黒ちゃん
黒ちゃんは分裂するタイプのスライム。
分裂したら、対象を食べて乗っ取る。
そんな黒ちゃんはわたしのペット。
だいじに育ててたけど、ある日わたしを食べた。
まあいいよ、わかってたから。
以来、わたしは黒ちゃんといっしょになった。
黒ちゃんは体内からわたしをあやつり、感情のままに騒ぐ。
ある日、わたしに無視されて不機嫌な黒ちゃんはわたしを操った。
黒ちゃんはわたしから子供を生み出した。ちび黒ちゃん。
ちび黒ちゃんはねじれながら排水口におちた。
わたしは仕方ないと思った。
黒ちゃんとわたしは一緒にお買い物にいった。
するとちび黒ちゃんが襲いかかってきた。ちび黒ちゃんはパイナップルをたくさん食べて大きくなっていた。
「黒ちゃんより、ちび黒ちゃんのほうがいいよ」
よくわからない。黒ちゃんのほうがいい。
ちび黒ちゃんはねじれながらあばれた。わたしたちはスーパーマーケットを逃げ出し、ちび黒ちゃんをひきつけて空き地へ。
「あんたのせいでこうなった」
黒ちゃんはごねた。わたしは反省していたが、ちび黒ちゃんは黒ちゃんと仲直りしてほしい。
「じゃあ、ちびと、黒ちゃんとで、ふたりであんたを食べようか」
黒ちゃんは悲しげに言う。
やめてほしそうに。
「またか……」
わたしは笑ってちび黒ちゃんに火をつけた。
「黒ちゃんはいいけど、ちび黒ちゃんは無理。トイレに流したい。」
「そんな……」
ちび黒ちゃんはわたしを食い破り、黒ちゃんは逃げ出した。
ちび黒ちゃんは笑っていた。
「ちびがたべたいから、ちびがいちばん!」
わたしは悲しくなった。
「たすけて、黒ちゃん……」
ちび黒ちゃんは不機嫌になって暴れた。わたしは意思をもたずに操られた。本来捕食された人間がするように。
さよなら、黒ちゃん。
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