第23話 昔のお話後編
どうも!!
やっと学校の定期テストが終わったので、連載再開です!!
あ、あと、今回はキャラクタープロフィール紹介はお休みです!!
「・・・まただ」
簗場幼稚園から少し離れた畑、その畑のすぐそばにある農業用具の物置。
「みんな・・・みんな・・・迷惑なんだ」
その物置の中に、一人の少女の姿があった。
「うぅ・・・」
少女―――亜希は、一人小さく丸まり、涙を流していた。
先程、亜希は聞いてしまったのだ。
平石先生と花岡先生の、あの会話を・・・
「やっぱり・・・どこへ行っても、わたしが“ざいばつ”の娘だから・・・みんな、迷惑なんだ」
財閥の跡取り―――それは、周りが嫌でも気を使ってしまう生き物。
周りからぴりぴりした態度で接しられる事、亜希はそれが嫌いであった。
どこの幼稚園に行っても、必ず受ける軽蔑の目・・・。
ガコンッ!!
「・・・っは!?」
あれからどのくらい経っただろうか。
物置の中で泣いていた亜希は、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
そして・・・
「・・・え?」
「・・・ん?」
今さっき開かれた物置の扉、そして、その向こうにいたのは・・・
「・・・あきちゃん?」
「・・・あ!」
そこにいたのは、小さな少年。
亜希は、彼に見覚えがあった。
確か、今日、あの教室にいた・・・
「・・・はるよしくん?」
「・・・やっぱりあきちゃんだ!」
そう言うと、幼き日の春吉少年は、不思議そうな顔をした。
「なんで、あきちゃんがここにいるの?」
「えっ!?」
この畑・・・何も知らず、ただ逃げるために入り込んだこの畑は・・・
「ここ、ぼくのおじいちゃんの畑だよ?」
木山家の畑でした。
「はるよしくんの、おじいちゃん?」
「うん!!」
春吉少年は元気よく頷く。
辺りは既に、夜の静けさに満ちていた。
その頃、簗場幼稚園
「どう言う事かね!?何で私の娘が行方不明になっているんだ!!」
簗場幼稚園、職員室
「申し訳ございません、今、警察の方にも連絡をしましたので、すぐに捜索を・・・」
幼稚園の職員達は皆、目の前の男性に向け、頭を下げている。
「今だと!?何でもっと早く警察に連絡しないんだ!!亜希は我が渡邉財閥の跡取りなんだぞ!もし、誘拐でもされたら・・・」
「本当に申し訳ございません、渡邉様。こちらとしても、監視の不注意が・・・」
「もういい!!我が権力を使って、こんな幼稚園なんか潰してやる!!」
「へぇ〜、あきちゃん、ざいばつが嫌なんだ」
「・・・うん」
現在午後7時。
二人は、木山家の農具倉庫(物置)の中で、おはなしをしていた。
「もう、ざいばつは嫌。みんなに迷惑、かけたくない・・・」
「・・・めいわく」
春吉はボソッと呟いた。
「・・・何で、ざいばつがめいわくなの?」
「えっ・・・!?」
「ぼくは、めいわくしてないよ?」
財閥の跡取り
他人からの軽蔑
必要以上のお節介
気を使う周りの人々
それら全てが、皆に当てはまる、亜希が掛けてしまう迷惑。
しかし・・・
「あきちゃん、何も悪い事、してないじゃん」
「はるよしくん・・・」
迷惑か?と、周りの大人に聞くと、大人はわざとらしい笑顔で「大丈夫」と、答えていた。
初めて、「迷惑じゃない」と、言われた・・・。
なんだか、涙が引いていた。
「あきちゃんは何もわるくないよ、めいわくなんかじゃないよ!!」
春吉少年は、ニッコリと笑った。
その言葉と、わざとらしい感じがない笑顔に、嬉しさを感じた。
そして、感謝なのか、安心なのか、良く分からない感情が、胸をよぎった。
「・・・ありがとう」
「えっ?」
小さい子供が考える感謝の気持ち、安心を与えてくれた人に、小さい子供は、何の恥じらいもなく、この言葉を言えてしまう。
理性の働いた大人だったら、絶対恥じらう・・・と言うか、単純な子供の気持ちだ。
「・・・はるよしくん、迷惑じゃなければ・・・大きくなったら、私達・・・結婚しよう!」
大きくなったら先生と結婚する、お父さん、お母さんと結婚する!
皆が小さい子供の時、ほとんどの人が言った事があるであろう、軽い気持ちの「結婚」と言う言葉。
「・・・うん!」
当時の春吉は、きっとこの軽い気持ちだったのであろう。
「やくそくだよ?」
「うん!!」
午後8時、渡邉財閥の跡取りは、幼稚園の入口で発見された。
激しく怒られた。
そして・・・
違う幼稚園へと、転校して行った。
自分に「迷惑じゃない」と言ってくれた彼。
あの夜の、あの「結婚」の言葉。
彼女にとっては、軽い気持ちなんかでは、なかった。