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♮047:既成ですけど(あるいは、ロジカル/メタ来る/遮二無クルー)


 思考と眼輪筋周辺は硬直したままの僕だったが、そういった相手の無反応を斟酌あるいは意に介したりする面々でないだろうことはとっくにお見通しなのであって。


「……『エジャコラ=レッド』こと、赤き龍星……志木シギ 寧奈ネイナッ!!」


 ぱしぃん、というようなキメ音が鳴り響きそうなほどに両手を開いてレスリングの構えのようなキメポーズをかまして、ソバージュ女―シギが言い放つ。来たよ、ダメの手触りが、物凄くヌメるようにして襲い掛かってくるかのように……ッ!!


「『スィンコエ=ブルーゴールド』……流氷の韋堕天使、波浪田ハロダ 右近ウコンなのだよ……」


 その背後からついと前に出て来たのは、うっとおしいほどの長髪を顔半分に垂らした細身の男。ひと目、カタギでないこと以外に読み取れるものは少ない佇まいだ。その端正と見えなくもない細い顔にかけられたサングラスのレンズは何故か「五角形」を形づくっているけど。どこに売ってるのだろう……そしていつかけるべき代物なのだろう……次々湧き上がる思考に、僕は置いていかれ気味なのだけれど。


「『ノッサラッソ=イエロー』……印南インナミ カエデェ……好きですッカレー粉ッ!!」


 インドな髪飾りにノーズピアス。褐色に灼けたエキゾチックと言えなくもない顔はしかし、顔筋をよくもここまで、といった具合に絶え間なく動かしているせいか、なんかもう微妙に焦点を合わせたくない風貌。カレー粉は原材料のひとつだからー。つっこみたいけど、つっこんだらやはり負けな世界なんだった。そうだ、何となく思い出してきた。思い出してはいけない逐一を。


「『ッサスィ=パープル』……性別年齢全てを紫の煙の中にひそませた謎の女、ベンロァカウボ=メサダ=ジーン」


 まだゴツいのが残ってるのか。ド派手にその艶めく白銀の髪を盛り盛りに盛った、特殊方向に片脚を突っ込んだ3Dなメイクが施されたご尊顔は、ひと目、イギリスの少女ならば「魔女」と見まごうばかりの鷲鼻、大きく裂かれた口を有しており、わかりやすいっちゃあわかりやすいけど、これまたつっこんではダメな案件だ。そして流石世界大会……海外勢もやはりいるんだなあ、と、そんなところに感心しているのだけれど、そんな場合でもない。でも何というか、発音しにくそうな名前。


 そして。


「『ャコラッ=ブラウン』……私は貴方の褐色執事、矢伏ヤブシですけど何か?」


 衝撃は、忘れた頃にやってくる。


 用心しておかなければならないダメの大原則を、いま一度、身に染みるようにして分からせられる僕なのであって。お前……何でまた。そしてまた発音しづらそー。



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