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第7-30話 ソードマン・リゲイン・ディバインウェポン

 人質が突然目の前で爆発したことで言葉を失うタリビア。


「はっ、なッ……?」


「武器を奪われて身体の自由も奪われたあなたとの約束なんて守るわけないでしょう! 何の意味もありませんからねェ!!!」


 絶望のあまり、放心している彼女をさらに煽り心を折ろうとするメイダン。残虐な笑みを浮かべ、タリビアの絶望の表情を味わうようにじっくりと見つめている。


「ああ、いいですねえ。人の絶望の表情というのは……。これだからやめられないんですよォ」


 強烈な味に狂ったように身もだえするメイダン。その最中、見下すような視線をタリビアに向けるが、絶望に飲み込まれてしまっているタリビアがそれに反応できない。空虚な瞳で地面を見つめながら自分の何がいけなかったのかと反芻し続けている。


 しばらくそんな彼女を楽しんでいたメイダンだったが、彼女の様子を見続けることにも飽き始め、本来の目的に戻る。


「さて、あとはこの剣を砕けば私の役目は終わり。我々は重要な一歩を刻むことになる。ですがその前に……、あなたの存在は邪魔でしかないですねぇ……」


 タリビアに向ける視線がまるで家畜でも見るようなものへと変化していく。


「子供数人も守れないような脆弱なあなたが生きていても仕方がないでしょうし……。いっそ死んでしまいますか?」


 最初から結論は決まっているが、あえて問いかけるような口調で今後を聞くメイダン。そんな彼女の言葉を聞いて初めて小さく動きを見せたタリビアはもぞもぞと身体を動かすと首が露わになるような体勢を作った。それは彼らに対して斬首を望んでいるかのようであった。


「でも首なんて落とさないんですよねぇェェ! 一撃で殺さず、じわじわと嬲り殺しにして差し上げますからァァァァ!!! せいぜい苦しみながら死んでいってくださいねぇェェ!!!」


 もう楽になりたい。そんなタリビアの意思を踏みにじるメイダンは部下に指示を出す。部下が持った剣の切っ先が剥くのは彼女の胴体。本当に彼女を苦しめながら殺す気でいるらしい。


 だが、タリビアはそんな理不尽すら受け入れようとしていた。無気力になってしまっている彼女はもはやどんなことでも受け入れてしまう精神性になっている。そんな彼女だけでこの場を打開するのは不可能だった。


 これもまた運命か、そう悟ったタリビアはありのままを受け入れるつもりで静かに目を瞑った。











































 彼女の首に迫る一筋の剣閃。しかし、それが彼女の首に届くことはない。代わりと言わんばかりに飛び込んできたのは伸ばした足を勢いよく振り下ろしている男に叩きつけたアベルだった。


「なっ、なんだ!?」


 突然姿を現したアベルに動揺する大地信教団の面々。一瞬、タリビアと同じように瞬間移動で来たのかとも思ったが、そんなことが出来るのはよほどの魔技使いだけだ。彼にそこまでの力量はないことはさすがの彼らでも見抜くことが出来た。いわゆる高速移動でここまでやってきたのだろうと推察できる。


 だが、そんなことは問題ではない。この場にタリビアの味方が来てしまったということだ。今彼らは彼女を孤立させたうえで殺すという選択肢を取っている。そこにアベルが来てしまった。彼自身にこの場の全員を倒す実力はないとしても、捨て身で彼女を解放されてしまえば大地信教団に打開の手段はない。神装の人智を超えた力でねじ伏せられる。


 破神装など普通の使い手では、綿密に練られた作戦でからめとり完全にねじ伏せることでしか神装には対抗できないのだから。


 そのことを理解しているメイダン含めた大地信教団。しかし、そんな状況でも自分を奮い立たせるが如く、メイダンは勝ち誇ったような言葉を吐く。


「もう一人の神装使いまで集まるとは! まるで巣にかかった獲物を間近にした蜘蛛の気分ですよ! さあ、あの男もやってしまいますよ!」


 アベルを前にしたメイダンは早速部下に指示を出す。だが、部下は突然現れたアベルに向かって動けない。いきなり現れた彼の存在は彼らの目にはとてつもない脅威に見えていた。


 そんな彼らを他所にアベルはタリビアを拘束している縄を切りながら動きを封じている魔道具を打ち砕く。


「タリビアさん今は戦ってください! 悔いるのはそれが終わった後でにしましょう!!!」


 そして彼女に発破をかけたアベルはメイダンが確保している神装クライネルンを奪還するために彼女に向かって駆け出した。


 しかし、タリビアは自由になってにも拘らず、膝をついた体勢のまま、俯いて手のひらを見つめ続けていた。だが、それでも彼女には戦ってもらわなければならない。そのための下準備ならばアベルでもできる。アベルはそのために動く。


 タリビアにかけた言葉と彼の行動ですぐに彼の目的を察知したメイダンは即座に迎撃態勢に入った。彼女だって神装使い。大地信教団の中では指折りの強さを持っている。聞けば彼は神装を手にしてから一年前後という話だ。どれだけ優れた才能を持っていても太刀打ちできない老獪さを見せつけてやろうと意気込みながら、彼女は腰の破神装を抜いた。


 だが、実際のアベルの動きは彼女の予想とはシンクロせず、さらに上回った。

 

 決して一瞬では近づけない距離にあったはずのアベルの身体は瞬きする間に彼女の懐に飛び込んだ。


(速いッ!?)


 反射的に彼の斬り上げを弾いたメイダンだったが、彼の動きに驚きを隠せない。想像を超えた彼の動きに何とかついていこうと魔力で身体を限界以上に強化する。


 彼女としてはアベルはそれに応じると考えていた。だからこそ、完全に思考を戦闘に持っていき、破神装使いとしての実力を全力で発揮することを決断した。


 だからこそ、彼女は自分に起きた思考の変化にも、肉体の異変に気付かない。そしてアベルが彼女との戦闘に付き合う義理もないことにも。


 メイダンの体勢を崩したアベルは誰もいない方に跳び手を伸ばす。そして宙に浮くクライネルンを掴み取った。メイダンは先ほどの攻防の際、無意識のうちにクライネルンを離してしまっていたのだ。


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