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先輩とチョコレート  作者: 猫屋敷 桜
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2

「高橋ー、今日夜飲みに行くか?」

「んー良いよ」

「飲みすぎて朝ご飯抜かないようにしてくださいね。塩崎さんも気にしてあげてください」

「佐藤さん、聞こえてたんですか・・・ちゃんと食べてますよ!コーヒーとみそ汁でしたけど・・・」

「・・・・具だくさんみそ汁なら許しましょう」

職場に変わった人がいる、佐藤さんという女性。

教育担当でもないし、役職はないけれどベテラン。

誰にでも優しくて、いつも穏やかな笑顔で、ちょっとした失敗が多くて、ものすごくチョコレート好きなんだ。


同期の塩崎と飲みに行く約束から、なぜ朝食の栄養バランス談義になっているのか分からないまま仕事が始まる。


「そういえばもうすぐ健康診断じゃね?」

「健康診断前に断酒するから、その前の飲み会だ!」

塩崎の思考回路はたまにシンプルになる、良いヤツだ。

「私は健康診断が毎回憂鬱です」

佐藤さんは持病があると聞いているから、検査の結果に影響するのかと心配しかけた。

「身長がどんどん小さくなるのに、体重が増えていくんです。おかしいです」

「それは・・・何も言えません」

吹き出しそうになるのを頑張って抑えた俺は偉い、はず。

塩崎も肩が揺れている、我慢しろ俺たち。


「去年は151cmでした。きっと今年は150cmくらいになっています・・・」

その言葉に違和感を覚えて、佐藤さんを思わず二度見する。

ハイヒール履いてて160cmくらいあるよな?そんなに小さくないよな?

「ん、あー・・・今の私はヒールを履いていても155cmくらいですよ。実は見た目ほど大きくないです。横に並ぶとほら・・・小さい・・・」

騙し絵かと思うほどの変化で俺の横に並んだ人は、肩より下に頭があった。いろいろおかしい。

元の位置に戻った佐藤さんは見慣れた大きさで、やっぱり色々とおかしい。

隣の塩崎もびっくりしてますよ、佐藤さん。

「佐藤さん、それはチョコレートの魔法か何かですか?」

間抜けな言葉しか出てこなかった。

語彙力がなさすぎて、うまく表現が出来なかった。

「違います。でもチョコレートばかり食べていて、背が伸びなかったとしても後悔はありません」

なぜか両手に力を入れて、握りこぶしを作り笑顔の佐藤さん。

それ、ドヤ顔なんだろうか。

「じゃぁ、佐藤さんも朝食をしっかり食べましょう。そしたら背が伸びますよ」

大人になって背が伸びることはないと分かりつつ、からかいたかった。

「私はチョコレートも食事もしっかりとりますよ。先日、高橋さんには主任から高橋さんに注意が入りましたよね?」

ふふふ、と笑う佐藤さんにからかわれたと分かり、返事に困る。

そして、握りこぶしから板状のビターチョコレートを差し出してくる。

チョコレートの魔法なのか?


「・・・まぁ、健康診断のためにしばらくは健康的な食生活をしますよ!」

「えっ、飲み会いかないの?」

健康宣言したものの、同期の淋しそうな顔に負け、健康生活は明後日からと本末転倒なことを考えた


後日談:

健康診断の結果、身長が151cmでとどまったことを喜んだ佐藤さんから、有名チョコレートメーカーの缶入り小粒チョコをもらった。うまかった


最後までお読みいただきありがとうございました。

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