第2話 わがままな姫様
「喰らえ、我が最高必殺、かめはめ波EXレボリューションっ!!」
「何っ!!ぐはっ!!」
吹っ飛ぶ俺。
「くそぅ、何のこれしき、いくぞ我が最強魔法、ググってはいけない検索ワードをググってしまい、後にする事となるあの絶大な後悔の念っ!!」
「な、うぅ、ぐわ〜・・・」
そう言って倒れるのは先程、かめはめ波EXレボリューションを放ったMyクラスメートの重原権三朗。
超地味メンの男子だ。
「く、くそぅ・・・」
そして権三朗は力なく倒れていった。
「フッ・・・なかなかの野郎だったぜ」
ハードボイルド風に格好良く決める俺。
決まった・・・。
「すげぇ春吉、あの“スーパーヤサイ人”こと権三朗に勝っちまうなんて・・・こりゃたまげた!!」
クラスの野郎共がヒューヒューと俺をおだてやがる。
・・・て、照れるぜッ!!
ん?今何やってんのかって?
そりゃ、毎週恒例の波動拳大会に決まってるでしょ!?
もちろん、教室の後ろで。
まぁ・・・はしゃいでいんのは野郎共だけで、女子は教室前方で白い目。
「おし、次は俺だ!」
お!新たなチャレンジャーや!!
「さぁ、掛かってこい!!」
俺はビシッと身構える。
「行くぜ春吉、みんなの精力合わせて作った元気すぎ玉ぁ〜!!」
「ふん、こっちは頑張って作ったトランプタワーを写メろうとして、誤ってタワーにぶつかってしまい、はかなくも崩れさるタワーを見た時のあの虚無感っ!!」
その日の帰り道
「はは、今日の俺はまさかの5連勝、もう世界は薔薇色だー!!」
ガハハハハ、何だか切ない気持ちもあるが、超嬉しい!!
「・・・ったく、よく男子はあんなバカげた事やってられるよな・・・」
俺の隣には楓。
今日はたまたま部活がないらしく、何故だか俺のあとをついてきた。
「なぬ、バカげただと・・・どうやら貴様も、あの虚無感を味わいたいらしいな!!」
男子なら誰でもやるよね、波動拳大会?
「はぁ!?」
楓はあきれ顔。
「フハハハハ、このハードボイルドマグナムこと木山春吉の餌食となるがよいっ!!」
いくぜ、我が最強の必殺技、かめはめ・・・
「・・・うざいからシバく」
「・・・え!?」
楓のドス低い声はなんか・・・怖かった。
ってか、一瞬で現実に戻された・・・。
「な、ちょっと待て、これはかなり理不尽じゃ・・・」
ヤバい、このままだと・・・殺れる俺?
「腹出せ」
は!?
意味不明な命令。
「な、何で?」
「骨髄を抜く」
な、なんですとぉ〜!!!!
こ、骨髄ッ!?
「ちょっ、まっ、だ、誰かたす・・・」
「シーユー春吉」
そう言うと突然、俺の腹をわしづかみしてきた楓!!
ヤバイ、このままでは確実に殺られる・・・。 ってか握力パネェ!!
「まて楓、これマジで痛いッ!!」
「いいから骨髄を出せ」
「だから何故骨髄にこだわるんですか!?」
あぁ・・・マジでヤバいよこれ・・・。
あ、走馬灯が見えた・・・お花畑や綺麗な川まで!!
い、いかん、頑張って自我を保て、俺。
・・・けどやっぱ限界近し。
もう俺が半ば命を諦めていたその時!!
「・・・あ、そうだ!!」
「あ!?」
俺は咄嗟に声を上げ、楓の殺人行動に隙を作る。
俺はいい作戦を思いついた。
「わ、分かった。もし、お前が俺の事許してくれんのなら、後でケーキおごってやる!」
俺はちらっと向かい側のケーキショップを確認し、ここからの起死回生に繋げる。
ってか、あんな所にケーキ屋あったんだ。
「ケーキ・・・」
お!? 食いついたか?
俺を掴む腕から多少、力が抜けたのが分かる。
よし、もう一押し!!
「た、たまにはいいだろ? お前、柔道ばっかであんまり甘いもん食ってないだろうし・・・な?」
楓は自宅が柔道教室。
親から強制的に柔道を習わされ、さらに今部活は柔道部所属。
「甘いもの・・・」
こんな狂暴・・・いや凶暴な楓も一応は女の子。
甘いものは大好きなハズ!!
・・・多分。
「ケーキか・・・・・よし、乗った!!」
そしてパッと手を離す楓さん。
あ〜死ぬかと思った。
俺、生きてる!!
「よし、じゃあ早く行こうぜ春吉!!」
超笑顔の楓。
俺は腹を摩りながらつくつぐ思う。
・・・コイツ、本当に女か!?
スイーツショップ「ベリーテイスト」
ここは主に苺やブルーベリーなどといったベリー系のスイーツを扱う店。
店の名前の「ベリー」はベリー系のベリーと、凄いと言う意味のベリーが掛けてあると言う事は、もはやどうでもいい。
店は2階建て。
1階でケーキ等を購入し、2階のテラスで購入したものを食べる。
まぁ、そんな感じだ。
「んじゃ、いっただっきま〜す!!」
そう言うと楓はもの凄い勢いでケーキにかぶりつく。
すげぇ・・・
何か・・・見てるこっちが清々しくなる食べっぷりだ。
「しかし・・・」
結構高かったな・・・
今、奴のトレーにあんのは苺ショートケーキに三種類のベリーが乗ったタルト、ブルーベリーパイ、ラズベリーとストロベリーのクレープ、苺ヨーグルト、ベリーミックスジュース。
正直、まだ今月は半月ぐらいあるのに・・・もうピンチだったりする。
あ、つーか今、両親家にいないんだ!!
参ったなぁ・・・
「ん?どうした春吉?顔がバカになってんぞ?」
「うるせぇ! 黙って食ってろ」
「ま、元からバカ顔か!!」
「・・・・・」
・・・顔に生クリームくっついてるアンタには言われたくない。
に、しても良く食うなコイツ・・・
もうトレーのケーキが半分を切った。
「お前・・・もうちょっと上品に食ったらどうだ?」
ケーキを片手で掴み、そのままパクリ。
せめてスプーン使え。
「いいんだよ、別に味は変わんねぇんだし」
「・・・普通の女の子はそんな事は言わねぇぞ」
本当に、マジでコイツは女なのか?
「うるせぇな、イチイチいちいち」
「・・・すんません」
楓の目が怖かったので追及止め。
本当に恐ろしいヤツだ。
・・・その時、口にケーキを放り込んでいた楓の手がとまった。
そして何故かこっちを凝視。
「・・・ん? どしたの?」
「・・・まぁ、いいか」
そう言うと楓は俺にラズベリーとストロベリーのクレープを手渡してきた・・・は!?
「今日おごってくれたお礼だ。遠慮せずに食え」
・・・え?
「お礼? お礼ったって、コレ俺の金で買ったや・・・」
「細かい事は気にするな! さ、食え!!」
「・・・細かい事か?」
まぁ、とりあえずクレープを一口。
うん、甘酸っぱくてうまい。
それから二人でしばらく食事タイムを楽しみ・・・・・
「あ〜腹いっぱい。今日はあんがとな!!」
超満腹顔の楓。
なんだか楓の笑顔見たの、久しぶりだな・・・。
「いや、別に・・・つーかお前、口にクリーム」
「えっ!?」
最後の最後で、珍しい楓のビックリ顔が見られたから、まぁ今日は良しとしますか。