2人の朝、日常として。
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朝の教室は、やはりだれもいない。
そりゃこんな早くに来る必要はないからな。
席に座り、いつも通りぼーっとする。
「やっぱり今日も早かったなぁ。紫宮くん」
突然横から話しかけられた。天音だ。
「早く来るのってなんか理由あるの?」
「特にないな。まあでもギリギリに来るよりはマシだろ」
「それはそうだねぇ。それに人少ない方が気楽〜」
「天音も早いな、昨日といい」
「まあ何となく?」
「そうかい」
「ねえねえ、今日は放課後に来る??」
「あー、勉強したいからすぐ帰るつもりだったが」
「え〜勉強ならあそこでもできるじゃんよー」
「いや…できても集中できないだろ」
「なんでさー、私も一緒に勉強するなら静かだし、人も来ないよ〜?」
お前がいるからだよ。
とは言えない。天音はとても可愛い女の子なのは間違いない。容姿も中身も。
そこそこ長めの茶髪はしっかり手入れされているのか、綺麗である。スタイルも良く、人あたりの良さを考えればまさに陽キャ、ギャルだ。
そんな人間が狭い空間に一緒にいる状況で勉強に集中できるかと言われたらできない。
別に襲ってしまいそうになるだとか、そういうのはないが、気になってしまうのは事実だ。
「家が1番集中できるんだよ」
嘘では無い。
「そっかぁ。それは仕方ないね。あ、じゃあさあ、今話そうよ!」
「今か?天音はいいのか?」
「私は大丈夫だよ」
「そうかい」
「ここに座ればいっか」
そう言って天音が座ったのは俺の後ろの席。
勇也の席である。
「紫宮くんって勉強できるの?」
「そこそこだな。トップレベルとはいえん」
「へぇー。私全然なんだよなぁ。教えてよ勉強」
「俺は教えるのは上手くない」
「やってみないとわかんないって。まあまだテストは先だし、別にいいけどね」
「今から継続して復習しとけばいい」
「それができてるならもうやってるってぇ」
確かにそれはそうかもしれない。でもここはそこそこの高校だから、それなりにはできる人間だと思うんだけどな。
「紫宮くんってさ、勉強できる子のほうが好きだったりする?」
「え?いきなりだな」
「いや〜気になるじゃん?恋バナよ恋バナ」
「あんまり得意な話題じゃないんだけどな。まあでもできないよりはできる人の方が好意的だな。頑張ってるけどなかなか結果が出ない人はいいけど、頑張りもせずに諦めてるやつはあんまりって感じではある」
「ふーん」
「なんだよ」
「なんでもないよ〜。紫宮くんは勉強するから帰るって言うくらいだし、頑張ってるんだろうなぁ」
「まあ頑張ってはいるかもな」
「いい子だね〜よしよし」
「なっっ」
突然頭を撫でられビックリしてしまった。
母性を出してくるな。ビビるだろ。
「驚いた顔は可愛いねぇ」
「からかうな」
「ごめんごめん」
反省してるようには見えないが、怒ることでもないな。
「紫宮くんって人とあんまり話してないから話しにくい人なのかと思ったけど、話してみたら結構喋れるんだね」
「そりゃ会話はできるが。てか何で俺が人とあんまり話さないって分かるんだよ」
「え、あー、雰囲気?ぽいなー、みたいな?」
「適当じゃねえか」
「でも当たってるでしょ?」
「当たってるかもな」
「ほら!私凄くなーい??あはは!」
朝から元気だなこの子。テンション高い。
そんな天音との雑談で気づかなかったが、教室にはチラホラと生徒が入ってきていた。
それに天音も気が付いたのか、天音は席を立った。
「じゃ、そろそろ私は行くね〜!またね〜!」
「お、おう」
天音と入れ違うように勇也が教室へ入ってきた。
「今の子奏の知り合いか?めっちゃ可愛かったけど。もしかして彼女かー?」
どうやら話しているところを見られていたらしい。
「違う、普通に知り合いだ」
「にしては仲良く見えたけどな」
「見えただけだ。天音は同じクラスだぞ。ほぼ来てないが」
「あー、あの席の。どうやって知り合ったんだよ」
「いろいろあって、話すぐらいの関係になっただけだ」
「ま、奏がそれでいいならいいけどよ」
「なんだよ」
「なんでも」
たまに勇也もよく分からないというか、意味深っぽそうに話す時があるんだよな。まあ俺みたいなやつにも突然絡むようなやつだ。分からんのも仕方ない。
この教室には一席だけ、だれも使っていない席がある。
正確に言えば、その席に座るはずの天音が来ていないだけなのだが。
俺の記憶にある限り、このクラスになってから天音があの席に座って授業を受けているところは見たことがない。
勉強はどうしているのか、成績は平気なのかと心配にもなるが、あの感じは訳ありなのだろう。わざわざ聞くことはしないが、やはり気になってしまう。
そういうことを考えてしまったからか、今日の授業は全然集中できずに終わってしまった。