緊急対策会議
「派手にやられたものだ……」
グリフがマーリンに連れられて消えてから部屋を見回しながら王が呟く
「しかし被害がこの部屋だけですんで良かったと思うべきでしょう、ガウェインが機転を利かせて目の前だけじゃなくこの部屋を囲む形に黒盾を展開してくれていなかったら今頃城は半壊していた、オレがいた頃より黒盾の制御が的確にできるようになってるし、今回はガウェインにかなり助けられましたね」
「そ、そんなもったいないお言葉を」
「謙遜しないでいい、実際ガウェインのおかげで被害は最小ですんだ、防御率も上がってたし、もしオレがいた頃と同じぐらいの防御率だったら耐えきれず砕けていただろう」
「あ、ありがとうございます!」
今回ガウェインの使った黒盾はシュヴァルツシルト家に代々受け継がれてきた神具だ、扱いは難しいし資格がないと使えないものだが力をしっかり引き出せれば絶対の防御力を誇る
少し落ち着いたところで部屋の修繕依頼を出してくるように兵士に頼んで部屋を会議室に移動した
「して、王にお聞きしたいのですがいいでしょうか?」
「なんだ?」
「先程のグリフ・ノアというものの存在は知っていますか?使うこと自体に資格と大量の魔素量がないと使えない神格級の魔法をいともたやすく扱っていました、そして自身を神の子とも言っていた、神格級の魔法が使えるものは存在自体が稀有です、友好国として1000年以上にわたって親交を深めていたレオデグランス王から聞いたことなどは?見た目も赤髪に青の瞳とこの大陸ではあまりない組み合わせです、聞いたことがなくてもキャメリアド王国で見かけたことなどは?」
王はしばらく考えた後に答えた
「すまぬがわからないな、稀子が産まれたという話も聞かなければ見たこともない」
「そうですか……じゃあキャメリアドのかくし球かもしれませんね、もしくは相手の最強戦力であろうやつが連れてきたか……どちらにしろレオデグランス王とランスロットが今回共謀してこの国ないしオレの首をとりに動き出したのは戦力が揃ったからということで間違えないですね」
「話の途中で申し訳ありません、相手が神格級の魔法を使えるのは確かに脅威ですがアーサー様は無傷で撃退しています、それを考えれば問題ないのではないでしょうか?」
ペリノアが手をあげてから話し出した
「ペリノア……お前は昔から敵を甘く見すぎだ、真っ先に飛び出して痛い目にあったのをもう忘れたか?」
「それを言われてしまえばぐうの音もでません……」
「それにあいつは本気じゃなかった……グリフの右目を見たやつはいるか?」
「いないと思われます、そんな余裕は皆なかったですから……」
「じゃあ言うがグリフは右目に眼帯をしていた、その眼帯には封印の紋章が刻印されていた、あれを外せば何かしらあるってことだ」
「まさか、あれ以上の力を……」
王が眉にシワを寄せる
「しかし一番危惧することがあります」
「……これ以上なにがあるのだ?」
「グリフひとりならなんとでもなります、しかし相手にはランスロット、マーリン、最強戦力、兵隊達がいます、その上もしグリフと同じ、もしくはそれ以上の力を持つものが複数いたとしたら?」
「なんと……」
「しかもグリフと同格のものは少なくとも三人はいることが確定しています、声明の場にいた気配を紛れさせていた残りの二人も同格の力をもっているでしょう、そして言わせてください、相手のひとりひとりの戦力に対してあまりにこちらのひとりひとりの戦力が劣っています」
アカツキ達にざわめきが走る
「これからのために言わせてもらうがアカツキで今回役にたったのはガウェインだけだ、他はあの体たらくはなんだ!オレがいた頃と今のアカツキの質が悪すぎる、今回もオレがいなければどうするつもりだったんだ?いや、はっきり言おう、オレがいなければグリフ一人相手で全滅していただろう、お前達はルナから選ばれた精鋭アカツキだぞ、この結果は騎士として恥じることだ!こんなことでは国も民も守れないぞ!!」
アカツキ達もなにもできなかったことは重く受け止めているようだ
だからこそオレは叱咤する
「皆の気持ちを僭越ながら私が代弁させてください、では我らアカツキはどうすればよいのでしょうかアーサー様、いや、ロード様」
ペリノアが皆を代表していう
「そんなの決まってるだろ、強くなりたいなら死ぬ気で鍛練するしかない、時間はない、普通にやってたら敵の侵略に間に合わないからな、だからオレがそれぞれ個別にみっちり指導してやる、だからお前達も死ぬ気で強くなれ!それがアカツキたる定めだ、厳しいがやれるか?」
「「はっ!!」」
アカツキ達は敬礼して床に片ひざをついた
王は呟く
「アーサーの力は強さだけではない、この洗礼された水のように、一撃の雷撃のごとく強い一言で皆の士気をあげられるカリスマ性もまた勇者たる所以だろう」
一一一
「おかえりグリフ、わぁーぼろぼろだねぇ」
「っ!一一様……」
「マーリンもお疲れ様ぁ、」
「……今回の単独行動申し訳ありません」
「あぁいいんだ、もう、最初は少し怒ってたけどぉ、面白いものが見れたからね……ただぁ、次はないからね、たとえ神の子だとしても、独断専行は大幅に予定を狂わされる、ボクは予定を邪魔されるのが大嫌いなんだ、わかった?」
「わ、わかりました」
「怪我は治しておいてね、ボクの予定では君にはまたすぐに出番がくる、今度は"彼"も連れていってもらうからね」