♭095:盤石かーい(あるいは、もえろディーリンガー/セプタンテリアン)
本日は週末。加えて大型連休のとば口ともなれば、ここ台場カッシーノにはうんでかんな人々が集まると思われるわけで。
時刻8時少し過ぎ。
案の定、会場となるその白い巨塔のような大娯楽施設の中枢前には、長蛇の列が既に出来ていた。すごーい、コミケくらいの人出よぉおおお……
うんざり真顔になってしまった私だけれど、既に受付らしきことは始まっているみたいで、人の列は少しづつだけど確実に、その巨大な塔へと呑み込まれていっている。
真白いタイルが敷き詰められた、エントランス前の開けた空間には、目分量だけれど、万は固い人の群れが、きちり四列に並んで綺麗に蛇行しながら敷き詰められているよ……日本人は行列に行儀よく並ぶと世界の人々は畏怖と揶揄をもってそう評するけど、これはもう整然とし過ぎだろ……
これ全部「ダメ」に出場する面々よね? 前回大会の出場者の支離滅裂さ、魑魅魍魎さを痛いくらいに知っている私にとっては、ルールやマナーをきちんと守っているその姿に、逆に嵐の前の静けさ的な、得も言われぬ戦慄を感じているのだけれど。
それに並んでる人々は万国もびっくりな様々な人種の坩堝的な多種多様性を持っているわけであり、やはり、「世界大会」というのは本当だったのねー、との今さらな想いが揺蕩う。
<最後尾 050 分待ち>なるプラカードを持って立っていた、黒スーツにサングラスを掛けた係員らしき男に促され、最後尾へとつく。もちろんアトラクションを待つ時のような単純な高揚感は欠片もなく、ファストパスとかないんかい、はよせえ、といったような、余裕の無きメンタルに追い込まれている私がいるのだけれど。
「……こんなにいるなんて」
思わず出てしまった感を出しているが、隣に立つ主任と話すきっかけをただ作りたかっただけで、あまり紡ぐ言葉に意味はないのだけれど。
「世界大会は……伊達じゃない」
返ってきた言葉は、もう何かこの「ダメ」に絡め取られたかのような妙な熱を持った主任の言葉であったものの。本日は髪をこれでもかのオールバックに固め、薄い緑のトレンチコートをその骨ばった体躯に被せるように着ている。その下は既に「戦闘服」……ディーラーの正装たる純白のシャツに臙脂のタイ、そして黒のベスト。ハイライザーのスラックスのポケットに、気怠げに両手を突っ込んでいるけど。
衣装は自由と規約には書かれていたけれど、やはり今の私たちはコレしか選択肢は無い。自分も、羽織るようにして肩に掛けた深い青のトレンチコートの下は、かっちりと主任とほぼお揃いの、いつもの出で立ちだ。違うのは首元の黒い蝶ネクタイくらいかしら。
「ダメ」だろうと何であろうと、「場」は取り仕切らせてもらうわ。そして「場」を支配してやる。
肚底に徐々に渦巻いて来た熱を感じながら、私と主任は同じ方向、戦いの場を見据えている。




