第94話 六角へ
「っつー訳で、悪いけとこがねの事、よろしくな」
学校帰り。
まさかの合宿は明日出発!!
突然すぎるよね。
ひどいよね。
で、
「任せとけ!! しっかり散歩しとくから!!」
現在沢那柔道場。
合宿の間、楓がこがねを預かってくれるのだ!!
「餌は朝昼晩、散歩は朝夕方、1日1回は遊んであげる。OK?」
「OK!! 散歩は朝、メシは昼、そして遊ぶ!!」
「…………」
こがね……頑張って生きろよ!!
「ワンッ!?」
こがね……生きろッ!!
「春吉、お土産よろしくな!!」
楓はにっこり笑顔。
こがねにとっては、恐怖の笑みなんだろうが……。
「お土産って……お前……」
「いいじゃん! 六角って言ったら海じゃん!! 蟹じゃん!!」
コイツ……
「蟹って……俺が逆に食いたいわッ!!」
「じゃあ海老!! ホタテ!! イカ!! イワナ!!」
「食い意地すげぇ!!」
そしてイワナは海じゃなくて川!!
「とりあえず、美味しいもんよろしくな!!」
「……俺は釣りに行くんじゃねーぞ?」
ったく……
……に、しても。
「え? 釣りじゃねぇの?」
「バスケだッ!!」
コイツ、最近大人しくなったよな……
昔だったら「いいからイワナ釣ってこい!!」って、グーが飛んできたのに。
理不尽大魔人が、最近やけに理不尽でなくなった。
それも、あの音楽ライブの日から……
「ま、とりあえずお土産よろしく!」
「まだ言うかッ!?」
とりあえず、こがねの無事を祈る。
「ワンッ!!」
生きろッ……
で、その日の夕方。
俺は合宿用の寝巻きやかばん、洗面用具の買い出しのため、近日のホームセンターへ。
「えーっと、歯ブラシにフェイスタオル、洗顔クリーム……」
はぁ〜。
まさかの出費だな、これ。
部活は宿泊費と交通費しか出してくんねぇし。
「はぁ〜……」
バイト先に連絡入れなくちゃな……
その時……
「……先輩?」
「ん?」
今、どこからか聞き慣れつつある声が……
俺は辺りをキョロキョロ。
「……あれ?」
どこだ?
「……後ろです」
「え?」
声はガチで背後から聞こえます。
俺は思い切り振り返った。
で、
「うおっ!?」
「……そんな驚きますか?」
やっぱりと言うか、麗がいた。
後ろに。
……ビックリした。
「……先輩?」
「あーいや、決して驚いた訳では……」
波紫先輩といい、麗といい……
そんなに俺の背後はとりやすいか?
「めちゃくちゃ驚いてたじゃないですか」
「だから……その……はい、驚きました」
「……開き直り」
いいじゃないか、開き直りしても。
「……そういや、泡岸は何か買いにきたの?」
「え? あ、まぁ……」
何故か曖昧に答える麗。
「ふぅ〜ん……で、何買うの?」
追及してみた。
「いや……そんな言う程の物ではないですよ」
しらっと答える麗。
逆に気になった。
「じゃあ言ってよ」
「いや、だから……」
おや?
麗が少し赤くなりました。
「だから?」
「だから……その……」
ちょっと困り気味の麗は、何か可愛かった。
「……まぁいいや。じゃあ俺、買い物に戻るわ!」
ちょっと可哀想になってきたので、仕方なく解放。
……何か俺、悪人っぽかったかい?
「……はい」
少し元気の無くなった麗。
もしかして、悪い事しちゃったか?
今度会ったら、謝っておくか。
そして翌日。
「ええか? お前ら、遊びに行くんとちゃいますよ? 合宿や!」
午前6時。
くそ早い。
「今回は一週間、みっちり鍛えるで」
葉城高校の駐車場。
そこには、一台の大型バス。
「特に、最終日には六角との試合もある。絶対負けるなや!」
そのバスの前には、葉城高校バスケ部の面々が。
そして、波紫先輩の言葉。
出発の儀式的なあれ。
みんな、真面目な表情で聞いてます。
「じゃあ、ちょいと早いけど、民泊の一覧表配るわ」
……民泊?
え?
「ほい、キミらの」
そう言って、波紫先輩が俺ら(他秋冬)に1枚のプリントを差し出した。
ってか、合宿は旅館じゃなくて、民泊なの!?
ウソだ……
「4人で1つの家にお泊まりや。帰宅日を除いた6日間、迷惑掛けずにせいや」
プリントには、誰がどの家に泊まるかが書いてある。
「民泊か……まさか庶民の家に泊まる事になるとは……」
ハゲメガネうるさい
ってか……
「1班、木山・吉崎・瀬良・梨本……」
波紫先輩の悪意を感じた。
ちなみに冬希は隣でうとうと。
まだ朝6時、太陽は低い位置。
そんなヤツは放っといて、俺は再びプリント熟読。
「で、泊まる家は……は、濱垣家……」
お、おやおや〜?
何か、聞いた事ある名字……
「……そういや」
確か以前、どこぞのダーク生徒会長が言ってたな。
『私、おばあちゃん家六角なんだ〜』
「…………」
バスケどころではなくなった。
変な汗が止まらん。
「まさか……」
俺は、どこぞのダーク生徒会長が、夏休み前に言ってた事を思い出していた。
『私、8月は六角のおばあちゃん家行く事になっちゃってさ。春、何かお土産欲しい?』
「……最悪だ」
最悪の事態が、俺の頭の中をよぎった。
後書きトーク!!
春吉
「とりあえず、今話が今年(2010年)最後の投稿になりますな〜」
小夜
「……もう後書きのコーナー、何でもアリ……」
春吉
「思えば、今年の3月終わりに始まった今作、よくここまで続いたな〜」
小夜
「……春吉、頑張ってたもんね」
春吉
「まぁ、今年最後って事で、作者に変わって俺が1つお礼を!!」
小夜
「感謝」
春吉
「今年1年、本当にありがとうございました!! 休載ばっかの作品ですが、ここまでこれたのも皆さんのおかげです!!」
小夜
「……来年は今年以上に、もっと頑張ります」
春吉
「ですので、来年もまた、どうぞよろしくお願いいたします!!」
小夜
「……春吉が真面目キャラになった」
春吉
「次回95話“合宿開始”多分1月初めには更新出来るかな?」
小夜
「私……合宿篇、出番あるのかな……」
春吉
「大丈夫。無いのは権三朗の方だから」
権三朗
「…………」
春吉
「え? 何、お前いたの!?」
小夜
「……それでは皆さん、よいお年を」