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♫254:拘泥ですかーい(あるいは、さにあらず/サニーサイダル/窮鼠くん)


 唐突に、「青年くん」から、次【F★】出す宣言をされたのだけれど、それを額面通りに受け取るほど、こちとら清純でも素直でもないのよぉぉぉん……


 しかし、多分に単純(シンプル)であるがゆえ、ちょっと揺さぶられるところがあるのは事実。【F】とか【F★】をこちらが「スルー」しちゃうと、向こうの評点が二倍化されちゃうからねえ……


 先手(Tチーム)着手→ダウト宣告→先手評点開示


 つまりは、相手の評点は分からないままに、こちらはダウトか否かを見極める必要があるということ。ある程度、その放たれたDEPの良しあしみたいなのは、そこそこ場数を踏んで来てはいる(不本意ながら)私であるから分かろうものだけれど、それは絶対じゃあない。「観客に刺さるかどうか」は、実際に評点を受けてみないと分からないことが多いってのも身をもって知ってるわけであるし。


 であれば何が何でも「ダウト宣告」するか? 向こうが【F】【F★】を出してきていたら評点2分の1にすることが出来るし、相手は「第二局目」で【T☆】を既に切っているんだ。もし【T】でこちらの評点を2分の1にされるという事態に陥ってしまったとしても。


 「一勝」を献上するに留めることは出来る。でもそうすると今度はこっちの出し手が難しいよな……


 【T☆】か【F★】を出して「二勝」を狙うのは、はっきりリスクが高い。ダウトする前提であれば向こうが【T】出して来られてたら2倍差を埋められずにこちらが負ける可能性は残念ながら高い。その場合、星札とダウト権をひとつ失い、さらに一勝献上という、一気の寄りを見せられてしまうことになる……


 ダウトしない前提でこっちは【F】を出して勝負? ……でも向こうが【F】【F★】を出してきていたら、スルーでまた2倍差のバイアスかけられての評点勝負になる……それもまた、負ける可能性は高いし、【F★】なら二勝が向こうに加算されて「4対1」……残る二戦、もう後が無くなる。


 くっ、あまりに勝てる要素が少ない……むううと唸ったまま、おへちゃな顔で固まってしまう私だったけれど。


「若草くん、『思考の路地裏に迷い込んでしまった時は、感覚を頼りに』さ」


 そんな私に投げかけられたのは、賽野主任の落ち着いた柔らかな声だったのだけれど。教訓のような名言のような、言葉の意味はいまいち分からなかったけど、その手元がふいと動いて、私にだけ見える角度で示された手札は、【F★】だったわけで。


 勝負手……だ。そして多分、相手が【F】の札を切って来ると予想しての、「ダウト前提」の【F★】だと思われる。


 撃つ自信が、主任にはあるのだろうと思われる。でも今更ながら、「虚偽DEP」って分かってて評価する方もする方だよな……フィクションに評点をつけるって、どれだけ様式美に彩られた世界なんだよ、ダメ界(ここ)はェ……



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