♫250:全周ですかーい(あるいは、いつもながらの淫すた/バエリスティック)
▽
「……」
対峙する少年くんは、ほぼほぼその色使いは「金」と「白」みたいな感じなのだけれど、しんと静まり返ったような空気を纏いつつ、その表情は真剣、というか思いつめたような雰囲気を醸している。何を考えているのか、それはぱっと見、伺い知れない。うううぅん……
ポリグラフ、少年くんを示す「青」の波形は一定の上下動を繰り返している。平常……と思っていいんだろう。これが不規則に振れたのなら、「Tチーム」なのだから、【F】ないし【F★】を出しているということになるはず。
「……」
どうやら出すカードを決めたようだ。一枚を、その金色の目の前に翳して、確かに視認/確認してからセットした。その間も「波形」は揺らいではいない。
であれば【T】【T☆】ということだろうか……いや、でも相手は「伝説」と称されるほどの逸材……「平常心を保ち続ける」こと、そのくらいはやってこないとは言い切れないわよね……
とは言え、私もディーラーの端くれ。人間の表情やら心情やらを読むことにかけては、常人よりも遥かに長けていると自負している。落ち着くんだ、こちらがまず。
そしてよく見ろ。仕草を、表情を。よく聞け、DEPを放つその音声の揺らぎを。どんな人間だって、どっかしら不自然なところが出るはずだ。イレギュラーなことをしといて、完全な「平常」を保てる人間なんていないはず。はずだ。
<後手:ミサキ:着手>
いよいよ……撃って来る。伝説の……伝説のが。思わず心持ち肩に力が入り気味になりつつ、前のめってその着手挙動に集中してしまうけれど。
刹那、だった……(何かこのフレーズ、言ってて気持ちいい……
「……『戸村宇里の模写シリーズってあるじゃないですか……? あれの中のゴッホの『ひまわり』ではぴくりとも来なかったものの、モネの『睡蓮』とか『日傘の女』とかには何故かびびくりまくって、気が付いたら膝頭まで垂れていた件』」
少年くんのあくまで真摯さを保ったままの声が、とんでもねえ事象を告げてきやがったのだった……
何だよこれ。こんなの「真実」も「虚偽」も無え……
単なる暴虐じゃねえかよぉぉぉ……
これが、ここにいる誰もが忘れかけていた「獣字」を持つ者の力だと、そう言うのか……(私も保有者らしいけど)
得体が知れなさすぎるけど、「ダメ」の一端に触れた者ならば確かに判る、不可思議なやばみ。
<後手:97,668pt>
告げられたその評点は、その時点で「ダウト」もクソも無く。
「……」
ただただ見送ることくらいしか、私には出来なかったわけで。




