敵の襲撃
「それは誠か!!」
王は玉座から立ち上がる勢いで言った
「はい、事実です、信じられないことですが」
「まさかレオデグランス王が……」
王は信じられないといった様子でこめかみを押さえながら玉座に座り直した
無理もないだろう、オレ自身自分の目で見ていなければ信じられなかっただろう
なにしろこのヴァルトシュタイン王国とキャメリアド王国は1000年近くお互いにいい関係を築いてきた友好国だ
王族同士の仲もとても良く、王とレオデグランス王は兄弟のように育ってきたと聞く
それが今反逆したランスロットのうしろだてになっているとなれば戦争になるかもしれない
「お気持ちはわかりますが早めにキャメリアド王国への対策をしたほうがいいでしょう」
「何故だ?」
「オレがレオデグランス王の顔を見たことには相手も気づいているでしょう、ということはすでにヴァルトシュタインとキャメリアドは敵対していると言っても過言ではない、これまではランスロットの影に隠れて動いていただけでしたでしょうがバレたとなれば隠す必要がなくなる、いつ攻め込んできてもおかしくないのです」
オレがそう言うと同時に別の声が聞こえた
「だーいせーいかーい」
その声と同時にガシャンと窓が割れて青年が飛び込んできた
すぐにアカツキ達は各々臨戦態勢をとる
オレは王の前に盾のように立った
「お前は、さっき声明の場にいたな」
そいつは敵意を隠せていなかった10人のほうではなく上手く民に気配を混じらせていた3人のうちのひとりだった
「えー、バレてた?上手く隠れてたつもりだったんだけどなぁー」
青年が軽い感じで話しているとその場に大剣が振り下ろされた
ドオンッ!という音とともにあまりの勢いに床の板などが剥がれ瓦礫の粉で青年が見えなくなる
「図に乗りすぎだ小僧、我らアカツキの前に無防備に飛んでくるなど、あっけのない」
その攻撃をしかけたのはアカツキのひとりペリノアだった
オレはハッと気づいて叫ぶ
「気を抜くな!ペリノア!!」
「ヴォルトランス」
「っ!がはっ、」
瓦礫の粉で見えない青年の立っていた場所からペリノアに向けて雷の細い光線が飛び出てペリノアの肩を貫通する
「ペリノア!」
オレは叫ぶが王の前にいる以上下手には動けない
「あっけないのはどっちかな?ペリノア・ベルンハルト、通称大熊さん」
粉塵が晴れるとペリノアの放った大剣での一撃は避けられ剣が動かせないように足で踏んで地面に固定されていた
「このっ!調子に乗るな!!っ!まさかっ!」
ペリノアは足で固定された大剣を無理やり引き抜こうとしたが大剣は微動だにしなかった
ペリノアはアカツキのなかでも通称大熊と呼ばれるほど屈指のパワータイプだ、そのペリノアの大剣をあの細身の体で足で踏むだけで動かせなくするとは底知れぬ力を感じた
「不甲斐ないねぇ、アカツキの力量も知れたもんだね、12騎士なんて言われてるから結構期待してたんだけどなぁ、期待はずれ、全員でかかってきても負けるきしないよ」
青年はいとも残念そうに言った
「やめろ」
その言葉にアカツキの何人かが反応しそうになるがオレが制した
「あれ?勇者様までもしかして降参?」
「いや、違う、選手交替だ、お前の目的は知らないがどうやら強者との戦いを求めているように感じる、ならアカツキじゃなくてロードのオレと戦えばいいだろ?」
「……それはいい考えだね!でもその前にこいつは殺しちゃおう」
そう言うと青年は手をペリノアのほうに向けて呪文を唱えようとした
「ヴォルトラン一一っ!」
だがオレは呪文を唱えきる前に青年を剣の柄で殴り飛ばした
青年は床に叩きつけられながら転がっていく
その間にオレは叫んだ
「ロードとしてアカツキに命じる!全員王を守ることに専念しろ!!」
「はっ!」
アカツキ達オレが立っていた王の前に集まるのと同時に今度はオレが前にでる
吹き飛ばされた青年はゆらりと立ち上がる、顔にクリーンヒットしたせいで鼻血がでている
「悪いな、上司として部下を殺させる訳にはいかないからな」
「ははっ、ははは!いいねいいね!!あんな雑魚最初から無視して君を狙えば良かった!ねぇ、名前はさ、知ってるけど一応君から名乗ってよ、これから殺し合いをするんだからさ!!」
「いいだろう、その代わりお前も名乗れよ、フェアじゃない、オレはアーサー・ヴァルトシュタインだ」
「アーサー……やっぱりいい名前だね、強い名前だ、確かにフェアじゃないね、じゃあ僕も名乗ろうかな、僕はグリフ、グリフ・ノアだ、ちゃんとおぼえておいてくれよ、これから殺し合う仲なんだから!」