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底辺冒険者なんて言われてますけど実は元最強勇者です  作者: CLOWN888v
1章 湖の騎士ランスロットの反乱
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オレを許さないでくれ

 オレはすぐに自室に戻り愛剣のエクスカリバーを剣立てに置き、鎧から着替えた

 着替えを終えるとオレは走ってモルドレットに指示された崖に急いだ

 その間に見た光景は凄惨たる光景だった

 城内も城下町も毒に感染したものは血を吐き倒れていた、それを介助する城の騎士や癒術師達、空気感染するのではと慌てふためく国民達

 だがその場を走って通ったオレが感染していないのをみるとどうやら撒かれた毒の粉を吸ったものだけが倒れているようで空気感染の心配はなさそうだった

「くそっ!なんで気づけなかった!」

 アカツキをまとめるべき勇者、ロードであるオレが気づくべきだった、モルドレットの考えていることに

 グネヴィアのこと、国民のこと、色々なことが頭のなかをぐちゃぐちゃにする

 オレはそれを振り切るようにがむしゃらに走った



「モルド……レット……」

 海辺の崖まで全力で走ってきたオレはさすがに肩で息をつきながら目の前にいる人物の名前を読んだ

「おや、思ったよりお早いご到着ですね、アーサー様」

モルドレットは崖の端にたち下卑た笑いを浮かべている

「アーサー!」

 グネヴィアはモルドレットに首に剣を突きつけられていた

「グネヴィア!モルドレット、オレは手紙に書かれたことを全て守った、だからグネヴィアを解放して解毒剤の作り方を書いた紙を渡せ」

モルドレットはクククッと笑うと言った

「それは出来ないそうだんですねぇ」

「何故だ!」

「何故ってそりゃあ、貴方の実力を考えてですよ、グネヴィア様を解放してしまえばその一瞬で戦況を逆転させることができる、貴方はそれだけの実力を持っている」

 そう言ってさらに強くグネヴィアの首に剣を突きつけた

「……じゃあどうしたらいい?」

「そうですねぇ、ではまずは自身に魔法封印の魔法をかけてください、貴方なら出来るでしょう?」

「……わかった」

「あ!その前に身体能力低下の魔法も自身にかけてください」

「慎重だな」

「当たり前でしょう?相手はロードですよ?」

 オレはここで自分の考えの甘さに気づいた

 剣などがなくても魔法もある、モルドレットなら一瞬気を緩ませれば圧倒できるだろうと考えていたのだ、グネヴィアのことも守れると

モルドレットは頭が切れる、オレに勝てる打算があったからこそことを起こしたのだ

「ダメよアーサー!私はいいからモルドレットを倒して!」

「グネヴィ一一」

「おーっと、私語は慎んでいただきましょうか、今の主導権は私です」

 モルドレットはそう言うとグネヴィアの首に突きつけられた剣を軽く動かした

 グネヴィアの首に赤い線ができる

「グネヴィア!……わかった、すぐにかけるからやめてくれ」

 オレは両手を上げて降参の意を示した

「苦虫を噛み潰したような顔ですねぇ、早くかけてください」

「……「マハトロース」」

 全身の力が抜ける感覚がある

「……「エレメントシュナイデン」」

 オレの周りに魔素を絶つ膜が張られた

「これで満足か?」

「ええ、ええ、さすがの魔法ですねぇ」

そう言ってモルドレットは嫌な笑いかたをした

「……アーサー」

 心配そうにグネヴィアが名前を呼ぶ

「約束だ、グネヴィアを解放しろ、そして解毒剤の作り方を書いた紙もだせ」

「わかっていますとも」

 モルドレットは片手で懐から紙を取り出した

「早くグネヴィアと紙を一一」

「おっと失礼、手が滑って紙を落としてしまった」

 モルドレットはそう言って崖下に紙を落とした

「貴様!!」

 慌ててあまり力の入らない体で崖まで駆け寄ったが紙は風に乗って飛んでいってしまった

「約束と違うぞ!!」

「おや、渡すとは約束はしていませんよ?それに城と城下町にあれだけ被害を出してこのまま毒にかかったもの達が死ねば貴方の首とともに魔王様にいい土産になる」

 そう言ってまたククッと笑った

「さぁ貴方は飛び降りてください、身体能力が低下している今ならここから落ちれば貴方でも死ぬでしょう?」

「紙を捨てられた以上そんな命令聞くわけ……っ!」

そうだ、紙は捨てられてしまったがまだグネヴィアが人質になっている

「よく考えて行動してくださいね?」

「くそっ!」

 オレは崖に近づいていく

「アーサー!やめて!私はいいから!」

 グネヴィアが必死でもがいている

「グネヴィア……お前だけでも守るから」

 だが崖の前まできて思った、モルドレットのことだオレが死んでもグネヴィアのことも殺すかもしれない

 どうすればいい……

「なにをしているのです?早く飛び降りなさい」

 モルドレットが急かす

「オレが死んだらグネヴィアを必ず殺さないという保証がない」

「しかし貴方が死ななければ確実にグネヴィア様は死にますよ」

 モルドレットはだんだんイライラしてきているようだった

「ごめんね、アーサー……」

 それはモルドレットが腕時計に目をやった一瞬だった

「ヴィントシュトース!」

