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300/312

♬300:祝着で候かーいですけど(あるいは、これが本当に300回なら!自分で自分を祝おう回アゲイン)


 しかして、この局面まで来て、DEPでどうなるとは……特に姫様に仕込まれし「日本語虚偽DEP」が功を為すとは思えなかったが。


「……」


 さりとて、我らに他の策は無く。


「……」


 ただ、目の前で先ほどから無言の慟哭を続けている件の輩……サイノに対し、姫様であれば、何かしらの御言葉をもってして、何かしらを響かせ得ることが出来るのでは、と脳髄あたりに無根拠にぷかりと浮かんだだけである。だいぶ私も毒されてきているか。


 何より、諸々この場まで我らをいざない、粉骨砕身してくれた(と思われる)ギナオア……アオナギ殿が言うことであれば、従わないことなどは考えられなかった。


 (フィールド)の上には奇妙な静謐と、鼓動のような響きがないまぜになっているようで、それを聴覚ではなく肌の表面で感じているかのような、何とも、


 ……うかされた夢、のような趣きではあったが。


 仰向けになりて両手両足より「竿」を地に向けて伸ばし、それにより中空にて留まりし我が体の、首元の所に姫様が御跨(おんまたが)られていているという、古文書にて見た記憶がありしところの、おそらくは「人馬戦闘形態(キジヨ・ウイガ・ンキ)」なる古来由緒正しき決闘様式に則っているだろうことが、私を奮い立たせるわけであって。


 そしてそのサイノに未だその細くたおやかなる首を掴まれたままのうら若き美乙女……ハツマ殿を狼藉より救い出すが、誇りあるボッネキィ=マの者たるつとめであれば。


 姫様どうぞ御随意にッ、DEPを放たれたもうッ、と、勇猛に拍車を掛けられし私はそう吠えつつ、手脚による歩様の回転を上げ、上下のみならず左右に人馬体(キジヨ)を猛々しく振り回しながらサイノとの距離を詰めていく。が、


「ちょっ……喋りながら色々な角度で擦ったり押し付けたり突き上げたり振動与えたり……だめぇ……っ、それにさっきから顎の先がずっと……そ、その執拗に転がしながら時折やさしく突っついてきたりでもぉぉぉぉっ……!!」


 我厳然真顔硬直也マタナ・ンカヤッ・チャイマシ・タァ


 姫様の様子がいよいよおかしい……っ、いや、しかしこれは、この華奢なる御身から放たれし緋色の(アフラ)は……ッ!! 御顔を紅潮させ、視線は定まってはないものの、そのわななく口元は今にも極大の何かを放ちそうな雰囲気を宿しているのを下から見上げて分かった。何より、我が鼻腔付近を濃密に覆うかのような、この今にも高みに昇り詰めんばかりの緊迫さと陶然さを伴いし、至高なる天上光臨然芳香プレオルギック・パフュミソ……!!


 出る……のか。これまでも群れ為す輩衆(ヤカラス)どもを無慈悲に均等に屠って来た戦慄のDEPが。いやそれ以上の……ッ!! 


「姫様今ですッ!! この、正体は不明なりしも、昂然たる(アフラ)ッ!! 波濤奔流となりて、サイノのみならずこの会場をも呑み喰らい尽くさんばかりのDEPが放たれますればッ!!」


 昂りきった私が、そう思わず猛る大声を発してしまい。


「……!!」


 発声と共に上下したる自分の顎先が、柔らかき何かをつまびき弾くような感触を受け取った瞬間、


 それは起こった。


 あ、

 あ、


▲●

 アレって……


「!!」


 瞬間、私/僕はとんでもない風圧のようなものを感じてのけぞるばかりであったのだけれど。


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