♫251:応身ですかーい(あるいは、ロコモティック/薔薇/バランス)
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や、やらせていただきましたぁぁぁぁぁああ……っ!!
評点が出た瞬間、思わず詰めていた鼻息がブピーと間抜けな鼻笛を鳴らす。まあでも「自分を見つめなおす」とか言ってたわりには、性懲りも無い「淫獣DEP」ではあったのだけれど。
「勝ち」を手繰り寄せるには、ここ、ここ一番しかなかったから。
ダウト権は使い切ってしまったものの、看破したボーナスで、ワカクサさんの評点は半分の「4万」にダウン。よって、「9.7万」を叩き出した僕のDEPには、
例えダウトをして僕が【F】系を出していたとしても、上回ることは無い。ダウトしても無駄だ、ということだ。
そしてさらに……
<『ダウト宣告』は無し!! そして気になるミサキ選手のカードはぁ……? 何と【T☆】だぁぁぁあッ!! 『二勝』ッ!! 『二勝』がミサキ選手のチームに入ります!! よって!!>
そう、僕が出していたカードは【T☆】。ここが勝負どころと見て、つっかけていった。相対するワカクサさんの、クールビューティー的に整った顔が一瞬、ぴしりと歪んだのを視認する。そして、
<『二対一』で、『第3局』に勝負は進みますッ!!>
逆転だ。多大な犠牲を支払ったものの、この時点では僕らはこの勝負をリードしている……っ。
周りの観客席からは、今度は本当に歓声が振り落ちてきていた。と共に腹に響く、数万人の足を踏み鳴らす低音。
「……!!」
無言の変顔で、瓜二つの顔を向き合わせる僕と翼。そのまま挑発する勢いで、向かい側の席のサイノさんワカクサさんを振り返った僕らだったが、それを待ち受けていたのは、ワカクサさんの「虚無」とでも表現したらいいかいやそうとしか表現できえない、からっぽの虚空のような世にも怖ろしい顔面であったわけで。
がひぃぃぃぃ……ッ!! と思わず出てしまった恐怖の叫びを隣の翼と同調させながら、それでも僕は次の算段に、脳演算を割り振ろうと四苦八苦している。
Tチーム(二勝)残り札:【T】【T】【F】【F★】 ダウト権:なし
Fチーム(一勝)残り札:【F】【F】【F★】【T☆】ダウト権:2回
まとめるとこのようになる現況。ダウトがもう出来ない状況というのは非常に苦しいのは確かだけれど、相手のダウトを「暴発」させることが出来るならば、勝機はまだある。
すなわち、相手が「星カード」を出している時に、こちらに放たれたダウトを、【T】でいなすことが出来たのなら。
いちばん痛いのは「星カード」を出した時に負けることだ。逆に言うと、それが出来たのなら僕らの勝ちは近くなる。
「いい勢いに乗った感じだぜぇッ!! このままいくぞッ!!」
例の根拠不明の傲岸不遜顔で、翼が吠えるのを聞いて、急速に冷めていきかけてしまう自分を感じている……そうか、代わりばんこに対局しなきゃいけないから、そっかー……次の手番は翼なんだ……
湧き上がる不安感を、浅い深呼吸でなんとか収めようとしている僕。何か……何か策は無いか?




