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第6-20話 レリジオン・デパート・バトルフィールド



「よっこいしょっと」


「ちょっと兄ちゃんまた飛ばしすぎだよ!!!」


 ファニトラ付近で集落で生活を送っていたストレイ。彼は今日も少年たちと遊んで時間を潰していた。とは言っても以前とは心持が違っている。最初こそ、渋々彼らの遊びに付き合っていた彼であったが、今では誘われればノリノリで腰を上げるほど子供たちと打ち解けていた(単純に精神年齢が違いというのも関わっているだろう)。


 今日も今日とてボール投げで少年たちを蹂躙するストレイ。持ち前のパワーでボールを投げ、明後日の方向に吹っ飛ばした彼は少年たちに怒られ、小走りでボールを取りに行く。


 ボールを拾って再び合流しようとしたストレイ。そんな彼の足が止まる。


「あ、どうも」


 彼の前に立っていたのは少年たちの一人の母親であった。野菜などが入った籠を持った彼女は彼らから離れたところで出会ったストレイに一瞬驚いた素振りを見せたが、すぐに切り替えるとストレイを引き留めるための言葉をかける。


「あらアンタ、最近うちの子たちと遊んでくれてありがとうね」


「いや、別に大したことじゃないから……」


 話しかけられると思っていなかったストレイはいつもの活発さを潜め、母親に応対する。そんな年頃の少年らしい振る舞いに妙な親近感のようなものを覚えた母親はさらに舌を加速させる。


「あんたいつまでこの集落にいるの? あんたみたいな若いのがここに住んでくれるとすごい助かるんだけどねぇ。ほら、ここは男手が少ないからさぁ」


「ああ、あと三日ぐらいで迎えが来るんだ。それまではいるよ」


「あらそうかい、残念だね。まあ、それまではこの集落でゆっくりしていきな。ほら、ちょっと小さいけどこれ食べな」


 母親はストレイに果物を手渡すとそのままササッとその場を去って行ってしまう。お礼を言う暇もなく去って行ってしまった母親の背中に手を伸ばした彼であったが掴むことは出来ず、握られた果物を見つめた。


 それを捨てるわけにはいかない。彼はそれに口を付けると少年たちのもとに戻っていくのだった。























「ラスター様。戦闘準備、九割まで完了いたしました。あとは細かい調整のみでございます」


「戦闘部隊の士気も高水準でございます。いつ開戦しても問題ございません」


「そうか、ご苦労だった。下がっていいぞ」


 報告をしに来たグルマとシエルを下がらせ、玉座に深く座り、頬杖を突くラスター。


 開戦を間近に控え、いよいよ戦場に赴くことになる彼。準備はした。戦いの勘も鈍っていない。強力な手下も従えた。負ける要素などどこにもない。


(………………)


 なのにどうしてだろうか。なぜか自分の座る玉座が国王の物になっているビジョンが思い浮かばない。障害がカルミリアならばいい。マルアイドとナギスの二人で抑え込めばあとは自分と人造魔獣で簡単に片づけられる。あとは残った者たちで袋にすれば簡単に片が付く。


 問題なのはサドリティウスの方だ。奴の戦闘能力は底が知れない。今まで幾度となく監視の目を送り戦力を分析しようと試みていたが、監視の目に気づいているのか、というか気づき半分の力も出していないように感じられた。


 もし奴の全力が彼の想定を遥かに上回るものだった場合、想像を絶するほどの被害を受ける可能性がある。もしそうなれば今回の一戦で国を取るのは難しくなるかもしれない。


(だが、奴は重い病気に侵されている可能性がある。そう何度も戦いの場に出てくることはできないだろう。だったら……)


 彼を削ることを考えればいい。彼を消耗させ、戦場に出られないようにしてしまえば長期戦は必至。となればラスターに軍配が上がるだろう。人と人造魔獣、補充の容易さは比べるまでもない。


(方針さえ決まってしまえばこちらの物だ。せいぜい楽しませてくれよ?)


 玉座に腰かけ、思考を巡らせるラスター。しかし、内心の戦いを楽しむような口調とは裏腹に顔は一切楽の感情を抱いていなかった。



































「あと五日か……。頑張ってください……」


 世界樹の根元、剣を肩に乗せ老人と相対する青年。彼は静かに王都のほうを見つめるとポツリと呟く。


「よそ見厳禁じゃよ」


 しかし、相対する老人の攻撃に無理やり引き戻される。彼に今回の戦闘に参加する資格はない。だからこそ、今は彼らに任せ、自分の戦闘能力を高めるしかない。振り下ろされた老人の木刀を受け止め、戦いに集中するのだった。




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