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第7-3話 ソードマン・アタックド・タウンチーフ


 突如としてアベルの背後に現れた不壊竜骨跡地を支配していると思われる存在。透き通った刀身を持ったその片手剣を振りかざした態勢で現れたその人物は一切の躊躇なくアベルにその剣を振り下ろした。


 だが。


「シイィッ!」


 一瞬で振り返ったアベルは振り下ろされた剣を自慢の一振りであるヴィザリンドムで弾き飛ばした。まさか攻撃をはじき返されるとは思っていなかったのか、周りの男たちはざわついている。ただ、攻撃した本人は全く驚いていなかったが。


 剣を振りぬいた体勢から両手を下した自然体をとったアベルは、怒りが感じ取れる獰猛な笑みを浮かべると仮面の人物に口を開く。


「ずいぶんなご挨拶だな。旅人に向かって」


「……ただの旅人にさっきの一撃は弾けんだろう。それにその剣、これと同じ神装だ。この世に十本しかない剣を持っている奴がそんな普通な人間なはずがない。違うか?」


「……まあ、それもそうだけど。そんで? まだ続けるのか?」


 自然体のまま、攻撃的な気配をぶつけるアベル。その気配にとっさに身構える周りの男たちだったが、当の本人が乗り気でないらしく、剣を収めてしまった。


「私は別に構わない。だが、急に始めればここが持たないだろう。急に攻撃を仕掛けた詫びだ。なんの用でここを訪れたのかは知らないが話くらいは聞いてやろう。おい、案内しろ」


 腰の革の鞘に剣を収めた仮面の人物はまるで初めからその存在が嘘だったかのように一瞬でその場から姿を消した。祖余りの早業にアベルは思わず息が漏れた。


 その場に残されたのはアベルと、かの人物の部下であろう男たち。男たちはうんざりとした表情を浮かべながらではあるがアベルに歩み寄ってくる。


「はあ……、非常に不本意ではあるが社長の命令だ。お前を社長のもとへ案内させてもらう。その前にその剣はしまっておけ。俺たちがお前に牙をむくことはないし、ほかのやつらも手を出しては来ない。んな物騒なものは仕舞ってもらえないと案内出来ないからな」


「ああ、そっちに戦う気がないっていうならこっちも余計なことはしないよ」


 そういうとアベルは剣を籠手の中にしまい、武器がないことをアピールするように両手を挙げた。彼が武器を見える形で持っていないことを確認した部下の男たちは、彼らをまとめる社長と呼ばれる人物に会わせるためにアベルを高層建築物に向かって歩き始めるのだった。
























 本来の順番とは違うが、ともあれ目的地である建物に着いたアベル。男の後に続きながら彼は建物の中を見回していた。


(中は思ったよりもきれいだな。もっとごちゃごちゃして汚いもんだと思ってた)


 建物の中の第一印象を内心で呟くアベル。そんな彼の考えを読んだかのように先導する男が口を開く。


「もっと汚ねえもんだと思ってただろ?」


「……まあ、こんなもんだろ。王都もこんな感じだった気がするし」

 

 一瞬、男の問いにどう答えるべきか悩んだアベルだったが、正直に答えて悪感情を植え付けても今後に支障が出かねない。かといって誇張して答えるのも嘘くさい。当たり障りのない平凡な答えを返す。


「冗談。王都の廊下がこんなに地味なはずないだろ」


 だが、そんな彼の考えすら男は看破して見せる。内心動揺するアベルだったが、表には出さず男の様子を窺う。


「まあ、こっちに気を使ったっていうのはわかった。ありがとよ」


 しかし、男はそんな彼の考えなど気にせずに感謝の言葉をかけた。続けて彼は声を上げる。


「あんたみたいな普通に生きてきた人間には分からないかもしれないけどな。俺たちみたいな世間に捨てられた人間にはこの程度でも贅沢なんだよ。俺たちが本来身を置くような場所じゃ隙間風なんて当たり前、最悪なところは壁が壁のようを成してない何てところまである。そんな俺たちが風の無い場所に身を置けるってだけでありがたいんだ」


 男の言葉に耳を傾け続けるアベル。ある程度予想はしていたが自分と彼らとでは環境が大きく違う。この考えの違いは後々の軋轢になりかねない。自分の中で考えを擦り合わせ、なんとか交渉をしなければ。


「そうだ。紹介が遅れたな。ノルウィーグだ。あの人の部下をやってる。長い付き合いになるんだろ? 仲よくしていこう」


 本来であれば外部の人間を嫌うはずの彼らが手を差し伸べてくる。これを受け取らないのは彼らに対する侮辱になるだろう。ユーマは手を伸ばすとノルウィーグの手を取った。


「アベル・リーティスだ。よろしく」


 互いにガッチリと相手の手を握った二人。しばらく手を握っていた二人だったが手を離すとノルウィーグが口を開く。


「で、早速で悪いんだが……」


「どうした?」


 どこかもじもじとしながら口を開く彼に若干の不審者感を覚えながらもアベルは彼に問いかける。その直後、ノルウィーグの口から発せられた言葉は意外なものだった。


「ヴィザリンドム様を見せてくれないか?」


「は? こいつをか?」


「俺はアグリス様の話が大好きなんだよ! 剣一本で数多の神装使いを薙ぎ倒した大英雄! その愛剣として活躍しヴィザリンドム様!! さっきは一瞬、チラッとしか見れなかったからもう少しじっくり見せてほしくてな……。ダメか?」

  

 まるで少年のような口ぶりで頼んでくるノルウィーグ。そんなことだったらお安い御用だとアベルはヴィザリンドムを籠手から取り出すのだった。




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