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♭258:約定かーい(あるいは、物語はまるで/ローリングストン↓)


 場は混沌ながら、奇妙な静寂を持って粛々と進むべきところへと進もうとしているように感じられる。


 ……行き着く先は、とんでもなく、やばげなる所である予感もまた。


「……」


 右腕を頭上に持ち上げたままの姿勢で、何かタメのようなものを作りつつ、主任は静止している。手に持っているものは気になるけど、ついに私からは、うまく表現できないけれど、ふっつりと繋がり……「糸」的なものが切れていってしまったようにも感じている。


「……この会場に『爆弾』をいくつか仕掛けさせてもらった……クク、『爆弾』だよ『爆弾』。言葉にしてしまうといささか間の抜けた響きだねえ……だが」


 もはや誰なのか分からないくらいに、主任のその内面が変貌したかと思った。そしてその落ち着いているもののその分狂気走ったかに聞こえるそんな言葉が紡ぎ出された。瞬間、だった。


「!!」


 私たちの、うしろにあった、電光掲示板が。


「……!!」


 棒状の金属で板状の金属を叩いたかのような、そのようなくぐもった音が私たちの頭上でいきなり発生したかと思ったら。


「……」


 その上部が。陥没するかのようにひしゃげて割れて……破片を飛び散らせていた。


 この期に及んでも、私はこれまた演出の一環なんじゃないのとか、平常にすがりつきたいような気持ちでいっぱいいっぱいなんだけれど。


「これはほんの御挨拶……会場を巡るくまない箇所に、これとは比べ物にならないほどの『爆弾』を設置させていただいた……」


 主任は私の顔力(ガンリキ)なんか及ばないほどの、表情の抜けた微笑を湛えたまま、手にした黒いものをその見慣れてたはずの長い顔の横でいたずらっぽく振ってみせてたりする。誰だ。……あなたは一体、誰。


 場のざわめきは、やっぱり今起きていることが浮世離れしているからか、目の前で正にの「爆発」を見せられてもまだ、どこか現実感の抜けた反応(リアクト)だったのだけれど。


「おっと、もう遅い。私をどうにかしても無駄。この『リモコン』の他にも二重三重に『起爆』のシステムは組み上げている……その全てを無効化するのは不可能……」


 主任……黒檀の上に、よく磨かれた革靴のまま登ると、まったくの余裕の体でそんなことをのたまう。


 ……ここまでDEPってことは……無いか……「虚偽」でもどうやら……なさそうだし……


<貴方の要求を聞きます。その代わり、この会場にいる誰にも危害を加えることはしないでください>


 ハツマ、なんだろう。落ち着いた「実況少女」の声が、ざわつくこの会場……サッカーグラウンドを模した巨大ホール内に振り落ちて来る。


「……そんなに構えることはない。『今』まで通り、『10億』を巡って争奪するだけの話さ……ただし、ハツマ アヤ、お前にもその戦いの場に出てきてもらう」


 ああーっとお、これまたちゃぶ台返しの唐突展開ぃぃッ!! もぁう、内外関わらずこんなんばっかりだな!! と、頭の中で叫ぶことくらいしか、私にはもう出来そうもないわけであって。



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