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悪寄席の雛

作者: ピチャ

 雛の周囲には悪が集う。彼女を食ってやろうと機会を窺っているのである。


 昔から、彼女の周りには人が集った。彼女は天真爛漫で、それでいて普段のことはしっかりしている。そんな性格だからか、彼女はいつも人気者だった。人は困ったことがあると、彼女に相談する。すると、解決はともあれ、相談してよかった、と思われる人間だった。

ところが、いつからか噂が広まって、彼女を利用しようとする者まで近づくようになった。彼ら彼女らは、表面上は善人ぶっている。雛は悪事には疎い。知らないうちにいいように利用されていることがあり、良き友人たちは少々気にしていた。

雛が、悪者に連れ去られたり、殺されたりしないだろうか。

どうやら彼女は、そうした気配を感じることがまったくできないらしい。すべての人が善人であるかのように生きている。周囲から見たら、必ずしも善人だけではないのだが。勿論、悪人も彼女に心打たれ浄化されることがある。しかし、根っからの悪は存在する。また、彼女が寄せるのは人だけではない。その筋の人によると、彼女には霊や怪異の類がおびただしい数纏わりついているらしい。

人を寄せる者、怪異を寄せぬわけがなし。気休めのお祓いでは、とても間に合わないらしい。

 そんな彼女が、どうやら何も気づかぬまま成人してしまった。

こちらとしてもあまりのことに言い出せない。それだけ彼女の影響は大きい。


 我々は、護衛隊として交代で彼女の様子を見ることにした。

友人もそこそこの人数いる。時間が合えば人と会うし、会わずともスマートフォンで連絡を取り合っている。悪い人がいないか確認するのは、少々骨が折れる。隣の都道府県くらいなら、電車でスイーと行ってしまう。彼女は知らない。そんな彼女に付いていくのが、我々だけではないことに。

霊や怪異は変装しないだけ有難い。本当に厄介なのは人だ。人は見た目を変えることがある。しかも、心が複雑で物分かりが悪い。シッシッと追い払っても、ズルズルと付き纏ってくる。そうして雛に悪さを仕掛けるのである。イタズラにしては性質が悪い。

こういった輩は、証拠を取って警察に突き出してやるのが一番である。反省はしないが、少しだけシュンとする。なにも、彼ら彼女らも迷惑をかけたくてやっているわけではないのだ。ただ雛の厚意に甘えている。雛は気づいて受け入れているわけではない。彼女は、被害を受けていることをよくわかっていないのだ。

 今では「悪寄席の雛」と呼ばれている彼女。ちょっと困った存在である。


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