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先輩とチョコレート  作者: 猫屋敷 桜
6/11

5

「だめだ、終わる気がしない」

「諦めたらそこで試合終了ですよ」

「誰だ、懐かしい漫画の名台詞をこんなときに引っ張り出してきたやつは」

職場に変わった人がいる、佐藤さんという女性。

教育担当でもないし、役職はないけれどベテラン。

誰にでも優しくて、いつも穏やかな笑顔で、ちょっとした失敗が多くて、ものすごくチョコレート好きなんだ。


「佐藤さんって、漫画好きなんですか?」

「漫画だけではなく書籍も小説も雑誌も読みます。音楽も聴きますし、DIYもします。多趣味ですよ?」

「お、俺一時期バンド組んでたんですよ。高橋は音楽聞くのー?」

「この忙しいときに、雑談している余裕があるなら、もっと仕事をくれってことだよな?」

俺の質問に佐藤さんが答え、塩崎が乗っかったため、俺が主任に睨まれるという貰い事故案件発生。

佐藤さんも一緒に仕事をもらってくれて、残業はまだまだ続く。

そして傍らに生チョコレート3種。うまくて仕事も頑張れる気がする。


少し離れた席で仕事している佐藤さんをチラチラ見ながら、仕事をこなす。

「高橋ー、18回目のミスは避けられたみたいだが、ここは図表にして簡潔にまとめてくれ」

相変わらずチェックが厳しい主任だけど、最近怒られなくなってきた。

俺も成長しているってことかなと力が入る。


「高橋ー、繁忙期過ぎたら、飲みに行こーぜ」

ジムに通っていたはずの塩崎から飲み会のお誘い。

もう諦めたのか?と思いつつ、佐藤さんを誘ってみても迷惑じゃないかなと考えてみる。

塩崎が計画する飲み会に佐藤さんを誘うんだから、何も変なことはないはず。

「残業が減ったらいいよ。あと佐藤さんも誘っていい?」

「ほう、このクソ忙しいときに飲み会の計画か。これもやっておいてくれよ。あとその飲み会は俺も行くからな」

酒谷主任がいつの間にか背後にいて、俺たちの会話を聞いていたらしい。


ただただ頷いて書類を受け取り、主任が席についたのを確認してほっと息を吐く。

「お前のせいで仕事が増えたじゃないか」

「これこなしたら、佐藤さんにメールしてみりゃいいだろ。さっき佐藤さんがこっちをちらっと見てたぞ。頑張れー」

「頑張れって酒谷主任も来るんだし、男だけでいいだろ」

怒られないように小声で会話し励まされるが、大人数になると迷惑じゃないかなとも考える。

しかも社内メールで個人的な飲み会のお誘いって規約違反じゃないのか?

考えがまとまらないので、とりあえずもう一粒生チョコを頂いて、仕事をこなそう。


何とか今日の仕事を終わらせた俺はお誘いの文面を考える。

仕事のメールに紛れるとみてもらえないかもしれないし、馴れ馴れしいのは減点だろうな。

チョコレート以外の共通点は今のところないし、もしかしたら彼氏がいるかもしれないじゃないか。

「難しい顔して、パソコンでも壊れましたか?」

いつの間にか横にいた佐藤さんに驚く。まだ何も書いてなくてよかった・・・。

「いや、メールの構成を考えていただけで。もう帰ります」

「お疲れ様です。そういえば先ほどの生チョコと同じメーカーさんのつぼ焼きプリンがあるんです。どうぞ」

「あ、ありがとうございますっ!」

思いがけないお土産までもらって帰途に就く。

まぁ仕事が落ち着いたら、飲み会を計画して誘えばいいや。

明日も残業だろうし・・・佐藤さんチョコレート持ってきてくれるだろうし、頑張ろう。

プリンも美味しい、生き返る。


後日談:

「高橋ー、ここ、19回目。まだまだだな。」

成長しているか不安になってきたな、俺・・・。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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