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♫253:滑走ですかーい(あるいは、煎じて!仙次/シャットユー)

 さて、どうしよう。


 どうしようもない要因(ファクター)がずらと並び立つ中で、僕はあえてそんな思考を巡らせてみる。場は既に「第三局」。再び立ち返って「翼VSサイノさん」ということになる。


 まあ翼は制御不能だから好きに泳がせるしかないよね……さらにこちらチームには駆け引きのキモとも思える「ダウト権」も無いわで、もうやれることと言えば、翼に何のカードを出させるか、のみなのだった……


 こちらの残り手持ちは【T】【T】【F】【F★】。3種類の選択肢はあるものの、ここは素直に【T】を出しておくべきなのだろう。相手からダウトを受けなければ純粋なDEPの多寡勝負、もしダウトを喰らうことが出来たのなら、「2倍」のアドバンテージを得ることが出来るから。


 さらにはこちらが「先手」。(こちら)のDEPを晒してのちの「ダウト吟味」を受け、そしてそれからの相手側の着手となるわけだ。そんな中、【F】【F★】は出しにくいよね……まずポリグラフの「波形」、これを翼がたばかれるか、それがまず分からないから、【F】系のDEP放った時、盛大にそれがぶれたら……? 相手には【F】系と看破されてダウトを喰らうあるいは大したことない評点と予想されたらスルーされる、とか、向こうの駆け引きペースへと持っていかれること必至。


「岬よぅ」


 そんな、煮詰まる方向へ方向へと思考が寄っていってしまってこわばった顔の僕に、投げかけられたのは、他ならぬ翼の気の抜けた声だったわけだけど。何だ?


「……ハッタリかましてよかですか?」


 そしてとてもいい笑顔で意味不明なことをのたまい聞いてくるのだが。ていうかお前それくらいしか出来ないだろ? なぜここいちばんで改めて聞くよ?


 とかそれへの対応(リアクション)が遅れてしまった。


 ……それがいけなかった。


「うぉぉいッ優男さんよぉぉぉおうッ!! 俺は次、【F★】を出ぁぁぁあすッ!! くくくく、信じるか? 信じないか? どっちでもいいが存分に来いよぉあッ!? この一番でクリティカルな決着をつけてやるっつっとるんべやからなぁぁぁぁああああッ!!」


 黒檀の机に、いきなりメイドシューズに包まれた右足をだんと踏み降ろしていた。嗚呼……何と言うか、初歩も初歩のハッタリというか戦術だな……


 じゃんけんで何を出す、と宣言して相手を揺さぶって、裏とか、裏の裏をかいたりするやり方。そう言えばこいつ、小学生の頃、やたらじゃんけんが強かったような……


「……」


 見上げた(ツバサ)の波形は非常に凪いだままだ。にやにやとした笑みを浮かべながらその傲岸そのものの瞳は、真っすぐ相対する対局相手へと注がれている。涼しい顔をしたままのサイノさんだが、沈黙を保ったままだ。まさか、こんなしょうもない揺さぶりに……いやそれだけに想定外だったのだろうか、ちょっと対応が出来ずに固まっているようにも見えるよ。


 翼……本当にやれるのか? やれるのかも。もぉぁう、だったらもうやっちゃって!!



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