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第6-24話 レリジオンズトランプ・カムトゥ・キングダム

 慌ただしくなる大地信教団。そんな変化を当然王国側も気づいていた。


「なんだ? 向こうが随分と騒がしくなってきたし撤退してく……?」


「ビビって逃げちまっただけじゃねえの?」


「だったら今じゃなくてさっき大量に逃げて行ったときに一緒に逃げただろ。今逃げるってことは何か目的があって逃げてるんじゃないのか?」


「だったらなんだよ、その目的って」


「知るかよ」


 大地信教団の不審な行動に首を傾げる兵士たち。追撃するべきかと考えるか、異様な雰囲気に飲まれ行動を起こすことが出来なかった。それに撤退していった戦士を追撃しようとも仲間が逃げていったことで異様な士気で攻撃してくる残りの戦士たちに脅かされる。下手に手出しができない状況にあった。


「だけど何もしないわけにも……」


「あっ、隊長が来たぞ!」


 どうするべきか判断に悩んでいた兵士たち。そんな彼らのもと心理を読んだかの如く、カルミリアがやってくる(サドリティウスは射程を活かして周囲の警戒中である)。


「追撃は不要だ。我々も戦線を少し下げるぞ」


「追撃しないんですか?」


「ああ、一般兵士は今回の戦いでだいぶ精神的にやられただろう。当面の間、過激な手段はとらないだろう。こちらも向こうも無駄な犠牲を出す必要はない。それに……」


 カルミリアは一拍おくと再び口を開く。


「向こうの大半がいなくなったというのにまるで勝った気がしない。むしろどんどん追い詰められたような気がする。だから戦線を下げ万が一に対応できるようにする」


 真剣な表情で敵の方を睨みつけているカルミリア。彼女の言葉には心の内を示すように危機感がたっぷりに籠っており、これから何かが起こることを感じさせた。


 だが、もうほとんど戦いが終わったと思っている部下たちは軽い口調で彼女の意見に反論する。


「そんなまさか。既に向こうの戦力はほとんど残っていません。逆にこっちの戦力はほとんど温存。この状況から向こうが逆転出来たら本当に奇跡ですよ」


「侮るな。向こうを率いているのは神装使いだ。この言葉の意味が分からないわけではないだろう。ともかく戦線を下げるぞ。すぐに後退しろ」


 だが、そんな部下の声をカルミリアは逆に咎める。相手は神装使い。その力の振るい方一つで世界の在り方すら変えてしまうほどの力も持ち主なのだから。


 彼女の指示に従い王国兵士たちは素直に後退していく。彼女の言葉に反発しそうな冒険者たちも何か嫌なものを感じ取っているのか、彼女の指示に素直に従い後退していった。


 メイたち破神装使い率いる部隊の追撃をいなしながら撤退していった王国側の戦士たち。彼らの後退が完全に終わり、


 最後に残ったカルミリアとサドリティウス。彼らは敵軍の方を見据えながら言葉を交わす。


「さてさて、とりあえず全軍後退させたが……。鬼か蛇か、どっちが出てくるだろうな?」


「向こうは伝説の魔技師です。この状況で蛇が出てくることなどありえません。今までの経験から断言できます」


「そりゃそうさな。そら、お客さんがやってきたぞ」


 その言葉を最後にサドリティウスはルーネビリティに矢を番え引く。彼の視線の先には青空から飛翔体が飛んできている。遠目から見ても分かるほどの強者の気配と竜の形。間違いなく以前王都を襲撃した神獣、ヴァルガルであった。


 サドリティウスが弓を引いた直後、それを引いたカルミリアも槍を回り、周囲の炎の槍を発生させる。そして二人は飛んでくるヴァルガルに狙いを定めると、同時に攻撃を撃ち出すのあった。


 撃ち出され風を切りながら分裂して殺到する矢と、空気を焦がしながら摩擦で火力を上げていく炎の槍。それらはヴァルガルを覆いつくすようにしながら襲い掛かっていく。


 しかし、ヴァルガルはそれらの攻撃を意に介することもなく突っ込んでいく。無数の矢を強固な鱗で受け止め、襲い来る炎の槍をその体躯に見合わない素早い飛行能力で躱しながら突っ込んでくる。


「すごいの神獣というのは! 本気でないとは言え俺の矢を防ぐとは!」


 ヴァルガルの動きにサドリティウスが思わず舌を巻く。二人の怒涛の攻撃を捌きながら二人に接近してくるヴァルガルはついに肉眼で確実に目視できる距離まで接近する。

 

 彼の上には以前と同じようにストレイが乗っており、さらに彼の足には二人の男がぶら下がっている。そのうちの一人は見覚えのある顔であり、彼はカルミリアの顔を見て獰猛な笑みを浮かべている。


「会いたかったぜぇカルミリア・ガリーズゥゥゥ!!!!!」


「俺も会いたかったァァァ!!! 前の借りを返させてもらうぜェェェ!!!」


 カルミリアに因縁のあるストレイとナギス。この二人が風にも負けない大声を震わせながら接近してくる。そして彼らの声を間近で聞いているもう一人の男はマルアイド。彼の手には亡神鎌サーディンが握られている。彼らの乗るヴァルガルが近づいてくるその最中も二人は迎撃のため攻撃を飛ばし続けているが、落とすことが出来ず接近を許してしまう。


 そして両者の距離が五十メートルほどまで近づいたところで、ついに足にぶら下がっていた二人が飛び降りた。二人のもとにまるで隕石のように落下してきたナギスたちは爆音とともに土煙を上げながら着地した。


 少し遅れてヴァルガルも着地し、砂煙の規模が大きくなり彼らの姿を覆い隠す。


「隊長!!!」


「師匠!!!」


 突然の事態に後方で待機していた隊員と、サリバンが声を上げる。彼らと同じように他の隊員たちも驚きで息を呑んだ。


 その直後、咆哮とともに砂煙が一気に晴れ覆われていた四人の姿が露わになった。ナギスが斧を振り下ろした体勢で立っており、それをカルミリアが受け止めている。もう一人の男はサドリティウスに鎌を振り下ろしており、サドリティウスは彼の攻撃を片手で弓で受け止めもう片方の手で矢を引きヴァルガルにその先を向けていた。


 相対した四人の神装使いと、それに匹敵する力を持った神獣。ここからは生半可な力を持った者では割り込むどころか入ることすらできない神装使いの戦いが始まろうとしていた。





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