 グネヴィアが魔法を口にしたその瞬間

 グネヴィアとモルドレットを強風が襲う

「っこのアマ!」

 モルドレットが叫ぶが風は止まらず二人ともバランスを崩し崖から足を踏み外した



「はっ、はぁっ、」

 動きずらい体で飛びかかって左手でグネヴィア、右手でモルドレットの腕を掴んだ

「なにしてんだグネヴィア!!」

 オレは怒鳴る

「ごめんねアーサー、でもアーサーなら絶対助けてくれるって信じてた」

 そう言って笑った

「そんなことどうでもいいから早く引き上げろ!!」

 モルドレットが叫ぶ

「今の力じゃ二人は引き上げれないっ、グネヴィアを引き上げる」

「そんなっ、待ってください!」

「悪いな」

 オレはそう言ってモルドレットの手を離そうとした

「待って!!」

「っ、どうした」

「私じゃなくてモルドレットを引き上げて?」

「何故だ!?」

「ほ、ほんとは私があそこに引っ掛かってた紙を取ろうと思ったんだけど、っ!私の手じゃ届かない、かといって私の魔素じゃもう一回風魔法は使えないっ、しいつまた風が吹いて飛んでいってしまうかわからないっ、モルドレットなら手を伸ばせばその紙が取れるでしょ?」

 オレが掴んだ手だけで崖からぶら下がっているから苦しそうにグネヴィアが言う

 それを聞いてすぐモルドレットは引っ掛かった紙を取った

「これか!さあ私を引き上げろ!解毒剤の紙はそうしたら渡す!」

「ね?さあ手を離して?」

「っ!そんなこと!できるわけないだろ!!!」

 オレは必死で叫ぶ、しかし力のない今二人は引き上げられない

「朝の話、覚えてる?、貴方は勇者、国民を救わなきゃ、ね?」

 そう、朝話したことが実際に起きてしまった今オレはどうしたらいいかわからなくなった、グネヴィアを助けたい、でも国民の命も守らないといけない、オレはどうしたらいい……

 考えるがいい案は思いつかずどんどん力が抜けていく

「さぁ、離して?」

「でも、やっぱりオレは!!」

「貴方は勇者、みんなを守る、そんな貴方が大好きだった……ごめんね、背負わせることになって……さよならアーサー、大好きっ!」

 グネヴィアはそう言うと掴んでいたオレの手をもう片方の手で引き剥がした

「グネヴィア!!!」

 叫んだときにはグネヴィアはもう海の水に飲み込まれていた

「なにをしている!早く私を引き上げろ!!」

「……」

「おい!聞いてるのか!早くしないと解毒剤の紙を捨て一一」

「黙れ、その紙を捨てたらお前を殺す」

「っ!」

 オレはモルドレットを引き上げた

「はぁっ、はっ、くそ!もう少しで死ぬところだった」

「紙を渡せ、そして大人しく城までついてこい」

「はっ、誰が……」

「黙ってついてこい、早く城に連れていかないととお前を殺しかねない」

 魔法で力も魔素もないはずなのに自身の回りの空気が揺れるのを自分でも感じた

「……わかりました」

 モルドレットはその圧に恐怖を感じたのかそのまま大人しく城までついてきた


 城に着いてからは大騒ぎだった

 まずモルドレットは反逆罪など諸々で地下牢に収納されることになった

 解毒剤の作り方を書いた紙は城の癒術師に渡し大慌てで調合がされることになった

 グネヴィアは落ちた位置を兵士達に伝え探すように言った

 でもなんとなくわかっていたあの崖から落ちれば助からないであろうことは

 それでも本当は自分で行きたかったが魔法の解けていない体で走ったり引き上げたり城まで走ったり無理をしたせいだろう城に着いた頃には体は鉛のように重くそのまま救護室に連れていかれることになった

 自身の魔素の多さを呪った、人より多く魔素を貯めれるせいで魔法の力が否応なしに強くなってしまうのだ

 救護室に連れていかれベットに寝かされると負傷者の介助をしていたのであろうランスロットが飛んできた


「アーサー様!!グネヴィア様が死んだと聞きました!どういうことですか!?」

「ランスロット……グネヴィアは崖から落ちた」

「貴方がいながら何故です!?モルドレットは生きて連れ帰ってきたじゃないですか!なぜグネヴィア様が!」

「そうだな……グネヴィアはオレが殺した」

「っ!な、ぜ……なぜだ!!絶対連れて帰ると貴方は言った!だから私は信じた!なのに、なのに!自身の手で殺したとはなんだ!!」

ランスロットはオレの襟元を掴んで叫ぶ

「……」

「なんとか言ったらどうなんだ!!!」

「オレが殺したとしか言えない……悪いが他の手当てをされているものに響く、混乱も収まっていない、介助の続きをしてくれ……」

「貴様!!そんなことで納得できるわけないだろ!!ふざけるな!絶対許さない、許さないからな!!!」

「ここは救護室です!申し訳ありませんがご退室ください!」

 警備兵たちがランスロットを制しながら部屋からだそうとする

「くそっ!離せ!自分で出る!私は貴方を信じていた、だからこそ許せない!!失礼します」

 ランスロットは最後にそう言うと部屋を出ていった

「……そう、オレがグネヴィアを殺したんだ、オレを許さないでくれ……」

 そう呟きながらオレは顔を両手で覆った、今泣くわけにはいかないのだ、それが、グネヴィアが好きだと言ってくれた勇者としてのオレの使命なのだから

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