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三人の姫と一人の手下の物語  作者: 五円玉
日常篇・春
1/116

第1話 三人の姫様

こんにちは。

 

最初に言っておきますが、この小説は不定期更新に

なると思います。

 

そこのところ、よろしくお願いします。






2016.12.13追記。


三姫全話リニューアル企画始動。


2016.12.13現在、この1話のみリニューアルで加筆してる関係で、2話以降文の書き方、キャラクター性等今話とは色々違う点が多々出てくると思います。


年明け以降、順次リニューアル予定ですので、色々気になる方は年明けまでお待ち下さい。

「お父さんお母さんは、ちょっと近場まで夜逃げしてきます。一応、富士の樹海辺りまで行こうかなと。だから春吉、お父さんお母さんを探さないで下さい。(^人^)」


ある朝、俺が起きたらこの手紙が机の上に置いてありました。


「……は?」


さっぱり意味分からん。


「夜逃げ?」


俺は頭をぽりぽり。


「……マジで?」










 

俺の名前は木山春吉きやまはるよし。16歳、高2。

 

今、俺は両親が置いて行った置き手紙(どちらかというと遺書)とにらめっこ中。


「……」


開始早々、変な展開。

こんな始まり方があって良いのか?


でも、まぁ一旦、まずは軽く整理しようか。


木山家の現状。まずはここから軽く、サクっと整理しよう。


まずにウチはつい最近、不況のあおりで親父が会社をリストラされたんだ…初っ端から悲しい話だけど。


ちなみに親父、元リーマン。


幾分不況のあおり言えど、リストラされてる訳であって、つまりは会社内に於ける能力の低さが垣間見えてしまう悲しみ。


僅かながらの退職金も、家庭あれば一瞬の塵。


瞬く間に財政難に苦しみだした我が家。


それからと言うものの、俺は学校帰りにバイト、母は昼間はパートで夜は内職、親父は毎日酒を飲んでは「社長のバカヤロー!!」の連呼の毎日。


親父の再就職も難にあり。

就活氷河期は春を迎えつつあるとTVのニュースでは言っていたが、果たしてその実態たるや。


「まぁ…夜逃げしたくはなるよな」


だからって息子置いて行くなや、って話だが。


俺はその両親からの遺書もとい書き置きの手紙を読みながら、朝食を取る。

メニューはトーストのみ。

口内に響く、サクっと言う響き。


…寂しい。


と言うか確か昨日、両親はホームセンターで頑丈なロープを買ってきていたな…

 

何に使うのかは分からんが…

 

「う〜ん…これは警察に連絡するべきか、まだ様子をみるべきか…」


俺はトーストをまた一口。


と言うか既に息子置いて行方不明になった現状からレッツ テル ポリスメンなんだろうけど。


どうしようか…いや、今はまだ様子をみるべきかな?

 

富士の樹海ったって、別にアレとは限らない。


アレとは限らん、うん。


…正直両親無くとも金さえあれば生活は出来る。


取り敢えず、幾日か待ってみて、一切の音沙汰が無ければポリスメンかな、と意味不明な余裕を持ってみる俺。


生憎な話、両親とはあんまり…仲良くは…って家庭環境なので。

正直、死を願うまではないが、別に居なくなったって…ってちょっとドライかな?


とりあえず今日は学校だったっけ。


俺は急いでトーストを食べ終え、制服に着替える。


生活費はバイトで何とかなるし…まぁ、いいか。

…取り敢えずシフト増やさないと。


ここで俺は時計を確認…ってうわッ!! もう遅刻ギリギリ…


と、とにかく急がねばっ!!










「間もなく、一番線から電車が発車します」


駅の構内。

今や遅しと出発を待つ電車を目前に、急いで改札をくぐる。


うひゃ〜!!ヤバいよヤバいよ!

と、ガラにも無く脳内咆哮をあげてみたり。


いやまあガラなのかな?


とにもかくにも今、俺は駅のホームを全力疾走中!


くそっ…急いだから寝癖直し損ねた…

けど、今は電車の方が優先。


「間に合えっ!!」


全力疾走!!

太ももよ、俺にパワーを…躍動を与え給え!


で、結果…


「ま、間に合ったぁ〜…げほっげほっ」


ギリギリセーフ。


俺を乗せた電車はゆっくりと走り出す。

いや本当、マジ危なかった…


「アカン…はぁ、酸欠だ…」


とりあえず空いている吊り革を発見。

しがみつくように吊り革キャッチin俺。


その時、


「おっ? もしかして春吉か!?」

 

「はい!?」

 

突然、俺の目の前の席から声が。

思わず語尾が疑問風に。しかもちょっと声が甲高くなってしまった。


「ういっす!!」

 

「なんだ…楓か…」

 

