第6-36話 ドラゴンライダー・ノウ・ザリアリティ
戦場から隔絶されたように秩序を保ちつつ、それでいて戦場と同じほどの苛烈さを見せる神装使いの戦い。しかし、時間が経つにつれて最初ほどの苛烈さは無くなり、優劣がはっきりとし始める。
「グフッ、ガハッ!?」
「どうやら決着は近いみたいだな。そんな身体ではそう長くは戦えまい」
弓を片手に地面に膝をつき血を吐いたサドリティウスとそんな彼を空中から見下ろすラスター。
この二人の戦いは熾烈を極めたが徐々に若く肉体的も健康なラスターに戦況が傾き始め、そして今に至った。完全に戦況はラスターに向いた。
だが、戦況が彼に向く前もラスターが優勢だったかというとそうではない。
(こっちも決して温い攻撃をしていたわけではないんだが……。やはり化け物かこの爺)
確かにラスターは防御寄りの戦闘を行っていた。しかし、攻撃に手を抜いていたわけではない。生半可な戦士が相手どろうものならば一瞬で消し炭になりかねないほどの攻撃をサドリティウスに向けていた。
だが実際にはどうだろう。それらの攻撃はすべて躱されるか相殺され、挙句の果てには防御を貫通して攻撃が飛んでくる始末である。おかげで貫通してきた攻撃が掠るわ撃ち抜いてくるわでラスターの身体はいくつもの傷が刻まれていた。それに対してサドリティウスはほぼ無傷、これではどちらが優勢なのかわかったものではない。
だが、それでもラスターの優位は揺るがない。もう既にサドリティウスはまともに戦える状態ではない。あとは適当に防御していればラスターの勝ちである。
だが、それでも油断はできない。どんな形で反撃をされるかわかったものではないのだ。そして彼ほどであればどんな形でもかなりの力を発揮するだろう。それに彼の眼はまだ死んでいない。目が死んでいないということはそういうことである。今のうちの息の根を止めておかなければならない。
とどめを刺すべく、魔力を活性化させるラスター。周囲に槍状に変化させられた魔力の塊が浮かび、その切っ先がサドリティウスに向く。あとはこれを撃ち出せば彼は完全に終わる。未だに咳き込んでいる彼に回避する余裕はない。
撃ち出すべく、振り上げた右腕を下ろそうとしたその瞬間、ラスターはこちらに向かって飛来する何かに気づき攻撃を中断する。サドリティウスが仕込んでおいた攻撃であったなら当然食らうわけにはいかない。攻撃に回していた魔力を防御にあてながら視線を飛翔物体の方に向けた。
だが、飛んでくる物体は彼の想像とは違っていた。一直線に飛来してくるのは戦場で暴れるように指示を出していたはずのヴァルガルとストレイであった。ヴァルガルの上に乗るストレイは何やら慌てた様子であり、急かすようにヴァルガルの背を押していた。
指示を無視してこちらに向かって飛んでくる彼らの姿を見てラスターは苛立ちで舌を打った。どうしてこうもバカばかりなのだろうかと思う彼は、サドリティウスに意識を向けながら彼らがやってくるのを待つ。
そしてヴァルガルがラスターの隣で滞空し始めると、その上からストレイが声を張り上げる。
「頼むラスター! あそこの集落の人間を生き返らせてくれ!!!」
やってきたストレイの目的は集落の人間を生き返らせることであった。彼の頼みにラスターは溜息を吐くと呆れたように言葉を連ねた。
「はぁ……、普通に考えろ。人間を生き返らせるようなこと、人間が出来るはずないだろう? 仮に出来たとしてなぜ俺がそんなことに時間を使わなければならない?」
「だって俺前に聞いたぞ、あの人は人を生き返らせることすらできる最強の人間だって! それにあの集落の人間が死んだのは大地信教団のせいなんだぞ!」
ストレイの言葉にたちまち苛立ちを加速させるラスター。彼は厳しい言葉で彼に突き付ける。
「俺が率いた奴らのせいで集落の人間が死んだ? だからどうした。カスが何人死んだところで俺には関係のない話だ。くだらない話をしに来たのなら今すぐに消えろ。さもなくば手ずから殺してやる」
「な……、なんでそんなこと……」
協力する気などさらさらないラスターの言葉を聞き、放心するストレイ。絶望感に苛まれ同時に集落の人間たちの笑顔が頭をよぎる、。どうしてあの優しい笑顔を守れなかったのか、この集団についていくのは果たして正しい行いなのか。考えが浮かんで消えて行かない。
そんな彼を他所にラスターは袖から結晶を取り出す。たった一つのそれを地面に放り投げると結晶が割れ、その中から魔獣が姿を現した。
今度の魔獣は頭が三つの犬型の魔獣。ケルベロースと呼ばれている個体は空中のヴァルガルたちを敵と認識するや否や、彼らに向かって襲い掛かった。
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