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7話 王との謁見【改稿版】

 レイクと名乗った集団を拘束し、近くの駐在から呼んできた警備団に引き渡して馬車に戻ると今度こそ王国に向かって再び馬車は走り出した。

 オレは椅子に座ると気が抜けたように窓から外を眺める。

「大丈夫ですか? やはりまだやはりクッキーのことが?」

 そんなオレに心配になったのかガウェインが声をかけてくる。

「ああまあ、クッキーに未練がないと言ったら嘘になるが……王国に着けばオレは本格的にアーサーに戻らないといけない、そうしたらもう今みたいに気を抜くことは出来ないだろう、勇者に戻れば24時間気は抜けない、ずっと気をはりつめていないといけないからなぁ」

 そう、オレが普通でいられるのはこの馬車のなかが最後になる。

 また次はいつ普通に戻れるのか、それも分からない。

「……自室にいるときぐらいは気をぬいてもいいのでは?」

 ガウェインは少し逡巡した後にそう言った。

「いや、ダメだ、ランスロットが反旗をひるがえしたことは王都に住む者達は知っているんだろう?」

「はい、まだ国からは発表はしていませんが風の噂で国民たちの間では噂になっています」

「だろう? おそらく国から正式に発表があれば騒ぎになる、なにせアカツキの1人ランスロットに加えルナからも謀反したものがいるんだ、王国直属騎士団からの謀反、国民は不安になる、その時に勇者であるオレが精神的支柱にならないでどうする? 万が一にも気をぬいてる状態なんて見せられない、それに相手はあのランスロットだ、少しでも気を抜けば寝首をかかれる可能性もある、そういう不安要素は全て取り除かなければならないんだよ」

 そう、英雄というのは人々の心の支柱にならなければいけない存在なのだ。

 そんな人物がもし、欠伸をして、あぐらをかいているところを見れば国民達はどう思う?どう考える?

 簡単にオレという英雄の柱は音を立てて折れるだろう。

 だからこそ、もう気は抜けない。

 それに離反した相手はランスロットだ、その点もまた、懸念材料のひとつだった。

 それほどまでに、あいつは敵にしたくない相手だ。

「……そうですね、相手はランスロット、それを考えれば気は抜けないですね、しかしそれだけではなくすでに国民のことまでを考えていらっしゃるのですか」

「まあ、これでも一応騎士で、勇者だからな」

 一度は捨てた矜持やプライドは今この馬車のなかで拾い直さなければいけない。

 それがオレの選んだ道だ。

「この前の、騎士の誇りはどうしたと言ったことを取り消させてください」

 そんなキザったらしい台詞をあまりに真剣にガウェインが口にするからそれがすこしおかしくて、オレはただ軽く、少しだけ笑った。


 それからしばらくして馬車はヴァルトシュタイン王国の大門の前に着き、何事もなく門をくぐり王都の中を進み城前に着いた。

「よし、降りるか」

 オレは長旅でこった身体をしっかり伸ばしてから馬車を降りる。

「アーサー様のご帰還だ! 城の扉を開けろ!!」

 一番近くにいた衛兵が門番達に大声で叫ぶ。

「アーサー様が遠征から戻っていらした!」

「ガウェイン様も一緒だぞ!」

 オレの帰還はまたたくまに城の衛兵たちの間に広まりすぐに城の扉は開かれた。

「城の警備ご苦労だった、引き続き気を引き締めて警護にあたってくれ」

「はっ!」

 オレが衛兵達に一言かけると全員がしっかりと敬礼してこちらを向く。

 それに余計にこの先から続くプレッシャーを思い知らされて、ここからはオレはアーサーなのだと心のなかで唱え、気を引き締めてから城の扉をくぐった。


 そこからはあれよあれよのうちだった。

 まずオレの帰還が城中に知れわたりすぐに王との謁見の場が用意された。


「よくぞ戻ってくれた勇者アーサーよ、元気そうでなによりだ」

 王が一言目を発する時には既にオレが勇者を辞めたことを知っている者達以外は人払いがされていた。

「王もおかわりなきようでなによりです」

 オレは片膝をついて答える。

「申し訳ないな、もう国からは干渉しないという約束を破る形になり」

 王は言いながらオレに頭を下げる。

 でもこのときには既にオレのなかに怒りはなくて

「最初にガウェインが来たときは少し憤りましたが今回に限っては仕方のないことでしょう、むしろ勇者を辞めるときにオレがちゃんと対応してから辞めていれば起きなかったことですから、オレに責任があります、だから戻った……しかし今回だけです、ランスロットと決着が着けばまた今までの生活に戻らせていただくことをご約束ください」

 この件をどうにかして、その後の生活が保証されるならそれで十分だった。

 オレの進言に王は顎髭に手をあてて少し考えてから頷く。

「ふむ、約束しよう、して、なぜランスロットが謀反したのかは聞いているか?」

「いえ、詳しくは王からご説明をいただこうと聞いていません、しかし何となく理由は察してはいます」

 馬車のなかで何度かガウェインがランスロットの件を話そうとはしたが王から聞くのが一番手っ取り早い、何よりもガウェインはそこまで説明上手でもないから断ってきた。

「そうだな、おそらくお主が思っているとおりだろうが一応説明しておこう」

「お願いします」

「ランスロットが謀反した理由、それはお主が勇者をしていたときにあった事件、グネヴィア……お主の恋人の死まで遡る」

 グネヴィアの名前が出て、オレの思考は飲まれた。

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