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第6-6話 ガールズ・エンジョイ・フリーティングハピネス

 カルミリアの屋敷の離れでお食事会という名の女子会を行っている四人。食事をつまみ、酒を飲み彼女らは楽しんでいた。

 

「へぇー、そんなことがあったんだ。大変だったんだね……」


 初めて顔を合わせたナターリアがナリスに自分の生い立ちと神装使いになった経緯を説明すると、ナリスはほろりと涙をこぼしながら呟いた。いきなり幸せを壊され、自分で選ぶこともできずに戦いに身を投じることになってしまったのだ。自分から好んで戦いに足を踏み入れたナリスの涙腺を緩ませるには十分な威力を持っていた。


「そのおかげでラケルちゃんやカルミリアさん、ヘリオスさんたちと会えたんだからなんだかなぁって感じだよね……」


「……私応援するよ。お母さんの仇を討つためだったらなんだって協力するから!」


 ナリスがナターリアの手を握り協力を意を見せる。手を取られ、まっすぐな視線で見つめられたナターリアは少し恥ずかしそうに顔を逸らした。


 そんな彼女のもとにほんのりと頬を染めたラケルと、完全にデロデロに酔っぱらっているリュティエルがやってくる。自分の酒の強さを把握せずに一気にいってしまったリュティエルは、完全に泥酔状態である。目の焦点もあっていない。


「大丈夫そう?」


「何が大丈夫なのよ?」


「さっきお水飲ませてきたから大丈夫だと思う。それよりも二人は何の話してたの?」


「私は当然大丈夫よ~! 私は天下無敵なんムグッ」


 酔っぱらって余計なことを大声で話すリュティエルの口を塞ぎ、ラケルが話を続けるとナリスが口を開いた。


「ああ、確かにナターリアちゃんの昔話はちょっと、なんていうかすごいよね」


「ラケルちゃんもすごかったと思うよ! どちらかというとロマンチックって感じだけど」


「あーわかる~。魔獣に食われそうになったところをアベルさんに助けてもらったなんてすごい素敵だと思う!」


「えー、そうかなぁ……」


 二人のべた褒めを受けてラケルは恥ずかしそうにはにかみながら後頭部を照れくさそうに掻く。確かにあの時のアベルは彼女もかっこいいと思っている。あれがなかったら今の彼女はないし、彼に惚れていたかもわからなかっただろう(まあ、後々のことを考えれば惚れるのは時間の問題だっただろうが)。


 それに自分が惚れた男が褒められるというのは、自分のことのようにうれしいものだ。頬が緩み口角が無意識のうちに上がってしまう。


 何とか上がりそうになる口角を引き下げ、平常心を演じようとするラケル。しかし、既に手遅れ。二人は既にラケルの気持ちにも気づいている。彼女の様子をニヨニヨとにやつきながら見ていた。


 ラケルの様子から徐々に話の流れがいわゆる恋バナと言われる方向に進んでいく。


「ねえねえ、アベルさんとの関係ってどんな感じなの?」


 未だに表情が緩んでいるラケル。そんな彼女に対してナリスは早速大きく切れ込んだ。彼女の一手に、先ほどの緩い空気から一変し三人の間にある意味で張り詰めた空気が漂う。具体的に言うと、ラケルとナリスの間でピリピリとした火花のようなものが散っている。


 腸を見せるか、それとも隠すかの戦いが始まるのか。そう思った矢先、その場にいたが蚊帳の外にあった人物が真っ先に口を開く。


「あー、あの男ね。あの男は私のもんよ」


 今まで強制的に黙らされていたリュティエルが話せるようになった途端、大声を上げ言葉を紡ぐ。何を言っているのか本人すらわからない状況で発せられた言葉に三人の空気が凍る。


「えっと……、それはどういう……」


 彼女の発言に戸惑ったラケルがその発言の真意を知るべく、問いかける。するとリュティエルは何の戸惑いも、躊躇いもなく彼女は声を上げる。


「ん、そのままの意味よ。あの男はそのうち私がもらうからってね」


 それだけ言い残したリュティエルは座っているラケルの膝に頭を落とすとそのまま眠ってしまう。混乱という爆弾を爆発させたとは思えないほど切ったとは思えないほどの穏やかな寝顔を浮かべている。


 その言葉でラケルはさらなる混乱に陥る。まさか身内までアベルを狙っていたなどと思わなかったのだ。一切その素振りを見せていなかった彼女が狙っているとは思っていなかったのだ。


 だが、まだわからない。酔って適当なことを言っただけの可能性があるのだから。その可能性にかけてラケルはガシガシと少々乱暴にリュティエルの頭を撫でた。


 だが、ラケルの願いは『酒は人の本性を露わにする』という効果によって一蹴されてしまうのだが、そのことを本人が知るのはもう少し先である。


 新たなる混乱の渦中の人物である二人。そんな二人をナリスとナターリアが見つめていた。二人の瞳には何か新しい波乱が起こることを楽しむような色が籠っていた。好奇心満々の二人の視線にラケルは気づいていない。


 その後、彼女はうやむやのまま女子会は進んでいき、最後にラケルが眠るまで楽しい夜は更けていくのだった。


































 翌朝。起き抜けにラケルは口を開く。


「ねえ、リュティエルちゃん。アベルさんのことどう思ってる?」


「は、ハァ!? いきなりどうしたの!? べ、別に何とも思ってないけど。何度も助けてもらったから感謝はしてるけどね」


「そう……」


 ラケルは彼女の言葉を信じて胸を撫でおろす。


(素直だな~。狼狽え方とかで絶対に嘘だってわかるのに)


 人生経験という意味ではナリスが一番である。そんな彼女にしてみればリュティエルの内心など一目瞭然であった。そんな彼女の様子を見てナリスは再びニヤリと笑みを浮かべ、内心で呟くのだった。


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