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第4話

   

 仕入れ業者の男は翌朝、気絶した状態で発見されて、パイナップル泥棒として捕まったという。

 現場には、パイナップルを食べ散らかした跡が残されていたからね。いくら男が「俺じゃない! パイナップルの共食いだ!」と主張しても、誰にも信じてもらえなかったのさ。

 でも信じないのは大人だけで、純真無垢な子供の中には「そういう話もありえるかも」と思う者も出てくる。この話をおじさんから聞いた吉田くんも、その一人だった。

 特に、パイナップルの共食いという(くだり)を、とても合理的に感じたらしい。(ほか)のパイナップルを食べてその甘さを吸収するからこそ、甘さのチャンピオンみたいなパイナップルが出来上がるのだ……みたいな理屈だね。


 吉田くんから話を聞いた僕も、この解釈には「なるほど」と思ってしまった。

 だから「甘くて美味しいパイナップルは皆、共食いをして生き残った果物だ」と思い込んでね。八百屋やスーパーで店頭にパイナップルが並んでいると、ついつい想像してしまう。閉店後、誰もいなくなった店内で、こいつらはまた共食いを始めるのでないか、と。


 お母さんがパイナップルを買って帰ろうとしても、いつも強硬に反対した。「嫌だ、嫌だ」と泣き叫ぶほどだった。

 2つも3つもではなく、買うとしても1個だけなのだが……。それでも冷蔵庫に入れたら他の果物を、廊下のリンゴ箱に入れておいても一緒のリンゴを、パイナップルが食べてしまうのではないか。もしも現場を目撃したら「……ミタナァ?」と祟られるのではないか。

 そんな恐怖に襲われて……。結果、うちではパイナップルといえば缶詰限定になった。輪切りにされて缶詰に入れられたパイナップルならば、もう亡くなっているから、さすがに共食いも出来ないだろうと安心できたのさ。

   

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