第3話 無口な姫様
「はい、じゃあ今から体育の授業を始めます」
葉城高等学校二年三組、木曜日二時間目の授業は体育。
「今日は体育担当の鯖江先生がお休みのため、今日の体育は自習としてサッカーをやろうかと」
体育自習担当の教師がサッカーと言った瞬間、野郎共から数多くの歓声がッ!!
「うわ、マジで!?」
「先生最高!!」
「やべー、最高!!」
「神様よ、感謝!!」
・・・まぁ、もし今日が自習でなければ長距離走だった事を考えると、野郎共の気持ちは良く分かる。
「では、今からチームを2チーム作ってくれ」
ウチのクラスは男子16人、女子18人、計34人。
まぁ、当たり前だが男女体育は別々なので、チームは野郎共16人を二等分、1チーム8人づつ。
「では、キックオフ!!」
自習担当がホイッスルを吹き、ゲームスタート!
ちなみに俺はキーパー・・・つまらん。
本当ならキャプ〇ン翼を越えるスーパーシュートを決めるはずだったのに・・・。
「・・・仕方ない、ここは日頃イメージトレーニングで鍛えている俺のジャンプ力で・・・ばふっ!!」
ゆ、油断した・・・
ボールが顔面にクリーンヒット!!
「春吉ぃ、大丈夫かぁ?ってうわ、鼻血!?」
他の連中は皆、俺の顔面を張ったゴール守備に歓声を上げつつ、俺の鼻血に多少引き気味・・・
「・・・・・」
あぁ・・・情けない。
「・・・で、サッカー開始5分でコレか・・・」
「コレです・・・」
現在、保健室。
結局あの後、鼻血がいつになっても止まんなかったから、とりあえず保健室まで来てみた訳ですよ。
「まぁ・・・鼻が骨折している訳でもないし、とりあえず押さえとけばそのうち止まるだろう。しばらくそのまま押さえとけ」
養護教諭の言い付け通り、我が最強パワーで鼻を押さえる俺。
・・・鼻がジンジンしてきた。
「・・・とりあえず私、ちょっと職員室行ってくるから、そのまま押さえて待ってて」
「了解っす」
そう言うと養護教諭は一旦職員室へ。
・・・今、誰か来たらどうしようか・・・。
俺は一人寂しく保健室で鼻を押さえる。
「・・・はぁ」
そりゃ、ため息も出るよ。はぁ・・・。
コンコンッ!!
「おえっ!?」
び、ビックリした・・・・・
突然のノック。
そして・・・
ガラガラガラ!!
やべー、人が入って来ちゃうよ!!
「あ、今、保健教諭はここに・・・」
「・・・・・あ」
「あ!!」
俺はさらにビックリ!
「なんだ、小夜か・・・・・」
そこにいたのは荏咲小夜。俺の昔からの友人だ。
「・・・・・鼻血?」
「ん?あ・・・」
ヤバ、恥ずかしい所見られた!!
「・・・大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫・・・」
現在小夜は体育着にハーフパンツ姿。
「さ、小夜こそどうしたの?」
鼻を押さえているから声が・・・
「・・・・・足、捻った」
小夜は右足をちょこっと触る。
そう言えば、今日の女子の体育って確かバスケだったっけ。
「そっか・・・大丈夫か!?」
「・・・・・ん」
微妙な顔だな・・・
日頃ポーカーフェイスの小夜はあまり感情を外には出さない。
だから、こう言う時は非常に分かりづらい。
「まぁ、とりあえず座りなよ、まだ足痛むんだろ?」
「・・・うん」
小夜はとりあえずベッドへ腰掛けた。
「・・・・・」
「・・・・・」
く、空気、重たくないか!?
「・・・・・」
「・・・・・」
う・・・気まずい。
何か話題を・・・
「さ、小夜はさ、サッカーとバスケだったらどっちが得意?」
「・・・・・う〜ん」
「お、俺はバスケかな?サッカーとか人数多すぎてごっちゃになるし」
なんつー適当な理由言ってんだ、俺!!
しかし、今は話題作りに集中せねば!!
「・・・うん、確かにそうかも」
なるほど、小夜もキャプ〇ン翼派ではなくスラムダ〇ク派か!!
まぁ、ぶっちゃけ俺はどっちも好きだが。
「や、やっぱりバスケだよね!なんつーかこう、左手はそえるだけ、つーか・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
女子にこんな話しても分からないか・・・
「・・・小夜、何か楽しい事ない?」
もういいや。
必殺、人任せ!!
「・・・・・マジカルバナナ?」
Oh、ここでそう来るか!!
コイツ・・・侮れんな・・・。
「ま、マジカルバナナ・・・」
「・・・もしくは、古今東西?」
・・・小夜に悪気はないんだ。
ただ・・・この子の考えてる事は本当に分からない・・・。
二人で保健室で鼻押さえながら古今東西。
さて、あなたならどうする?
「なんか・・・他に・・・考えなくてもできるような・・・」
「・・・じゃあ」
「ん?なんか思いついたか?」
「・・・・・み〇もんたのモノマネやって」
・・・はい?
「み〇さんのも、モノマネ?」
「・・・(コクリ)」
「本気で言ってんのか?」
「・・・(コクリ)」
「つーか何故み〇さんなの?」
「・・・何となく」
なっ・・・いつも感情を表に出さない小夜の瞳が・・・瞳がッ・・・!!
輝いてやがるっ!!
め、珍しい・・・こんな瞳、珍しい・・・
「・・・・・だめ?」
「・・・いいだろう」
もはやノリで答えた俺。 ・・・もう大怪我は免れないな。
「・・・っでは」
「小夜さん、本当にいいんですね。ファイナルアンサー?(み〇声)」
「・・・・・」
ま、まさかのノーリアクションッ!!
「・・・あの・・・俺のモノマネ・・・」
「・・・・・微妙に似てた」
・・・微妙?
もう俺は・・・燃え尽きた。




