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第6-31話 ヘル・コンテニュー・ボスオブサイド

 カルミリアたちが第二ラウンドを始めた。が、それで虫たちが止まるわけではない。彼らは彼女たちのことなど気にすることもなく、兵士たちを襲い続けている。その結果として既に四分の一ほどの兵士たちが命を落としており、他の兵士も今も逃げまどっている。


 だが、この場にいる人間は兵士たちだけではない。


「私たちは味方なんだからこっち来るんじゃないわよッ!」


 撤退命令にも従わずに意固地を張った破神装使いとその部下たちも戦場に残っていた。兵士たちとは逆の方向にいたため、最初に襲われることはなかったが、兵士たちが散り散りになったことで虫たちの進行方向が変わり、そのせいで彼らの意識に引っかかってしまい、味方である彼らも襲われる事態が起こっていた。王国兵士の中には彼らにうまい事虫の注意を彼らに向けさせることで逃走に成功した切れ者もいた。


「もうっ、攻撃は全く通らないし動きはやたらと早いしおまけに気持ち悪いし! 最悪!」


 文句タラタラで逃げるメイ。既に部下の半数を失っており彼女自身、虫に立ち向かった際に腕を負傷していた。それでも戦おうとしたところを部下によって止められ、同時に戦力差を理解したことで逃亡の決断をした。


「あのクソ神装使いィ……。こんなことするんだったらちゃんと言いなさいよ。こんなの聞かされてたらちゃんとこっちだって撤退してたわよ……」


 虫たちが暴れたおかげで偶然できた物陰に部下たちと隠れながら動き出すタイミングを伺う。その間も彼女の口から不満が途切れることはなく、いつまた爆発するだろうかと部下たちは一抹の不安を抱いていた。


 だが、彼女もそこまで無鉄砲ではない。何時ならばより安全にこの戦場から離れられるかを考えながら虫たちの動きに注意を払う。そして虫たちがほとんどいない、無の空間が一瞬出来上がった。その瞬間を彼女は逃さずに部下たちに指示を出す。


「行くわよ。ついてきなさい」


 そういうと彼女は物陰から飛び出し、一目散に走り始める。そんな彼女の背を追って部下たちも走り始めるのだった。


 このようなことが戦場の破神装使い全員に起こっていた。自分が助かりたい一心で部下を置き去りにして一目散に逃げてしまう者や、メイのように部下たちと協力して逃走する者、かつてないほどの集中力で回りを活かし、他の者に注意を向けさせることで逃げるための糸口を作ろうとする者など、様々な方法で牙から逃れようとしていた。


 そんな中一人の破神装使いがこんなことを思いついてしまう。


「そうだ……。このそばには確か集落があったはず……」


 これが最悪の結果を生むことになるのは言うまでもない。































 虫の大群に襲われ、混沌と化した戦場。しかし、その混乱も落ち着きを見せ始め、戦士たちの明暗が分かれ始める。


 そんな中で偶然ではなく必然性をもってその脅威から逃れることのできた者たちがいた。


 彼らは自分たちを包み込むようにして張られている水の膜の中で食らおうと必死になっているサソリの様子を伺っていた。


「いやぁ、ほんと神装使い様様だぜ。まさかあいつらの攻撃全部無効化してくれるなんてよ」


「安心なんかしてんじゃねえよ。本来狩る側の俺たちがただ守られてるだけなんだぞ。しかもあんな女の子に。少しは恥ずかしそうにしろ」


 同僚の指摘にウッと声を漏らす一人の兵士。今の彼らはナターリアに守られている状態。彼女が展開している水のドームに入ることが出来たから彼らは今こうして会話することが出来ている。入ることのできなかった同僚が一瞬で肉塊にされたことでそれを実感させられた。


 それに水のドームを展開した彼女本人は今もなお、ドームの外で他の兵士を救おうと駆けずり回っているのだ。少女一人に重労働をさせて自分たちは安全地帯で見ているだけ。恥を感じずにはいられなかった。


 重苦しい空気に包まれるドーム内。そんな空気を嫌がり兵士は話題を切り替える。


「にしても、あの時炎の槍が飛んでこなかったら俺たちも危なかったよな。マジでギリギリだったし」


「おそらく隊長のだろ。あっちはあっちで恐ろしく大変だろうが、こっちに気を回せるなんて相変わらず人間離れしてるな」


 彼らはドームに入れられる直前、ムカデの一匹に追いつかれ食われそうになっていた。防御するための手段もなく、彼らは死を覚悟し立ち竦んでしまっていた。しかし、ムカデの牙が彼らに突き立てられようとしたその瞬間、炎の槍がムカデに直撃し今にも食らいつきそうになっていたムカデはその身体を二つに分かれさせられ、絶命した。これによって水のドームを張るのが間に合い、彼らは生き永らえた。


 実はカルミリアが二人に放った槍は彼らに向けてはなったものではない。もちろん当たれば儲けもの程度には考えていただろうが、本命はそちらではなかった。


 炎の槍の矛先はすべて部下たちを襲っていた。ムカデたちに向けて放たれていたのだ。怒涛の攻撃が襲い掛かる中、彼女は砂煙の中で攻撃を防御する一方、虫たちに向けて狙いを定め攻撃を仕掛けたのだ。その甲斐あって多くの兵士たちが救われた。彼らのように彼女のおかげで命拾いしたものもいたため、攻撃した甲斐はあった。


 だが、それでも事態が好転したとは言い難い。ナギスたちとの第二ラウンドが始まった今、彼女に先ほどのようなことをする余裕はない。


 多少減らせたとは言え、それでもまだまだ虫たちはいる。そんな中でその毒牙から逃れることが出来るかは、逃げまわる本人と戦場で唯一自由に動き回ることの出来るナターリアにかかっていた。






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