自己紹介、よろしくね。
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「ねえねえ、君、昨日の子でしょ?」
朝から俺に話しかけてくるやつが勇也以外にいるということに少し驚いたが、それ以上にその内容だ。
驚くというよりドキッとしたというのが正しいか。
一瞬声も出せずに見つめてしまった。
「あれ、聞こえてるよね?」
「あー、大丈夫だ聞こえてる。ちょっと驚いてただけだ。えっと、倉庫の奥にいた人か」
「驚いてたんだ。あ!もしかして〜、私に話しかけられてドキドキしちゃった?」
物凄い笑顔である。
話しかけられてドキッとしたのは事実なので一瞬目を逸らしてしまった。
「ドキドキしたんだ〜!」
「こんな時間に話しかけてくるやつがいないからびっくりしただけだ」
「ふーん。まあそういうことにしといてあげる」
ニマニマした表情でからかわれているのがよく分かる。
「で、何の用なんだ」
「あんなところに来る人なんていないから、君のこと気になっちゃって。たまたまここにいるの見かけたから話しかけたんだ〜」
「そうか。…もしかして同じクラスか?気が付かなかった。悪い」
「私全然教室行かないから、気づかないのも仕方ないかもね。」
それはどうしてなのだろうか。やっぱり訳ありなのか、それとも単なるさぼりか。
その一瞬の思考が顔に出ていたらしい。
「あ、別に深い理由とかはないからね。まあ、さぼりだね!」
「いやそんな元気にさぼり宣言されましても」
「あはは!そういえば自己紹介がまだだったね。」
「私は天音有紗、よろしくね!」
「俺は紫宮奏だ。よろしく」
俺の名前を聞いて、頷きながら繰り返し名前を口に出していた。
「それでさ、どうしてあの部屋にきたの?」
「先生に頼まれて荷物運ぶために行ったんだよ。そしたら奥に部屋を見つけて好奇心で見に行ったんだ。」
まさか人がいるとは思ってなかった。それも同じクラスの。いや、違うクラスや学年の人でも驚きはするが。
「紫宮くん、すぐ出てっちゃったしなぁ」
天音はさみしいなぁという表情でこちらを見つめてくる。
「俺は荷物を取りに来ただけだ。たまたま出会っただけ」
「へぇー」
天音は少しの間目を瞑りなにかを考えているようだった。
そして、
「今日の放課後、またおいでよ」
「え?」
「紫宮くんとなら楽しそうだし!」
突然すぎて一瞬処理が追いつかなかったが、まあお誘いを受けていることは分かる。
「あ、もしかして部活とかバイトとかしてる?それともなにか用事あったりしたかな?」
「いや、なにもないが…俺でいいのか」
つい聞いてしまった。別に俺でなくてもクラスの女子に声をかけて放課後遊べばいいのでは?と思ってしまったのだ。
「紫宮くんがいいなって思ったんだけど…ダメかな」
あざとい。まあ放課後に予定はないし、何をするのか知らないが、あの空間であれば机で勉強も出来るだろう。
もしかしたらこれは罠で、部屋に着いたらなにかされるということは…ないか。あってたまるか。
暇つぶしに暇な人間を呼んだだけだろう。
恐らくあの空間はあまり人に知られたくない場所だ。どうせ呼ぶならもう知ってしまっている人間だ。
「分かった。放課後な」
「わー!ありがとう!昨日の場所にきてね!」
そう言うと天音は手を振りながら教室から出ていった。
まだ他の生徒は教室には来ていなかった。時間的にぞろぞろと来る頃だろう。
天音との会話以外には、これといっていつもと違うことは起きなかった。
いつも通り授業を受け、勇也と昼食をとり、そして放課後になった。
さて、向かうとしよう。