♮262:厄難ですけど(あるいは、存在感を/逆手に取るわのよぉぅ)
まさか、こんなごっつい面々と、サイノさんが繋がっていたとわ……
裏切られた、という気持ちも無くはない。けど、それ以上に勝手知ったるお馴染みの混沌ぐあいに、逆に居心地の良さを感じてしまっている僕がいる。いやダメだろ。ダメな意味で僕はもうダメなのかも知れない……
とか真顔で静観してしまった。それ以上のことは出来なかったわけだけど、それでも何かしらは介入しておいた方が良かったのかも知れない……
「……紫の衝撃ッ!! 『牢獣』こと、ベンロァカウボ=メサダ=ジーン」
やっぱり始まってしまったよ自己紹介の暴風雨が。白銀の髪をこれでもかととぐろ状に巻いた特殊な感じのメイクをそのいわゆるの「魔女」的な風貌に施した、異様に背の高き老婆……ラメる紫のドレスをそのいかつい体に纏わせている。そう言えば僕の職場に乗り込んで来た輩のひとりだったな……ここに来て出てくるんだ……
設定を小出しにすることの出来ない、この世界を司る者の嗜好/志向/思考により、まあこれ結構な間続くんだろうなあ、との諦観としかいえない感情に、僕はただ身を委ねるばかりなのだけれど。果たして。
「ぴょこんヌッペダンヌッピッグマリオ~ンヌ!!」
次に出を窺っていたのは、嗚呼これまた懐かしい……先の大会の予選準決辺りで当たった記憶だけはある、あのケイン堀之内だよホントに逐一出て来るな……
彫り深い日仏ハーフの無駄に男前な風貌は、年を経てさらにいい感じの「濃さ」を滲みださせてくるのだけれど。今日も今日とて目に来る蛍光黄色のビブス(「111」と印字されている)
「ユー、メイド、ミー、ハッピハッピーアゲェ~ン、ヤハァァー!!」
ここまでのイキれテンションは流石に当代随一と思われなくもないけど、まあぁ、久しぶり。
「……出ました!! 『愛似異獣』です……」
こいつほんと頭抜けて混沌だな!! これでもかのドヤ顔で、理解のとっかかりも掴ませないほどの言の葉を投げ放ってくるよ怖いよ……
だが、まだそれは序の口なのであった……
「コポポポポォゥッ!! メイド少女、ひさしぶりでありますなあ……ん敬礼ッ!!」
出たな根津ェ……度が強すぎてその奥の目すらまともには見せてこない眼鏡のレンズをスポットライトに反射させながら。
「おっとっと、思わず敬礼なんぞが出てしまうとは、オウフ、ワタクシまだ修行が足らんと言いますか、修行ってそれもまた大概な言葉であったりしてドプロポリティカwww」
擦り切れたチェックのシャツにその肥満体を押し込めた感じの巨体がそんな矢継ぎ早な意味不明言語をまくし立てる。いやどいつもこいつもどんぐりの背比べなほどの、それぞれ一点モノの混沌を持っていやがるな……
「ワタクシ、『裂漫獣』なる二つ名を押し頂いておりますぞなもし……」
もぉぉぉぉぉぉいいッ!! 終われ!! この流れぇぇぇッ!!




