第15話 夏キター!!
「・・・ったく、だりぃな・・・」
全く・・・誰だ、球技大会なんて考えた野郎は・・・
「あ!!なっくん、またサボってんの?ダメだよ、ちゃんと練習しなくちゃ!!」
「るせぇ・・・」
はぁ・・・あ?なんだテメェら?
は?春吉?だれだソイツは?
俺の名前は吉崎夏哉、16、高2。
葉城高二年一組、部活は男バス。
「なっくん、ちゃんと練習しよ〜よ!!」
現在二年一組教室。
時刻は午後6時。
「うるせぇ、黙れ」
「はへ〜ん!!そんなんじゃ香音は黙りませ〜ん!!」
うぜぇ・・・
今、俺の目の前であっかんべーをしているコイツは水岡香音、俺と同じ二年一組。
「ねぇ、なっくん!!早く体育館行って練習しよ!?」
「・・・嫌だ」
球技大会・・・何だか知らんが、6月にあるらしい行事。
まぁ、俺は男バス所属だから、参加競技は強制的にバスケ。
「嫌だじゃないの!!なっくんもちゃんと練習しなくちゃ!!」
「・・・そんなにやりたきゃ、一人でやってこいよ、カオ」
カオ・・・香音のあだ名。かおん=かお=顔。
「か、顔じゃない!!かおんだよ!!」
「はいはい、じゃあ俺はこれで・・・」
「だ〜め!!」
ガシッと、俺の制服のすそを掴んだ香音。
「早くバスケの練習、やろ!!」
はぁ・・・コイツのクソ真面目さには腹がたつ。
「・・・俺は帰る」
「だめッ!!なっくんはバスケの練習をやるの!!」
「一人でやれ、カオ」
「だから顔じゃなぁ〜い!!」
ぽかぽかと叩いてくる香音。
・・・痛くねぇし。
「・・・わっ〜たよ、練習すればいいんだろ」
仕方ない、面倒だがやるか、練習。
「本当?」
途端にパーッと明るくなる香音の表情。
とっても分かりやすい奴だ。
「そのかわり、明日の昼、パンおごれよ」
「え〜!?」
今度はかなり嫌そうな表情。
マジで分かりやすい。
「はい決まり。おし、体育館行くぞ」
「え!?あ、ちょっと待ってよなっくん〜!!」
明日、昼はコロッケパンにしよう。
俺と香音は、昔からの付き合いだ。
まだ幼稚園の頃、かけっこ中すっ転び、膝を擦りむいてワンワン泣いていた俺にハンカチを差し出し、保健室まで連れて行ってくれたのが香音。
『うえぇ〜ん、痛いよぉ〜!!』
『ねぇ、大丈夫?』
『うえ、ひ、ひっく・・・』
『どうしたの?転んだの?』
『う、うえぇ〜ん!』
『・・・はい、これでお膝を押さえて』
『う、うぅ・・・ひっく、ひっく』
『大丈夫?立てる?・・・じゃあ、一緒に“ほけんしつ”に行こう!!』
『う、うううぅん』
・・・それからというもの、まだ当時イジメられっ子だった俺を、いつも香音は守ってくれたな。
砂場の砂を投げられた時も、おもちゃのブロックを投げられたときも、水道で思いっ切り水掛けられた時も・・・
「あれま!!先客がいるよ!!」
あ?香音が体育館の中を覗きながら、何か呟いてらぁ・・・
「なっくん、他に誰かいるみたい」
「・・・誰か?」
「うん・・・シューズの色が緑だから、同じ二年生だ」
「二年?」
その時、体育館の中から声が聞こえた。
ダムっダムっ!!
「はい、そこでダーンク!!」
「む、無理ぃ!!」
・・・男と女の声だ。
「おい美羽、そんなんじゃ“キセキの世代”には勝てないぞ!!」
「春・・・あんた、どんだけジャ〇プネタ引きずるつもり!?」
「うるさい、俺は努力と友情と勝利で出来ている男だ!!」
「だからソレ、ジャ〇プ知らない人は分からないでしょ!?」
・・・随分と賑やかそうだな。
「ねぇ、なっくん」
「なんだ?」
「ワ〇ピースって言ったらやっぱり、アラバスタ篇だよね!!」
「お前もジャ〇プネタか!?」
ケッ・・・ワ〇ピースはやっぱり“偉大なる海路”に入る前までのストーリーが1番だろうが。
・・・え?違う?
「・・・やっぱり俺、帰る」
他人が使ってるならしょうがない。
「え〜!!少し待てばどくよアイツら!!」
「・・・ったく、じゃあ明日やるから、それでいいだろ」
もう今日は帰って寝たい。
「え〜〜〜・・・分かった。じゃあ明日、絶対だからね」
頬っぺたを膨らませてプイッと横を向く香音。
何故そこまで、練習にこだわるのかが分からん。
「・・・帰り、チャリ、後ろ乗ってくか?」
俺はポケットに手を突っ込み、チャリの鍵を引っ張り出す。
「うん!!」
・・・コイツの笑顔はいつも眩しい。
俺には・・・とてももったいない。
どうでもいい後話
「・・・ねぇ美羽」
「何?春?」
「今回、俺、物語を語ってないんだけど・・・」
「・・・うん、そうだね」
「もしかして、主役交代とか・・・無いよね?」
「さ、さぁ・・・」
「ど、どうしよう・・・このままでは・・・」
「うぅ・・・ま、まぁ頑張りな、春!!」
「うわ〜ん、どうしよう!!」
「出番ないあたしらよりかは・・・まだ、マシじゃん・・・」
By楓&小夜&権三朗
次回から“後書き”を使ってのミニコーナー「キャラプロフィール紹介」やります!!
お楽しみに!!