そこにいたのは、ショートカットの女の子。

コイツは沢那楓さわなかえで

俺と同じ葉城高等学校の二年生で、+同じクラス。

一応、幼稚園の時からの腐れ縁。


「なんだとはなんだ!! 何か不満か!?」


朝っぱらからちょいツン状態の楓。


「いや…つーか声、デカイんだけど」


超車内迷惑。

周りの人、こっち見てるし。


「あっ……ったく、春吉のせいだ!!」


ちょっと大人しくなった。


「いまさら小声で言われてもなぁ…」


はぁ…と溜め息混じりにご説明すると、

ぶっちゃけ楓は男勝りな性格。


言葉使いは男みたい、超暴力的(学校では柔道部所属)、おまけにデリカシーがない。


「う、うるさい!! もう黙ってろっ!!」


あー、赤くなった。

ってか、黙ってろって、最初突っかかって来たのそっちじゃ…って言葉にしたら腹パン待ったなしなのでお口にはチャックをしておく。


…コイツももっと大人しければ、そこそこ可愛いのに、いやいやもったいない。


「……」


「……」


長〜い沈黙。

別に話す事がない。


「……あ!」


「ん?」


その時、楓が何か発見したらしい。


「どうした?」


あんまり興味は無かったが、暇なので聞いてみる。


「なぁ、あれ、小夜じゃねぇか?」


「小夜?」


楓は俺の後ろ側を指差す。

で、俺は体はそのまま、首だけ後ろに勢いよくくるっと半回転…と、


ゴキッ!!


「グフッ!!」


首とは何と儚く弱きか…

勢いつけ過ぎた、何か首から嫌な音が…

春吉HPが30減った。


…痛い。


「……あれ?」


おっ、向こうがこっちに気付いた。

そんな事より…く、首が…痛い…

 

「……楓に春吉。何、してるの?」

 

今しがた首を庇護する俺の元へと寄ってきたコイツは荏咲小夜えさきさよ


やっぱり小夜も俺らと同じ、葉城高等学校二年生。同じクラス。

小夜は楓と性格真逆。

超無口&コミュニケーションが苦手。


ぶっちゃけ、いつも何考えてんのか分からないポーカーフェイスだが、人一倍優しい子でもある。


どっかの誰かさんとは大違いで。


「……春吉、首赤いよ? 大丈夫?」


俺の真っ赤に腫れた首を見て、心配してくれたらしい。


「まぁ…何とか」


優しみが身に染みるぅ…

お涙。お涙が。


「ふん、そんなの自業自得だろバカ!!」


と、何故か挑発的な楓。


「なんだと!?」


このガキんちょめ。人が30ものダメージ喰らったって言うのに…


「何…やるの?」


ポキッ、パキッと楓の関節が鳴った…

なぜこうなる?

なぜこうなった?


この展開一体誰が予測した?


「ちょっ、ちょっと待とう…」


「何が?」


うわっマジかっ…


楓のスキル、短気が発動しやがった…これはマジヤバスってヤツです。


「待て待て、おま、何を…ッ!?」


流石に焦る。


ヤバいヤバいぞ、楓の暴力の強さはハンパねぇからな…

ヤバいんだぜ…


「春吉、とりあえず…」


バギボギッと鳴る、楓の関節。

化け物か?


と言うかそんな女の子がすぐ手ぇ出るとか本当良くないと思いますし第一異性受け悪いですよ…って言葉にしたら腹パン確定なのでお口にはチャックをしておく。


「待て、楓。ここは暴力などと言った原始的な方法ではなく、会話と言う人間にしかない、文明的かつ超平和的かつ高度で尊厳のある和解方法で…」


そう、ここ、電車の車内だし。

暴れてはいけない。


「…腕出せ」


「な、何故か聞いても?」


「そんなの当たり前だろ…?」


楓の目付きが怖い。


「骨、折るんだよ」


「え……ボーンを、折る?」


コイツ…目がマジだ。


「はよ出せ」


「あ、いや何か….あの、すんませんでした」


とりあえず謝ろう。

女性を怒らせたら。

理由はともかく男は謝る、謝るのだ。


いや本当今回の楓のプッツンの理由にはいささか謎が残るが、そんな怒りの謎の解明に勤しむ暇があったら1回でも多くゴメンなさいを言うに徹した方がいい。


数少ない、親父から学んだ教訓だ。


「ああ分かった。だから早く腕出せ」


何故だろう? 今は春なのに汗がとまらない。


「楓、一旦落ち着こ…ね?」


「いいからはよ腕出せや!!」


シカト…


「ごめんなさい」


とりあえず、もう謝るしかなかった。

俺、悪いことした覚えないのに。


お辞儀の角度は95度で。


その時、


グッ!!っと、


楓の小さな腕が、俺の腕を掴みに掛かって来やがった。


うわっ、ほどけなっ…

と言うかこの細腕のどっからこんなチカラが…っ


「ちょっ、やめっ、楓落ち着…」


「覚悟っ!!」


昔見た映画で、人間には骨がうん百本もあるのよ、だから1本くらい何よっ! みたいはセリフと共にどっかしらを骨折した人が痛み苦しみながら地面を這いつくばってる、ってのがあったな。


嫌だな、アレになるの嫌だな。


1本くらい何よって言うけど、痛いよね。多分。


毎日飲んでる牛乳のカルシウムを過信して骨が硬く太く折れず、的展開に期待を込めて、

半ば謝罪もそこそこに諦めの選択肢を見出していた俺。


その時、そんな惨めな俺に救いの手が。


パシッ!!


