王との謁見
レイクと名乗った集団を拘束し近くから呼んできた警備団に引き渡し馬車に戻ると王国に向かって再び馬車が走り出した
オレは椅子に座ると気が抜けたように窓から軽く外を眺めながらぼーっとしていた
「大丈夫ですか?まだやはりクッキーのことが?」
心配になったのであろうガウェインが声をかけてくる
「ああまあ、クッキーに未練がないと言ったら嘘になるが……王国に着けばオレは本格的にアーサーに戻らないといけない、そうしたらもう今みたいに気を抜くことは出来ないだろう、勇者に戻れば24時間気は抜けない、ずっと気をはりつめていないといけないからなぁ」
「……自室にいるときぐらいは気をぬいてもいいのでは?」
ガウェインが少し考えてから言う
「いや、ダメだ、ランスロットが反旗をひるがえしたことは王都に住む者達は知っているんだろう?」
「はい、まだ国からは発表はしていませんが風の噂で国民たちの間では噂になっています」
「だろう?おそらく国から正式に発表があれば騒ぎになる、なにせアカツキの1人ランスロットに加えルナからも謀反したものがいるんだ、王国直属騎士団からの謀反、国民は不安になる、その時に勇者であるオレが精神的支柱にならないでどうする?万が一にも気をぬいてる状態なんて見せられない、それに相手はランスロットだ、少しでも気を抜けば寝首をかかれる可能性もある、そういう不安要素は全て取り除かなければならないんだよ」
「……そうですね、相手はランスロット、気は抜けないですね、しかしそれだけではなくすでに国民のことまでを考えていらっしゃるのですね」
「まあ一応騎士で勇者だからな」
「この前の騎士の誇りはどうしたと言ったことを取り消させてください」
ガウェインが真剣に言う
あまりに真剣にガウェインが言うからすこしおかしくてオレは軽く笑った
それからしばらくして馬車はヴァルトシュタイン王国の大門の前に着き、門をくぐり王都の中を進み城前に着いた
「よし、降りるか」
オレは長旅でこった肩を伸ばしてから馬車を降りる
「アーサー様のご帰還だ!城の扉を開けろ!!」
一番近くにいた衛兵が大声で叫ぶ
「アーサー様が遠征から戻っていらした!」
「ガウェイン様も一緒だ!」
オレの帰還はまたたくまに城の衛兵たちの間に広まりすぐに城の扉が開かれた
「城の警備ご苦労だった、引き続き気を引き締めて警護にあたってくれ」
「はっ!」
オレが衛兵達に一言かけると全員が敬礼した
ここからはオレはアーサーだと心のなかで思い気を引き締めて城の扉をくぐった
そこからはあれよあれよのうちだった
まずオレの帰還が城中に知れわたりすぐに王との謁見の場がもたれた
「よくぞ戻ってくれた、勇者アーサーよ、元気そうでなによりだ」
王が一言目を発する時には既にオレが勇者を辞めたことを知っている者達以外は人払いがされていた
「王もおかわりなきようでなによりです」
オレは片膝をついて答える
「申し訳ないな、もう国からは干渉しないという約束を破る形になり」
「最初にガウェインが来たときは少し憤りましたが今回に限っては仕方のないことでしょう、むしろ勇者を辞めるときにオレがちゃんと対応してから辞めていれば起きなかったことでしょう、オレに責任があります、だから戻った……しかし今回だけです、ランスロットと決着が着けばまた今までの生活に戻らせていただくことをご約束ください」
王は顎髭に手をあてて少し考えてから答えた
「ふむ、約束しよう、して、なぜランスロットが謀反したのかは聞いているか?」
「いえ、詳しくは王からご説明をいただこうと聞いていません、しかし何となく理由は察してます」
「おそらくお主が思っているとおりだろうが一応説明しておこう」
「お願いします」
「ランスロットが謀反した理由、それはお主が勇者をしていたときにあった事件、グネヴィア……お主の恋人の死まで遡る」