表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先輩とチョコレート  作者: 猫屋敷 桜
5/11

4

「あらぁ、失敗」

「うぉっ、今の音なんですか?大丈夫ですか?」

「脚立に上ろうとして足を踏み外したら、倒してしまったんです」

「佐藤さん小さいので、そういうときは俺に言ってください」

職場に変わった人がいる、佐藤さんという女性。

教育担当でもないし、役職はないけれどベテラン。

誰にでも優しくて、いつも穏やかな笑顔で、ちょっとした失敗が多くて、ものすごくチョコレート好きなんだ。


実は20cm以上身長差があると最近知った。

もっと大きいと思っていたんだけど、どんな魔法を使っているんだろう。

佐藤さんが使うからチョコレートの魔法と名付けよう。

「高橋さんに頼らずとも、棚から書類を取るくらいは出来ますよ」

照れ隠しなのか、握りこぶしをつくる佐藤さんは脚立と比べると、小ささが認識できた。

必要な書類は俺なら手が届く高さなんだけどね。

書類を棚から取り出し、佐藤さんに渡す。

「ありがとうございます。あ、これお礼です」

書類が無くなり空いた掌にポンと置かれた黒い箱は、たぶんチョコレートなんだろうけど、見たことがなかった

「えっとこれはチョコレートです。あ、知ってますよね。どうぞ」

ふふふと何も説明せずにいなくなってしまった佐藤さん。

いや、大切なこと何も言ってないよ?どこのチョコレートですか?どんなチョコレートなの?

マイペースだなぁと力が抜けた。


「よし、お仕事頑張っちゃうぞー」

気を取り直して書類の提出やら、電話でアポイントメントを取ってと、あっという間に昼休憩になった。

頂いたチョコレートをよく観察して、よく味わう。食感が面白くて、おいしい。

「この仕事量で残業なんて許さないからね」

午後も張り切って仕事をして、残業になりそうなところを酒谷主任にヘッドロックで制止された。

この人、やっぱり怖い・・・。

珍しく定時で上がった佐藤さんはダッシュで帰宅してた。誰かと約束があったのかな?

塩崎は健康診断の結果、ジムに通うことにしたそうだ。

ジムに誘われたけど、俺は友達と定期的にテニスしてるから、A判定もらってますよー。


後日談:

実はここのセット商品にはもう1種類のチョコレートが入っていることを知った俺は、人生初のお取り寄せをした。

どちらもとってもおいしくて、佐藤さんにあげたらとびっきりの笑顔を見られた。

佐藤さんは既に買ったことがあるんだから、どちらも食べたことがあるんだし、義理で笑顔にならなくても・・・と思いながらも、嬉しかった。

チョコレートの魔法は皆を笑顔にするんだと、心が温かくなった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