今、俺は見た。

この眼で。


天使の手が、悪魔の手を掴んだ!!


「……楓、だめ」




肩までのセミロングのパッツンな黒髪、細身かつ平均的な身長、そして何考えてんのか分からないけど綺麗な瞳をした天使…小夜様ッ!!


「…春吉がかわいそう」


かわいそう。


その言葉に胸が色んな意味でじんわり。

かわいそう、か…


一方の天使の腕に力が入る。


ちなみに、小夜は運動も勉強も出来る子。

部活は弓道部所属。


「だ、だってさ…」


小夜のおかげか、楓の腕から力が抜けていく。


た、助かった…


「……春吉は何も悪い事してない」


小夜、真顔で楓に対抗。 やべ…何か俺泣きそう。

いやまあ実際悪い事は何もしていないのだけど。


無実。勝訴。こんな感じなのかな?


「…ッチ、命拾いしたな春吉」


しばらく俺を睨んでた楓。

しかし数秒後、とうとうプイッとそっぽを向いてしまった。


「…大丈夫?」


赤くなったマイ腕をさすっていたら、女神様がこっちを向いて微笑みを投げて下さっていた。


な、なんて優しい微笑み…ま、まぶしッ!!


「た、助かりました女神様っ!!」


小夜真理教。まさにそれ。

女神たる小夜様、悪を撃退す。


よし、この際小夜を拝んどこ。


「ん?」


小首を傾げる小夜。 

こういうさりげない仕草。この子はモテる。絶対モテる。しかも女神だし。


「…なんだよ」


楓が何かブツブツ言ってるが…今は無視。


「ありがたや、ありがたやぁ〜」


今は…拝むべし。











 〇〇県立葉城高等学校


俺らが通う、まぁ普通の公立学校だ。

結構なバカ野郎共と顔面偏差値が低い女達が数多く在籍しているのが特徴かな?


と、まぁ彼女いない歴イコールな俺が言ったら大層失礼かつ、顔面偏差値が低い女達ってある意味絶対に言ってはいけない言葉であって。


しかしまあバカが集う学校=荒れてる、イカツイ奴いっぱい、中には中々なガタイの姉御達もいっぱい。


顔面偏差値ってよりかは女子力偏差値底辺クラスの女達がわんさかいる学校なのだ(もっと失礼)


…悲しい特徴って事で、


そんなバカブサイク高校の中でも、楓と小夜はまさに別格の可愛いらしさ(クラスの男子共談)。


小顔で容姿が綺麗、楓はちょい色黒、小夜は色白の綺麗な肌。

実際、可愛いとは思う。楓も小夜も、可愛い。


しかもあろうことか、小夜に至っては秀才ときた。


学校の野郎からはいつもちやほやされまくってるのだ(特に小夜)。


逆ハーいや何でもない。


で、この二人とは別にもう一人、可愛い子(クラスの男子共曰く)がいるんです。


…それが、


「ハル、悪いけどその書類取って!!」


「あぁ、これか…あいよ」


俺は彼女に指定された書類を手渡す。

ちなみに現在、葉城高校生徒会室内。


「ありがと!」


そう言って書類を笑顔で受け取ると、彼女は次々に書類にはんこを押していく。


何か、あまりにもリズミカルに作業してるから…何かのはんこ押し機会でも見てるみたいだ。


彼女の名前は濱垣美羽はまがきみはね


なんと彼女はまだ二年生ながら、我が校の生徒会長。


別に三年に会長が務まる秀才がいない、って訳ではないらしいが。


性格はしっかり者って感じ。

真面目生真面目。管理型社会によくいるタイプ。


勉強もしっかり出来て、容姿も端麗で、しかも超大和撫子風な出で立ち、オーラを纏い…つまり和風美人ってヤツだ。正直可愛い。


ただ、超運動音痴なのはここだけの話。

そして極度の上がり症ってのも、ここだけの話。


そう、上がり症なのに生徒会長やってるのだ、この人。


「ねぇハル、もうすぐSHR始まるけど…そろそろ戻ろっか?」


「え? もうそんな時間か?」


俺は携帯電話を確認。

うん、あと5分ではじまるな。


「よし、じゃあ仕事引き上げて。ハル、教室行こう!!」


「うっし」


俺は時たまに、生徒会の手伝いをする時がある。

別にやりたくて、ではなく。


悲しい理由。

それは、生徒会役員が不真面目過ぎるのだ。美羽以外。


副会長は現在骨折で入院中。

書記はサボり癖あり。

会計は朝は部活。

庶務は元々仕事しない人。


と、言う事で、俺が仕方なく手伝っているのだ。


本当なら書記&庶務辺りを引っ叩いて連れてくるのが妥当であろうが、しかし相手は上級生。


長いものには巻かれる、年功序列、無防な冒険はしない、逆らうは亡国の兆し。


言い訳ではなくて、座右の銘。








…楓、小夜、美羽と俺は同じ中学出身。


さらに言うなら、三人共幼稚園から一緒。


つまり、そこそこ仲は良いのだ。


多分。


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