♮261:採型ですけど(あるいは、集約せぬこと/プリズミカ)
いったい……何がどうなっているやら……
さっきまで確かに「新決勝第一戦」的なものを行っていたはず……そしてその五番勝負のまさにの勝負どころであるところの「第3局」を戦っていたはず……
どうせこれ完遂されることなんてないんだろうな的な僕の諦観含みの見通しは、しかしてそうであったけどそうではなかったという予想の軸違いの方向へとあっさりと横滑りしていったわけで。
サイノ、さん。
僕はよくは知らないヒトなんだけれど、若草さんの相棒。だと思っていたヒト。少し気の抜けたような顔つきとか、力の入ってないような立ち居振る舞いにうまく隠されていたキレ者な感じ。
その表層はいまや取り払われて、キレ者感だけが、「キレる」の別の意味をも持ってこちらに突きつけられてきているよ……
壇上に登り上がったまま、朗々と演説じみた感じで場を取り仕切り始めるサイノさん……傍らの若草さんは、椅子に座ったまま背筋を伸ばしかけた、微妙な姿勢で固まっている。その顔は驚愕……というか驚愕過ぎてかえって表情が追いついていないといった、そちらも微妙な感じで固まっているのだけれど。
つまりはこれはサイノさんが若草さんには告げずに仕組んだこと、なのだろう。「爆弾」といういささか現実味の無いモノを背後に携え、この「ダメ」を運営する初摩アヤさんに向けて……「宣戦布告」をかましたと、そう理解すればいいのでしょうか……「理解」とは言ったけど、「理解」の境地に至るにはほど遠すぎる気もするけど。
「……」
そして翼ェ。ヤバそうな流れにこそ即応で乗っかろうとする、シャバに定着することが難しそうなメンタルの申し子が、やはりその珍妙なるサイノさんの「提案」には誰より速く食いついちゃったよやばいよ……
いや、状況の把握に努めろ。荒唐無稽こそが身上のこの「ダメ」周り。翼じゃないけど、即応で対応していかなければ、簡単に呑まれてしまうぞっ。
提示された、「戦い」の形式……とやらは「DEP騎馬王=戦」……一聴で字面を把握できてしまっているのは、何かへの毒されかた甚だしい僕なれど。
一騎一億。それとこの会場に仕掛けられた「爆弾解除」を賭けて、運動会の最後から三番目くらいの種目を、大のおとなたちがやると。
いい具合の混沌、と、脊髄辺りで既に認識し呑み込み始めようとしちゃってる僕の潜在意識が我ながら凄い怖ろしいのだけれど。
……大丈夫だろうか(諸々)。とか思ってた↑ら→。
「んぬぇあ~っはっはっは、んんんぬぅぇぁ~はっはっはっは!!」
出に際しては、そんなねまるほどの高笑いをしなければならない法則でもあるのかどうかは知らないし知りたくもないけど、フィールドを囲む観客席のあちこちに、いきなりスポットライトが射し込まれて来たわけで。
「我らこそが!! 地球に優しい再生怪人集団……『過去遺△』!! 爆誕ッ!!」
いやとんでもねえ混沌だったよ。集約する円錐の光の中で、各々珍妙なるポーズでキメている面々がここからでもいやにはっきりと見えているよ……そして中には見知ったのもちらほらと……
そうだよね。やっぱりこれだよね。急速に冷えてきた大脳の片隅に僕は佇む以上のことを出来てはいないわけで。




