♮078:宣言ですけど(あるいは、5分の1の/リビルダエイエンメイデン)
「勝負服」。言わでもだけど、対局へ臨むための戦闘服だ。
前回大会では、この凄腕ジョリさんに突貫で、僕含めた痩男+元丸男の分の「メイド服」を作製してもらった。そしてその調整を他ならぬこの逢流さんに施してもらったわけなのだけれど。
今回それを僕が作るというのか……
服飾に関して学んできたことは、結構あると自負する。ここ数年、真剣に打ち込んできたから。だけど逆に、その世界を知ったことによって、その困難さ、自分の至らなさが浮き彫りになっていることも確かだ。
臆している。言葉にするとひと言でそうなる。
「……」
黙ってしまった僕に、そんな深刻に考えることないわよぉん、と努めて軽くな言葉をかけてくれるジョリさん。師匠……
「ま、とりあえずやってみる、やってみようってのは賛成だ。俺もジョリーもフォローする。材料もまあ奇天烈過ぎるものでなければ、そこそこ取り揃えているし」
逢流さんも僕に視線を合わせて殊更ににんまりとした笑みを浮かべてくれた。僕はその首から下をなるべく視界に入れないように顎を上げ気味に面していたのだが。
これは限りなく、恵まれた環境なのではないだろうか。その想いが脊髄を涼やかに通過したように感じた。僕はしっかりと顎を引いて、その偉大なる先人たちへ頭を下げる。
「僕は……僕はっ!! 自分の手で、自分のコスチュームを作ってみたい……作りたいです、作らせてくださいっ!!」
割と腹からのいい声が出た。そして中途半端なDEPを撃ち放った時よりも遥かに爽快な感覚に包まれる。俺のも頼まぁ、という気の抜けた翼の声は聞かないように鼓膜を閉じて、僕はかつてないほどの闘志を腹の奥底に滾らせていくのであった……
「OKよぉん、何か今回、巻き込まれ感ハンパなかったけどぉん、とってもとってもいい機会じゃなぁい。とは言ってもあまり時間もないことだし、ちゃちゃっと決めるべきことは今決めてしまいましょぉん? まずはコンセプト、どういう系にしてみるぅ?」
おっと、いきなり進行が速いけれど、そう言えば大会までもう何日もないんだった。決めるべきことは的確・迅速に決めるが、よい仕事の進め方でしたよね、ジョリさん。
「やはり……メイド服でしょうか……」
微妙に聞く感じになってしまったが、もう何か僕の中では決まっていた。
僕をダメと出会わせた思い出の衣装。それに身を包んで再びそれに向き合い立ち向かう。ジョリさんも逢流さんも頷いてみせてくれている。ならばここに宣言するんだッ!!
「『メイド・イン・HELLン=リブースト』ッ!! ここに再始動を宣言するッ!!」
うぉぉぉぉ、と両腕を突き上げる翼。そうだよ、やってやる……やってやるぞぉぉぁぁッ!!




