第19話 牛のプライド
「・・・・・」
土曜日の朝、俺、木山春吉が起床し、リビングに行くと置き手紙が。
“また、お父さんお母さんは夜逃げしてきます。渡邉さんとお幸せにぃ!!
父母より”
ふ、ふ・・・ふざ・・・ふざけ・・・
「ふざけるなぁ!!」
どうしてウチの親はこうなんだ?
もっとちゃんとした一般家庭に生まれたかった、と言うのが、ここの所の感想かな。
「ざけんじゃねーよ、マジでブチ切れるぞ」
もう十分ブチ切れているが。
・・・イライラしてても仕方ない。
ここは一旦、落ち着こう。
「とりあえず牛乳・・・・・」
冷蔵庫オープン・・・って、あれ?
「牛乳が・・・つーか何もないッ!?」
すっからかんの冷蔵庫は、とても虚しかった。
「まさか・・・あのバカ両親が・・・」
昨日までは冷蔵庫内に牛乳はあった。
だとしたら・・・
「・・・・・」
両親に飲まれた。
「・・・もう嫌」
・・・仕方ない、のども渇いたし、近くのコンビニまで朝食調達に行くか。
財布と携帯持って、いざ出陣!!
「ったく、今度両親に会ったら牛乳ぶっかけてやる!!」
などと言う愚痴をこぼしながら、俺は近所のコンビニへ。
ちなみに、コンビニは自宅から徒歩三分。
これはこれで結構便利だったりする。
「・・・ついでに、から〇げクンでも買ってくかな」
はい、何のコンビニか分かった人は挙手。
「にしても、渡邉さんとかの件、あれ本当なのかなぁ〜?」
などと言う疑問を考えているウチに、コンビニに到着。
ウィーン!!
「いらっしゃいませ」
俺は店員の業務ワードを聞きながら店内へ。
「えーっと、牛乳、牛乳っと・・・」
とりあえずは飲料水コーナーへ直行。
新作の菓子やパンなどに興味を引かれつつ、俺が牛乳の賞味期限を確認していると・・・
「あ!!春吉!!」
「ん?」
Myネームを呼ぶ声が!!
俺は後ろへ振り返る。
「やっぱり春吉だ!」
そこには、Tシャツに下ジャージ姿の楓が!!
「おお、楓か」
「そうだ、楓だ!!」
ニコニコ顔の楓・・・つーか、あれ?
「つーか、何で楓がこっちのコンビニにいるんだ!?」
楓ん家は確か、駅を挟んだ南側にあるはず。
ウチやこのコンビニは、駅を挟んだ北側。
「ん?ああ、朝のロードワークでな」
「ロードワーク!?」
「うん、ウチの道場の決まりで、学校がない日の朝は駅の北側まで走るんだ!!」
「ああ、なる程・・・」
確か楓ん家は道場だったっけな。
沢那柔道場、それが楓の家。
「・・・春吉、お前牛乳なんか買うのか?」
「ん?ああ・・・」
いつの間にか、楓の目線は俺の手元の牛乳へ。
「うわ〜・・・」
「な、何だよ」
「だ、だって牛乳って・・・」
楓は心底嫌そうな顔。
「牛乳って、牛の体内で形成された、白い液体だよ?」
「だ、だから何だ」
「・・・気持ち悪い」
あ、そう言えば楓、牛乳嫌いだったっけ。
「バカ言え、牛乳ってのはな、牛さんが一生懸命、汗水流して我ら人間に与えてくれる、栄養満点の有り難〜いお水なんだぞ!」
「・・・水と言うか、体液じゃんソレ」
「なっ・・・」
こ、この子は何て事を・・・
「お前、だからチビっ子なんだよ」
牛さんのプライドのため、木山春吉反論開始!!
「な、チビっ子・・・」
「そうだ。だからチビっ子なんだ。カルシウムナメるな!!」
元素記号Caだぞ、ナメるなボケェ!!
「ち、チビだっていいもん、心さえでかければ、それでいいんだ!!」
・・・何言ってんだ、コイツ・・・。
「はは〜ん、本当に心だけでいいのか?」
俺はからかうつもりで、Aカップ(自称Bカップ)の楓の胸部に目をやる。
「なっ・・・」
突然の事に、どんどん赤くなっていく楓。
・・・もう俺の頭の中には、昨日の電車内事件の事はない。
「牛乳飲め、牛乳」
俺は棚の手前の牛乳を掴み、今度はパンコーナーへ。
その時だった。
ブオォォォン!!
「ぐっ!!」
背中に走る強烈な痛み!!
な、なんだ・・・
「・・・好きでAやってる訳じぁねぇ」
ボソッと、どす黒い声でそう聞こえたが、俺は聞こえない振りをし、そのまま気を失った。
ミニコーナー、キャラクタープロフィール紹介!
キャラクターNo.4
沢那 楓
(サワナ カエデ)
女性、現在16歳、葉城高校二年三組在籍。
身長:155cm
体重:44kg
誕生日:12月16日
血液型:B型
好きな物:柔道、甘いお菓子、特撮ヒーロー物
嫌いな物:牛乳、野菜、勉強、幽霊
趣味:ロードワーク、特撮ヒーロー物観賞
特技:早食い、背負い投げ
その他:実家が柔道場&学校でも柔道部所属、生クリームは好きだが牛乳が苦手、実は身長や胸の大きさがコンプレックス