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♮267:屹立ですけど(あるいは、ドリームイン/ザターフ)


 ひとまず、「闘技場」の設営が成ったということで、僕らはなかば有無を言わさずスタジアムの方へと移動を促されるのだけれど。


 よくよく考えると(ということのほどでも無いけど)、騎馬戦の「騎馬」って四人がとこの人材が必要なんだよね……僕と翼、あとふたり要る。それに「上」に乗るヒトの選定も重要だよ、運動神経まるでない僕なんかがなったら、それこそ瞬殺されるし。


「……」


 でも控室からぞろぞろと出ていく面々をそれとなくチェックしていっても、さほどの手練れは見受けられない……チームワークももちろん必須となってくるだろうし、出来ればお知り合いと組みたいな……と、


 再びグラウンドにまろび出た僕らを待っていたのは、やはりの「大勢の人間から放たれる、無言の圧力」であったのだけれど。観客席は静まり返ったまま、なるべく声を発さないように、なるべく身動きもするまいといった感じで、硬直している人の顔がずらと並んでいる……


 その中央に、黒スーツ姿のサイノが、芝居がかったような、手を身体の前で組んだ直立姿勢で立っている。マイクでもつけられているのか、いきなりその声がこの水を打つ会場内に、結構な大きさで響き渡ったわけで。


「……機は熟した。これより『DEP(デプ)騎馬王=(コンバッテレ)』を開始する……準備はよろしいかな?」


 どう熟したのかは分からないし、よろしくも全然ないのだけれど、それを斟酌してくれる雰囲気も持ち合わせていなさそうな慇懃さと傲岸さを同量含んだかのようなサイノの仕切りは始まる。


「……『騎馬』を組む『四名ひと組』ずつ……そこの『陣地』に区切られている『(ゲート)』に入ってくれたまえ。1から10までの枠からはみ出さないようにきちんとな……」


 グラウンドの僕らがいる側に、柵というか「檻」のような佇まいのものが、横並びにおそらく10個、並んでいる……競馬のようだね、という上っ面を滑るような感想しか浮かばないけれど。


 相対する敵側……距離およそ25mほどだろうか、記憶の中の、学校のプールの対岸くらいの距離だな……とか要らんことを思い浮かべる僕だけれど、そこにも「枠」なるものは列を成して並んでいて、そのうち9つはもう人で埋まっておる……


 見た事ある輩とか、見た事はないけど見たくなかった輩とか、濃ゆい面子がこれでもかと取り揃えられているようだ。人材豊富だねぇ……


 こちら側はと言えば。


「おや……随分と少ない陣容だなそちらはぁ……ハツマほどのカリスマ性をもってしても、4人かける10騎を集めることは叶わなかったというわけか……はは、これは厳しいねぇ」


 わざとらしくこちらを睥睨してそう粘った言葉を投げかけて来るサイノ。でも悔しいがその通りであって。


 アヤさんの先導(煽動?)によって、いったんはやる気を昇華させられたかに見えた面々だったものの、いざ、となると名乗りを上げてきたのは結局、10人ほどであったわけで。アヤさんの組を加えても4騎ほどしか組めない算段となる。


 ぬおおおお、頭数がある程度ものを言う「騎馬戦(これ)」でこの戦力差はいきなりきつぅい……と、白目を剥きそうになりそうな状況の中、


「まてまてまて~いッ!!」


 突如、観客席の方から、そのような突拍子も無い叫びが響いてきたのである……うぅん、たぶん助っ人とかありがたいベクトルのことなんだろうけど、何だろう、とても嫌な予感もするよ大丈夫かな……との思いが大脳の中を駆け巡るのだけれど。



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