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♮278:越境ですけど(あるいは、決意新たに!荒谷結威の巻)


 各々の陣内で、白線で分かたれた「枠」に、各馬ゲートインする。ついに……最終決戦(おそらく)、「騎馬戦」(正式名称は忘れた)が始まる……ッ


 「金色」のメイド服……そして肘・膝にはプロテクター、左目にはモノクルっぽいというかスカウト的な緑色のバイザー……毎度のことながら、シャバ感の希薄ないでたちだ。だけどそれでこそ、


 ……この「ダメ」の総決算にはそぐっているような気がした。


 「仲間」が為した「騎馬」の上に今、僕はいる。なぜ僕が上? とか思わないでもなかったけど、前:丸男、左:サエさん、右:翼という布陣で、一度全員がしゃがんだ体勢から、裸足になっていた僕を乗せると、ぐい、と次の瞬間、視界はあまり体感したことのない高さへと上がっていた。


 おそらくは2mを越えるくらいの高さ……下、地面は人工芝だけれど、落ちたら結構痛そうだぞ……とか腰の引けた心配を思わずしてしまうけれど。


 いやいや、やる前からそんな事に臆していてどうする。それにこの勝負は、負けたらのっぴきならないことになるやも知れない大事な試合ぞ!!


「……」


 とは言え、恐いは恐いよね……とか思っていたら。


「ムロト……臆せずね。あんたの最大の武器を……ぶん回せばいいだけだから」


 ぽつり、左後ろ下から、そんな落ち着いた声が。サエさん……まさかダメの場で「共闘」することになるとは思わなかったですよ。でも何か落ち着いた。あなたはいつも僕を誘ってくれる……


「……私たちが、身体を張って、あんたを下には落とさない」


 ……光って見える「その方向」へ。そっちが正しいか間違っているかは分からない。けど、


「……やります。僕は、この『戦い』を制して、サエさんと何事もなく家に帰る」


 光を放ちたい。ぐだぐだとしながらでもいい、時にサボったり、回り道をしたり、またやり直したりしながら……


 いつかは光る自分へ。自分の真ん中で、自分が輝ける、その時まで。


「ムロっちゃんよぉ~い、一宿一飯の義理は忘れないぞなもし」


 前の下で、いつの間にそんなに太ったのかは謎だけど、元の脂肪球のような体型に戻っていた丸男がそう悪そうな声で言うけど。そう言えば、此度の件は、道端であなたを拾ってしまったことが僕にとっては発端だったよね……


 いろいろな事があった。出会い、戦い、いま僕はここにいる。


「頼んますぜムロトの旦那!! あっしぁあんさんの脚となり存分に働かせていただきやっしょに!!」


 右下からはそんな脱力させる(つばさェ)のここに来ても定まらないキャラ付けのうきうきな声が僕を萎えさせようとしてくるものの。


 光。光を放てない存在だとしても。であるならば尚のこと、ダメな自分のダメを吐き出し焼熱させて。


 燃えて輝いてやる。



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