼻が骨折している訳でもないし、とりあえず押さえとけばそのうち止まるだろう。しばらくそのまま押さえとけ」

 

 養護教諭の言い付け通り、我が最強パワーで鼻を押さえる俺。

 ・・・鼻がジンジンしてきた。

 

 「・・・とりあえず私、ちょっと職員室行ってくるから、そのまま押さえて待ってて」

 

 「了解っす」

 

 そう言うと養護教諭は一旦職員室へ。

 

 ・・・今、誰か来たらどうしようか・・・。

 

 俺は一人寂しく保健室で鼻を押さえる。

 

 「・・・はぁ」

 

 そりゃ、ため息も出るよ。はぁ・・・。

 

 コンコンッ!!

 

 「おえっ!?」

 

 び、ビックリした・・・・・

 突然のノック。

 

 そして・・・

 

 ガラガラガラ!!

 

 やべー、人が入って来ちゃうよ!!

 

 「あ、今、保健教諭はここに・・・」

 

 「・・・・・あ」

 

 「あ!!」

 

 俺はさらにビックリ!

 

 「なんだ、小夜か・・・・・」

 

 そこにいたのは荏咲小夜。俺の昔からの友人だ。

 

 「・・・・・鼻血?」

 

 「ん?あ・・・」

 

 ヤバ、恥ずかしい所見られた!!

 

 「・・・大丈夫?」

 

 「あ、うん。大丈夫・・・」

 

 現在小夜は体育着にハーフパンツ姿。

 

 「さ、小夜こそどうしたの?」

 

 鼻を押さえているから声が・・・

 

 「・・・・・足、捻った」

 

 小夜は右足をちょこっと触る。

 そう言えば、今日の女子の体育って確かバスケだったっけ。

 

 「そっか・・・大丈夫か!?」

 

 「・・・・・ん」

 

 微妙な顔だな・・・

 日頃ポーカーフェイスの小夜はあまり感情を外には出さない。

 だから、こう言う時は非常に分かりづらい。

 

 「まぁ、とりあえず座りなよ、まだ足痛むんだろ?」

 

 「・・・うん」

 

 小夜はとりあえずベッドへ腰掛けた。

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・」

 

 く、空気、重たくないか!?

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・」

 

 う・・・気まずい。

 何か話題を・・・

 

 「さ、小夜はさ、サッカーとバスケだったらどっちが得意?」

 

 「・・・・・う〜ん」

 

 「お、俺はバスケかな?サッカーとか人数多すぎてごっちゃになるし」

 

 なんつー適当な理由言ってんだ、俺!!

 しかし、今は話題作りに集中せねば!!

 

 「・・・うん、確かにそうかも」

 

 なるほど、小夜もキャプ〇ン翼派ではなくスラムダ〇ク派か!!

 まぁ、ぶっちゃけ俺はどっちも好きだが。

 

 「や、やっぱりバスケだよね!なんつーかこう、左手はそえるだけ、つーか・・・」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・」

 

 女子にこんな話しても分からないか・・・

 

 「・・・小夜、何か楽しい事ない?」

 

 もういいや。

 必殺、人任せ!!

 

 「・・・・・マジカルバナナ?」

 

 Oh、ここでそう来るか!!

 コイツ・・・侮れんな・・・。

 

 「ま、マジカルバナナ・・・」

 

 「・・・もしくは、古今東西?」

 

 ・・・小夜に悪気はないんだ。

 ただ・・・この子の考えてる事は本当に分からない・・・。

 

 二人で保健室で鼻押さえながら古今東西。

 さて、あなたならどうする?

 

 「なんか・・・他に・・・考えなくてもできるような・・・」

 

 「・・・じゃあ」

 

 「ん?なんか思いついたか?」

 

 「・・・・・み〇もんたのモノマネやって」

 

 ・・・はい?

 

 「み〇さんのも、モノマネ?」

 

 「・・・(コクリ)」

 

 「本気で言ってんのか?」

 

 「・・・(コクリ)」

 

 「つーか何故み〇さんなの?」

 

 「・・・何となく」

 

 なっ・・・いつも感情を表に出さない小夜の瞳が・・・瞳がッ・・・!!

 

 輝いてやがるっ!!

 

 め、珍しい・・・こんな瞳、珍しい・・・

 

 「・・・・・だめ?」

 

 「・・・いいだろう」

 

 もはやノリで答えた俺。 ・・・もう大怪我は免れないな。

 

 「・・・っでは」

 

 

 

 「小夜さん、本当にいいんですね。ファイナルアンサー?(み〇声)」

 

 

 

 「・・・・・」

 

 ま、まさかのノーリアクションッ!!

 

 「・・・あの・・・俺のモノマネ・・・」

 

 「・・・・・微妙に似てた」

 

 ・・・微妙?

 

 もう俺は・・・燃え尽きた。

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