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第6‐26話 ワンドマスター・アペアー・バトルフィールド

「おいお前ら! 俺をさしおいていつまでしゃべってるつもりだよ!!!」


 割り込んできたのはヴァルガルの上に乗ったストレイの声。思わずサドリティウスが彼の方に視線を送ると同時にマルアイドは走り始めた。


 彼を止めるべく、引き絞った弦を離したサドリティウスであったが、彼の撃ち放った矢はヴァルガルの口から放たれたブレスに煽られ、あらぬ方向に吹き飛んでいく。


 しかし、ここで諦めるにはいかない。サドリティウスは再度矢筒から矢を抜き、目にもとまらぬ速さで弦を捻りながら引くと、矢を放った。弦を捻ったことで矢はブレスの上方をすり抜けるようにして飛び、マルアイドの背中に迫る。


「させるか!」


 しかし、彼の渾身の二発目もヴァルガルによって防がれてしまう。その巨躯に見合わない素早い動くで矢の新路上に近づいた彼は尾で放ったサマーソルトをタイミングよく合わせ、矢を叩き落とした。


「なるほど、俺の相手をするのはお前たちということか……」


 二度も攻撃を防がれれば嫌でも理解する。自分の相手が彼らであることを悟ったサドリティウスは獣のような獰猛な笑みで口角を吊り上げた。


 だが、そんな彼の様子とは裏腹にストレイはどこか歯切れの悪そうな表情で首を傾げている。


「いや……、俺たちじゃないと思うぞ。作戦の時に言われたのはあの二人を誰にも邪魔させずに槍の女にぶつけろってのと、適当に後ろの兵士を相手してろってだけだったし……」


 彼の言葉に疑問を膨らませるサドリティウス。では一体彼の相手をするのは誰なのか。この戦闘に参加していて彼の相手が出来そうな人物は限られる。薄々、サドリティウスの中で相手が誰なのか予想が付き始める。


 嫌な予感に身体を蝕まれながらサドリティウスはヴァルガルに矢を引く。


「ま、もう少しすれば来るんじゃないか? それじゃバイビ-!」


 だが、その前にヴァルガルは翼を広げると暴力的なほどの風を起こしながら羽ばたき始める。彼らが目指しているのは後方で待機している兵士たちの方。もし、彼が兵士たちのほうに向かえばヴァルガルの戦闘能力を考えると、兵士たちはどうすることも出来ないまま蹂躙されることになるだろう。神装使いのナターリアもいるがまだ未熟な彼女では対抗できない。


 それだけは防がなくてはならない。ヴァルガルを行かせないためにサドリティウスは引いた矢を離し、撃ち出した。今度はヴァルガル本体ではなく、その上に載っているストレイを狙った。まだ子供だが、最早手段を選んでいる暇はない。


 ストレイに向かって飛翔する矢。このまま飛翔すれば確実にストレイを貫くだろう。そうなれば彼を乗せているヴァルガルも無視できない。確実に矛先を自分に向けられる。そう思ってサドリティウスは行動した。


 にも拘らず、彼の執念は身を結ばなかった。ストレイの胴体に向かって飛翔した矢は彼に直撃する直前で空中で停止する。間髪入れずに撃ち出した三本の矢も続々と空中で止まってしまい、妨害をすること叶わず、ストレイたちは兵士たちのほうに飛んで行ってしまった。


 何が起こったのか。サドリティウスは空中で停止した矢を見ながら考える。


 その直後、彼の第六感が身体を動かし、ヴァルガルたちとは何の関係もない方向に向けさせた。殺気を向けられていたわけではないし、攻撃の気配を察知したわけでもない。何なら気配を隠そうとしていたわけではなく、空気などと同じ、身近に当たり前にあるものと同じ気配であった。


 だが、サドリティウスは気づいた。その身に宿す力がこの場の誰よりも強く、気高いものだと察知したからである。


「貴様がそうか……」


「そうだ。初めましてサドリティウス。貴殿の相手はこのラスター・マグドミレアがさせてもらおうじゃないか」


 ローブをはためかせながら宙に浮かび、サドリティウスを見下ろしているラスター。既に彼の手には神装が握られており、戦闘準備が完了している。


 彼に対して矢を番え直し、その先端を向けるサドリティウス。最上の警戒を露わにしながら彼は口を開く。


「悪いがあれを野放しにするわけにはいかないのでな。手短に終わらさせてもらうぞ」


「そんなことをさせるとでも?」


「できないとでも?」


 向かい合うサドリティウスから先ほどマルアイドに向けられた時のような強烈な殺気が溢れだし、ラスターにぶつかる。その殺気で改めて彼がこの世界における最強の存在の一角であることを確認する。


 だが、ラスターだって負けていないほどの実力者、世界最強の一角である。不安の一つも抱くことなく彼の殺気を受け流し、余裕そうな笑みを浮かべながら彼の言葉に真正面から対抗する。


「確かに貴様の実力を考えれば、まともにやればお互いただでは済まない。一応今回の戦いの首謀者故に死ぬわけにはいかない」


 続けてラスターは言葉を放つ。


「しかし、貴様を倒さなくていいとなれば少し話が変わる。足止めをし、他に意識を向けさせないようにすることだけに専念すれば俺は病気の貴様の攻撃なんぞ完封できる。それだけの力が俺にはある」


 その言葉にサドリティウスの警戒心はさらに高まる。病気のことはつい最近カルミリアに言った以外には誰にも言っていない。のにそのことを突き止められていた。


 そして確かに彼にはそれを実行できるだけの確かな実績、実力があり、それを意図せずに察することが出来るだけの雰囲気がある。


「そして、後ろの兵の掃討は俺がやる必要は無い。こちらで準備した兵力を使えば簡単に済む」


「既に大地信教団の大半は逃げてしまったようだがな?」


「あんな役立たずどもなんぞに期待なんてしていない。俺には俺の最高の兵力があるからな」


 そういった彼の手にはひし形の水晶のようなものが握りこまれていた。ラスターの一挙手一投足を注視していたはずのサドリティウスが気付くことが出来なかったその行動に、彼の警戒心はこれまでになかったほど高まった。


 そしてその手に握られた水晶。そこから何やら嫌な気配を感じ取ったサドリティウスは思わず、彼の次の行動を注視した。何かをすれば撃ち落とす。その一心で彼の身体の隅々まで見定めていた。


「さあ行け。俺の忠実なる僕たちよ」


 そう呟いた次の瞬間、ラスターは手に握りこんだ水晶を宙に投げた。宙に舞う十個の水晶、投げられた瞬間にサドリティウスは矢を撃ち出していた。分裂しながら水晶に向かって飛翔する十本の矢。


 しかし、矢が水晶を貫くことはなく。紙一重のところで水晶に一気にヒビが走り、中から光を放ちながら水晶は粉々に砕け散った。



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