神格級の魔法
グリフはそう叫ぶとオレとの間合いを詰め右の拳で強力な打撃を繰り出す
オレはエクスカリバーを鞘から半分ほど抜き剣の面で受け止める
ガキィン!
とすごい音をたてて剣と拳がぶつかり周りに突風がふく
止めただけで衝撃波がでるほどの威力だ
ぶつかった衝撃でグリフがよろけた瞬間にオレはエクスカリバーを鞘から抜ききりその場で左に回転をすることで遠心力を付けて斬りかかる
しかしグリフはすぐに体制を立て直しバックステップで斬撃を避ける
オレは避けられて床に当たった剣をガリガリと引きずりそのまま回転斬りへと派生させる
しかしそれもすんでのところで避けられる
グリフは回転斬りを避けるとオレから大きく距離を取った
なぜいきなり距離をとったのかわからずオレも少し後ろへ距離を取る
「……」
グリフはなにか考えるように黙っている
「どうしたんだ?殺し合うんじゃないのか?」
オレは問う
グリフは無言で自身の左ほほを触る
どうやら回転斬りを完璧には避けきれなかったようで左ほほに切り傷ができている
「……ははっ、すごいや、切られてる、久しぶりだなぁこんなにゾクゾクして楽しいのは、じゃあこれならどうかな!!」
グリフは軽く笑うと両手を天にかかげた
オレは次に来る攻撃を察して叫ぶ
「ガウェイン!オレより後ろ全体に黒盾を発動させろ!!」
「り、了解しました!「黒盾よ黒き帳を降ろせ」!!」
ガウェインが唱えるとガウェインの前方、オレより少し後ろに大きな黒い障壁が発現する
「おお、的確な判断だね!さすがにそれなら防がれるけど自分はいいの?」
「オレは後ろの奴らに被害がいかないようにしてもらっただけだ、オレまで守られれば一対一の戦いにフェアじゃないだろ?」
「はっ!いいねぇその心意気!そういうの僕は好きだよ!だけど……戦いにおいてそんな余裕見せてたら死ぬよ?勇者様」
そう言うグリフのかかげられた手元にはどんどんと魔素が集まっていき光が強くなっていく
オレは剣を構え防御の体制にはいる
「防ぎきればどうということはない」
「その余裕が命取りだって言ってんの!なんせ神の子の一撃なのだから!」
光が直視できないほどに光瞬いた瞬間グリフが叫んだ
「ゴットストーム!!」
それと同時に部屋中に雷撃が轟き暴風が巻き起こった
「……これは少しまずいな……1枚じゃあな!まぁ4枚ってとこだな」
オレは剣で防御の体制をとったまま唱える
「マジェスフェアタイディグング四重奏」
唱えるとオレをドーム状に囲むように四層の防御壁が張られた
雷撃と暴風はどんどん強くなり部屋中がみしみしと音をたてる
ガウェインの黒盾にもピシピシとヒビが入り
防御壁もパリンパリンと割れたが3枚ほど割れたところで魔法は勢いが弱くなりほどなく収まった
「……マジかよ、黒き盾はわかるがただの防御魔法に防がれただと?」
グリフはさすがに疲れたのか肩で息をしている、無理もない何故なら今使われた魔法は……
「それはこちらのセリフだ……オレの場合は魔法防御に特化した魔法を4重に張っただけだ、だがお前が使ったのは神格級の魔法だぞ、どんな魔素量してんだ、っていうか魔素量だけで使えるものじゃないぞ、神格級と言われるくらいだ、使うには資格がいる、何者だ?お前……」
「4重に張っただけって、簡単に言ってくれるねぇ、そんなんで防ぎきられた僕のほうが驚きだよ、それに、資格も何も言ったでしょ?僕は神の子だって」
「神の子か……まあいい、これだけ派手にやってくれたんだ、次はオレの番だな!ガウェイン!まだ盾は張っとけよ!!」
オレは剣を横に突き刺し手を前につきだした
「え?なになに?あんだけチートなことしたんだし、もしかして君も神格級の魔法打ってきたりするの?」
グリフは楽しそうに聞いてくる
「悪いがオレは神格級の魔法は使えない、資格を持ってないんでね、だからこれから放つのはただの全力の雷魔法だ、さっきお前はその余裕が命取りって言ったな、そっくりそのまま返させてもらう、笑ってられるのは今のうちだけだ、いくぞ!「サンダーボルト」!!!」
部屋中を雷撃が包み込む
「舐めないでくれよ、僕だって防御魔法ぐらい使えるんだ、そんな中級の魔法で一一なにっ!」
オレが放った魔法でグリフが張った魔法障壁は一瞬で砕け散った
「っは!!」
そして雷撃はグリフの体に直撃してそれでもパワーは衰えず先程のグリフの魔法でヒビが入っていた部屋の壁が崩れる
「っ!やり過ぎたか!」
久しぶりに全力で魔法を放ったため上手く制御できなかったようでオレは慌てて魔法を収束させようとする
「ぐあっ!」
グリフが苦しそうに叫ぶ
「くそっ!」
このままでは殺してしまう、そう焦った時だった
「マジックジャマー」
聞き覚えのある声で魔法を阻害する魔法が唱えられた
その一言で部屋中を張り巡らされていた雷撃が消えたと同時に黒盾も限界を向かえたのであろう消滅した
「お前は……」
王が呟く
「久しぶりだねアーサー」
魔法を止めてグリフの近くに立っていたのはひとりの少女だった
「マーリン!」
オレは驚いて叫ぶ
「っ、!マーリン、なぜ邪魔をした、っ!」
雷撃を直に受けてボロボロになっているグリフが叫ぶ
「だって、まだ君には死なれたら困るからねー、ほら帰るよ」
「まだ殺し合いの途中一一」
「このまま戦ったら結果は目に見えてるでしょ?また今度リベンジすればいい、それに今回の単独行動にあの方は少しお怒りだよ?」
「っ!……わかった、おいアーサー!!今回は僕の敗けだ、でも次は必ず殺してみせるから、楽しみにしててね」
「アーサー、あれだけ教えたのにまだ魔法の制御は苦手みたいだね、とりあえずこの子は回収してくね?またね、アーサー」
「マーリン!待て!!なぜお前がそちらにいるんだ!」
オレは慌ててマーリンに叫ぶがマーリンは笑って手を振りながら空間魔法でグリフを連れて消えていった
「……マーリン」
グリフとマーリンが消えるとボロボロになった部屋と静寂だけが残った